雨の日曜日

お芝居の感想などを

七月大歌舞伎 夜の部(新橋演舞場)

2012年07月16日 | 歌舞伎
 実は今月は、昼夜一回ずつの観劇予定で、だから夜は楽のみのはずだったのですよ。でもやっぱり「黒塚」は一回じゃダメな気がする!ってことで、頑張って毎日チケットweb松竹チェックして行って参りました。こんなことしたのって歌舞伎座さよなら以来だわー。

 「将軍江戸を去る」
 そういえば今月の夜の部は、初めて見る演目ばっかりであります。この「将軍江戸を去る」は、私みたいな初心者でも作品名を聞いたことがあるくらいですから、結構上演されているのかな?
 何と行っても、團十郎さんの徳川慶喜が可愛かったでーす。山岡や高橋やその他のみなさん達が慶喜公ラブ!なのも頷けます。團十郎さんといい先月の藤十郎さんといい、歌舞伎役者さんの「上に立つもの」オーラはすごいですね~。
 中車さんは、さすがにこういう幕末な拵えは違和感無いですな。役の必死さが中の人の必死さと重なって、先月の二役よりも似合っていたように思いました。ただ喉を大分痛めてらっしゃるようで、声が思うように出せないというのは、きっとご本人が一番お辛いでしょうね。
 作品についてはですね、綱豊卿の時も思いましたが、私のような理解力の足りない人には真山青果って厳しいですわ。だって山岡がどんな理屈で説得し、慶喜が何故それを受け入れたのか、さっぱり分からなかったんですものー。お恥ずかしい限りでございます。

 「口上」
 成田屋二人、おもだか屋三人のシンプルな口上でした。
 團十郎さんも海老蔵さんも、お話お上手ですよね~。新猿之助親子と同世代ということもあって、大変フレンドリーな口上で楽しかったです。
 確か三谷さんの英語スピーチで「皆さんは私の英語が分かりますか? 私には全然わかりません!」というネタがあったように思うのですが、それを素でなさってしまう團十郎さん素敵過ぎですわー。
 そして海老蔵さんが亀治郎さん(当時)とライオンキングを見に行かれたことは存じてましたが、亀丈の反応が面白かったということは、お二人並んでのご観劇だったってことですよね? 今日本でこの二人が一緒にお芝居見ていたら、さぞ目立つことでしょうね~。

 「黒塚」
 さすがの私でも、三代目が襲名披露公演で代役で岩手をなさったということは存じてますし、やはりおもだか屋にとって大切な演目ということで、見る側としましてもちょっと緊張してしまう作品であります。新猿之助さんも、子供の頃から思い入れのある踊りでしょうから、満を持しての初役にさぞ気合が入っていることだろうと思われます。
 「黒塚」ってね、今までにも四代目様の鬼やら蜘蛛やら拝見したことはありますが、どうやらそういう派手な舞踊とは違うのですね。夫に裏切られて鬼になった女性が、希望を持ちかけた途端にまた裏切られ、という話。で良いですか? だからか、激しいアクションもお笑いもあるんですけれど、見終わった後に残るのは「静かで哀しいお話」という印象でありました。
 見どころはやはり、第二景の月明かりの下で踊る岩手でしょうね~。老女の拵えなんですけれど、すごく女らしくて可愛い。新猿之助さんの繊細で無駄のない踊りにうっとりでございます。舞踊って正直よく分からないのですけれど、四代目様のはずっと見ていたい。
 後ジテの鬼女も、怖いというよりやっぱり「哀しい」。調伏しちゃうなんてひどいよー。もっと優しあげてよう。そしてああいう赤白に塗り分けるお化粧は初めて拝見しました。どういう意味があるのかな?
 祐慶役の團十郎さんは、徳の高い高僧役にぴったりでしたねー。猿弥さん太郎吾の愛嬌のあるキャラクターも好き。

 「楼門五三桐」
 実は観劇する前は、黒子の顔出しは楽だけの方がドラマチックだったんじゃないかなー。むしろ後日新猿之助さんがどこかでぺろっと種明かしするくらいが格好いいんじゃないか?なんて思ってましたが。
 実際客席に座ってるとね、ああこのカーテンコールまでがお芝居なんだなーって素直な気持ちで拝見することが出来ました。だってお祭りだもの! 何でもあり!! 
 ということで、八年ぶりという猿翁の舞台であります。先月の口上よりも全然お元気そうでびっくりしましたよー。本当に数年後には四代目と連獅子踊れちゃうんじゃないかってくらいの勢いです。
 逆に海老蔵さんは、折角の名台詞がいまひとつ気持ちよく聞こえなくて残念でした。それとも「五三桐」の五右衛門ってこういうものなのかな~?



■夜の部  午後4時45分開演

一、 将軍江戸を去る
 
徳川慶喜     團十郎
山岡鉄太郎    中 車
高橋伊勢守    海老蔵
    
二、 口 上 
亀治郎改め 猿之助
中 車
初舞台 團 子
幹部俳優出演


三、  猿翁十種の内
     黒 塚 
        
老女岩手実は鬼女   亀治郎改め 猿之助
山伏大和坊      門之助
山伏讃岐坊      右  近
阿闍梨祐慶 團十郎

四、 楼門五三桐

真柴久吉     猿之助改め 猿 翁 
石川五右衛門   海老蔵


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