80k700m タイトルはまだ考えてない(旧 安全靴をはいたタヌキのホームペヱジ)

自称“流川市民”の、鉄道橋梁&トンネルと北海道の国鉄(JR)廃線跡が好きな人間がブログに挑む。(最近は迷走の日々…)

過去の旅日記 自動車 平成15年冬北海道編 (後編)

2011年06月03日 | 旅行
平成15年11月02日 晴れ

 哀れな姿に変わり果てたレンタカーを横目に見ながら自動車修理工場を後にした私は、丸瀬布駅の待合室でこれからの撮影スケジュールをぼんやりと考えた。
 財布の中には2万円程あったが、信用金庫が休みで金の引き出しが全く不可能で、かつ、首都圏のようにコンビニエンスストアにATMがない(当時、札幌中心部ですら存在していなかった)為、札幌までの足は高速バスを選択する事で少しでも費用を浮かして、その分を滞在費用に充て、何が何でもお目当てを撮影して帰ると意気込んだ。





 午前中に丸瀬布駅ホームから列車を撮影した後は、何もする事がなくなってしまい、暇つぶしに街の中をぶらついたり列車の写真を撮影する以外は待合室でぼんやりと過ごした。
 待合室は住民のコミュニティースペース的な存在として機能しているらしく、住民らが待合室に腰を下ろして世間話に花を咲かせる光景が度々見受けられた。
 待合室でカメラと三脚を投げ出している私を見て、汽車の撮影に来たのかい、と訊ねられ、そのまま私も世間話に参加する形になったり、それなりに充実した時間を過ごす事が出来た。

 夜になって、街の銭湯として宿泊客以外に湯船を開放している旅館越後屋で風呂を浴びた私は、この辺りに食堂はないか訊ねたところ、どこも休みとの事であった。
 やはりコンビニしかないか…と困った顔をしていると、旅館の人にどうしたのか訊ねられた。鉄道写真の撮影に来たが、レンタカーのトラブルで身動きがとれなくなってしまった旨を話すと、握り飯だけならやると言われた。
 風呂代370円のところを、最終的には握り飯2つ+コロッケと漬物付で500円という形にしてもらって、その日の夕食を入手する事が出来た。



 丸瀬布駅の待合室で包みを開けると、俺の拳より大きい握り飯に、厚さ1.5センチ程で掌に収まるサイズのコロッケひとつと、厚さ1センチ程で直径3センチ程の沢庵が2枚入っていた。
 早速食すると、コロッケは南瓜入りでほのかに甘く、沢庵は醤油の味が利いており、また、握り飯は種を抜いた果肉たっぷりの梅干と明太子がふんだんに入って、とても辛かった。
 「ん~うまい、ほんとうにうまい。…うまいわ。」見た目は質素な内容ながら、非常に充実した食事をこころゆくまで堪能した後は、酒を適当に飲んで、明日に備えて早めに床に就いた。

平成15年11月03日 晴れ

 夜明けにはまだ早い午前4時、荷物を抱えて丸瀬布駅を後にして、徒歩で下白滝駅付近の撮影地点に向かった。
 朝の貨物列車を撮影して、列車が一日に数本しか停車しない下白滝駅から列車に乗りこんで、丸瀬布駅に戻ろうという魂胆である。
 荷物を抱えての移動はやはり時間がかかり、下白滝駅の貨物列車通過時刻までに、撮影ポイントに辿り着けないと判断して、下白滝駅から丸瀬布寄りの場所で張り込んだ。
 ところが、通過予定時刻を20分過ぎても列車はまだ現れない。30分程過ぎたところでカメラの微調整をしようと三脚からカメラを外してごそごそやっていると、奴が現れた!
 三脚にセットするのが間に合わず、無理を承知で手持ちで撮影したが、後日現像してみると、やはりブレていた。

 重い足取りで下白滝駅に向かうと、駅前の人が住んでいる民家で放し飼いになっている犬の一団が吠えながらこちらに向かって走ってきた。
 初めてだとびっくりするかも知れないが、ここの犬達は人なつこくて、変な事をしない限り噛み付く事はない。

(2枚とも平成15年夏に撮影)




 その犬達と戯れて朝食を分け与えたり、待合室でくつろいでいると、下白滝駅に停車する数少ない列車が到着したので、丸瀬布まで列車で戻る事にした。

 列車に揺られながら丸瀬布駅に着いた私は、もう一本の貨物列車をお目当てのポイントで撮影しようと、丸瀬布タクシーの事務所を訪ねてみた。
 行先を大雑把に説明して運賃を相談すると、お目当てのポイントを往復しても何とかなりそうだとわかったので、早速予約した。
 指定した時間に改めて事務所を訪ねると、タクシーが既にスタンバイして、トランクを開けて待っていたので、大きな荷物をトランクに入れた。
 タクシーに早速乗りこむと、開口一番、下白滝駅を少し過ぎたところの駐車場でいいのかい、と訪ねてきた。
 予約の段階では、下白滝駅の辺りまでと曖昧にしか言っていなかったので聞いてみると、今までに沢山の鉄道写真目的の客を乗せて撮影ポイントまで送っているそうで、丸瀬布近辺の撮影ポイントはほぼ全て知っているとの事だった。
 迎えに来てもらう時間を指定して、タクシーから降りた私は、眼下に川が流れている撮影ポイントに三脚とカメラをセットして、機材の調整を行った。
 程なく、数台の車が駐車場脇に横付けして、三脚とカメラを持った人達がやって来て撮影準備を始めた。





 刻々と通過時刻が迫ってきた。川のせせらぎで列車の音は聞こえず、また、岩場の陰から列車が現れるので、接近するのがわからない。不安になる。
 まもなく、岩場の陰から列車が現れた。シャッターを切る音が辺りに響いた。列車がカメラのファインダーから消えるまで、シャッターを無心に切り続けた。色々な犠牲を乗り越えてここまで苦労して来たのは、全てこの一瞬の為にあったのだ!









 列車が通過して、撮影場所から皆が撤収したのを見届けた私は、重い荷物を抱えて下白滝駅に向かい、待合室に腰を下ろした。
 本当にこの二日間が長かった。余りにも印象深い撮影となった。また下白滝駅を訪ねようと感慨にふけっていた私のところに、タクシーがやって来た…。



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