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情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

実在とは何か 実在の多義性

2019-05-08 09:50:00 | 情報と物質の科学哲学
ヒト、ロボット、コンピュータ、機械、測定器などのシステムにとって特定の対象が実在するかしないかは理論的には決まりません。
 
対象がそのシステムに影響を与えるか否かによって実在性が決まると考えるべきです。
 
物質的あるいは非物質的に影響しない対象を実在すると考えるのはオッカムの剃刀に反します。
 
オッカムの剃刀:
 「存在は必要もなしに増加してはならない」という概念節減の原理。
 中世の哲学者オッカムによる。(『集英社国語辞典』)
 
同じものが実在したりしなかったりする例は無数に有ります:
*色や音は、健常者には実在しますが、先天的視聴覚障害者には
 実在しません。
*色や音は、健常者には実在しますが、測定器には実在しません。
*AさんのクオリアはAさんには実在しますが、Bさんには実在しません。
*心は、普通の人たちには実在しますが、唯物論者には実在しません。
*数や普通名詞は、プラトン主義者には実在しますが、
 非プラトン主義者には実在しません。
*神は、信者には実在しますが、信者でない人には実在しません。
*霊や死後の世界は、信じる人には実在しますが、信じない人には
 実在しません。
 
非物質的な対象について実在という言葉を使う場合には必ず制限付きなのです。
これを無視した途端に無用の混乱、誤解、不信、争いが生じることは周知の事実です。
 
情報は、高等動物だけに実在するものではありません。
測定器、コンピュータ、ロボットなど無機物にも実在します。
 
この場合、情報は情報表現物質に担われて実在しています。
これを情報的実在と名付けます。
 
情報の実在を認めないと測定器、コンピュータ、ロボット、動物の現象は理解できません。

物質や物理量の実在と情報の実在では実在の意味が違います:
物体の質量は、物体に実在します。
物体の質量の測定値という情報は、測定器に実在します。
物体の名称、形、色(クオリア)は、物体にではなく脳神経回路の現象に担われて実在します(心的実在)。

情報の実在性は、システム依存的なのです。
 
以上のことから分かるように実在という言葉には多義性があります:
物理的実在物質的実在情報的実在心的実在機能的実在
 
このような状況を実在の多義性と名付けます。
 
物理学者は、実在という言葉を物理的実在あるいは物質的実在という極めて狭い意味で使います。
 
量子力学的現象は、このような狭い実在概念のみでは決して理解できません。
量子力学にとって測定器というシステムに依存する情報的実在という概念が不可欠だからです。
 
数学においても数学的実在という概念が考えられます。
数学という体系(システム)において不可欠な諸概念がそれに該当します。
 
例えば、数的概念、幾何学的概念、論理的概念、等々は数学的実在といえます。
実数論においては無限小数という概念が不可欠です。
しかし、実数には定義不可能なもの(非論理的実数)も含まれます。
この実数が果たして数学的に実在すると言えるのかは、極めて疑わしいのです。
 
実在とは何かについての特集記事があります:
「別冊日経サイエンスNo.186 実在とは何か」、(2012.8)
 
様々な実在論がありますが、前述の分析から「どれが正しいのか」と問うことには殆ど意味がありません。
 
心のみが実在すると主張する唯心論があります。
物質のみが実在すると主張する唯物論もあります。
両者の議論が収束する兆しはありません。
 
詳細は、パソコンサイト 情報とは何か 情報と物質の関係から見える世界像 を是非ご覧ください!


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