心理カウンセラーの眼!

孤立無援の・・君よ、眼をこらして見よ!

映画・沈まぬ太陽と男の矜持

2009-11-05 08:12:35 | マインドケア 今週の言の葉

こんにちは、テツせんです。
昨日は映画「沈まぬ太陽」を観たせいで、お尻がしびれましたが、
みなさんはいかがお過ごしでしょうか?

今回はその、「沈まぬ太陽」についてお話したいとおもいます。
原作・山崎豊子、監督・若松節郎、渡辺謙主演 ということでした。

この映画の原作は、実在された日本航空社員、小倉寛太郎氏をモデルにしたフィクションです。

さて、主人公である国民航空社員の恩地元が大切にする 《男の矜持》とは何でしょう?
男・恩地が胸に秘する矜持とは、いったい何でしょうか?
( 初っ端から興奮気味ですみませんね。いつも映画を観たあとはこうなってしまいます・・)

ちなみにこの映画での矜持(きょうじ)という言葉は、
《 自負をもっておのれを律する》 ほどの意味です。
まっ、本物の武士に重ねたイメージといったところでしょうか。
この映画を観た女性のみなさんは、恩地のそれをはたして認めるでしょうか?

妻のりつ子は渋々、辛うじて夫に同調する道をえらんだけれど。・・・
もちろんその時代の心的な抑制が利いていたからこそ家族崩壊を免れたともいえるでしょう。

「 男って馬鹿ですから!」と自嘲をこめて、
映画のあとで三十年来のパートナーである妻にまた詫びを入れた。
また、というのは前にも映画「母べえ」のあとで吉永小百合を泣かせた主人公にかわって
わたしがパートナーに詫びたことをおもいだしたから。

まずひとはいざ知らず、自分にもわずかに矜持はあるけれど、
所詮は高がしれているとおもっている。・・

むろん、未だ血気盛んな青年はこうは考えず、
むしろ矜持こそがおのれを律して支えている自分のすべてだとおもっているものです。
わたしは矜持を持ちあわせないより、持った人を信用するが、
だがあまりに過大な矜持は、おそらく 事を誤る。
家族を悲嘆させるような矜持などもつべきではないとおもっている。

それではおまえは自分の言った事や行動に責任を取らないつもりかといわれるかもしれない。
日和見主義者という人を貶めるにはうってつけの罵声の言葉もあるし。・・

だが、その詰問にはずるい陥穽が敷かれてある。
責任を取るとは、
片手落ちの不条理を、みすみすの不幸を易々と受け入れることではないはずだ。
それでは闘っているようでも、じつは不条理に従っているだけになるのだ。

母べえの先生も、恩地元も、自らの矜持に寄り添いすぎて、
自らの闘い方に限界をつくっていたといえるでしょう。

それはすなわち、
心的な孤立といえる、現実認識の欠落の反映とみられる。

すなわち、先生はおのれの矜持にかけて死を辞さなかったし、
恩地元は会社員としての生殺しと引き換えに、
おのれの矜持を通したけれども、それはつまり
死ぬことに向かった孤立思考であり、
彼らの矜持というものが生み出した孤立の敗北の姿にほかならない。

わたしが、自分の矜持など「高がしれている」と言った意味には、
こうした敗北の歴史への危機意識がある。
心的に現実解離した孤立の考え方に行き着く危うさへの警告を含ませているわけです。

彼らが固執する、命も惜しまぬ矜持のどこか自己愛的なものと、
それが屈折した他者との関係妄想として形成される
ただただ 《 責任を全うする 》 ( 腹を切ってみせる) という美化の強迫観念こそが、
じつに日本的な、厄介な思考回路として埋め込まれてきているわけです。

本当のたたかいとは何か、敗北とは何かをついに理解できずに、
自己観念が死に向かった思考回路のうえで、
彼らが 《 責任を全うする 》 という言葉をイメージしていることがわかります。
このような思考回路を保持している人が、どこかのある局面で必ず孤立を招くわけです。

矜持の男が忌み嫌う、裏切り者になること。・・
たたかいの中で必ず起きる 《 裏切り 》 という関係妄想も、
裏切られた者が抱いた、
味方の者への密着依存から生みだされる病理的思考にほかならない。

たたかいの中では、さまざまな裏切りがみられるものだが、
裏切る者たちの方にこそ、《 個として生きる切実さ 》 をみることができない者は
たたかいつづけることができないのだということです。

わたしたちは高がしれた矜持を懐にして、ひたすら
不条理な相手に何かを言われる筋合いは無いのだと泰然としていることがのぞましい。

《 個 》 の切実なものすべてを泰然として受け留めなければ、むしろ
たたかいそのものを矮小な、価値の低いものに貶めることになるのです。

少なくともわたしたちは、不条理なものに抵抗して、たとえ抑圧されても、
短絡した勝敗を挑んではならないし、

たとえ不条理なものが自分一代で手に負えなかったとしても、
死に急いではいけない。
そのような覚悟を持つものだけがたたかい続けられるようにおもう。・・・・・

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1 コメント

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おもしろい観方ですねー (フライ)
2009-11-06 07:08:31
映画「沈まぬ太陽」をここまでしぼりきった核心の取り出し方に驚嘆しましたねー。
ごちゃごちゃした日航問題にあえてかまわないで、(例えば瀬島龍三や自衛隊ミサイル誤発説)
もっと深い日本人の心の持ち方の誤りについてズバリ明快に開示していてさすがテツ先さんですねー。
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