
【白井健康元気村の健康教室】
あなたの目、大丈夫?
千葉でたった一人の訪問診療眼科医が講演
▲講師の北橋正康先生
千葉県初の訪問眼科医
白井健康元気村は3月23日、ウェルぷらっと(白井市健康福祉センター)で健康教室を開催しました。講師は、のぞみアイクリニックの院長で、千葉県初の眼科の訪問医療を行っている北橋正康先生です。
「訪問医療をしている眼科医は全国的にはほとんどいません。千葉県では私だけでしょう。ご期待に沿えない状況ですが、何とか頑張っています」
講演の冒頭、まずは自己紹介する北橋先生。白内障手術と加齢黄斑変性が専門の北橋先生は、外界から受ける情報の約90%を担う視覚が日常生活において不可欠な役割を果たしていると力説します。
そして、「知っておきたい目の病気」として、最初に白内障をあげました。目がかすむ原因のほとんどが白内障だとか。水晶体の加齢による混濁が進む病気で、視界がかすむ、まぶしい、視力の低下といった症状が特徴。高齢者が視力を低下すると、転倒するリスクが増えるどころか、認知機能も低下することも分かっています。
▲視力の低下で認知症リスクが増える!
▲右が白内障になった人の見え方
「通常はゆっくり進行する疾患で緊急性はないが、かなり進行して日常生活に支障が出た場合、手術)が必要だと言います。いずれにしても、白内障が良くなることはない。手術するしかありません。手術すれば、またよく見えるようになる」
▲動画で手術の模様を写す
高齢者に多い目の病気とその治療
では、白内障以外にどんな病気があるのでしょうか。白内障の次に知られているのが、緑内障です。視神経が障害され、徐々に視野が狭くなる。成人の失明原因のナンバーワンが緑内障なのです。
北橋先生は会場の参加者に、こんなクイズを出しました。70歳以上で緑内障になる人は、①10人に1、②100人に1人、③1000人に1人―のどれでしょう?
会場の皆さんの多くは②と答えました。ところが、なんと正解は①でした。「ヘタすると、10人に5人くらいいるかも知れない」と北橋先生は警告します。「神経がやられて麻痺が残る。二度と元に戻らないのです」
初期は自覚症状が少ないので、気づかない人が多い。しかし、かなり進行すると視野が欠けて日常生活に支障をきたすことになります。「頭痛・眼痛・嘔吐・食欲不振などが症状が出てくる。非常に緊急性が高いので、すぐに眼科を受診して治療が必要になる。眼圧をしっかりコントロールすることで失明を防ぐしかありません」
緑内障の治療法として、点眼薬、レーザー治療、手術(MIGSなど)があります。
▲北橋先生が閉塞隅角緑内障の恐ろしさを説明する
▲真剣に聴き入る参加者
虫・糸・アメーバが…
虫・糸・アメーバ、あるいは蚊が飛んだり、暗いところで光が見える。また視野の一部が急に暗くなったり、見えなくなったり。そんな経験はありますか? 北橋先生が言う。
「そんな症状がなくても、定期的な眼底検査を受けることが大切。もっとも危険なのは放置することです」
白内障、緑内障の他にも高齢者に多い目の病気に次のようなものがあります。
■糖尿病網膜症
〈概要〉糖尿病による網膜の血管障害。
〈 症状〉視界のかすみ、飛蚊症、視力低下。
〈 治療法〉血糖コントロール、レーザー治療、抗VEGF療法、硝子体手術。
■網膜静脈閉塞症
〈概要〉網膜の静脈が詰まり、血流障害を起こす病気。
〈症状〉突然の視力低下や視野の異常。
〈治療法〉抗VEGF療法、レーザー治療。
■ドライアイ
〈概要〉涙の量や質の異常による目の不快感。
〈症状〉目の乾燥感、異物感、かすみ目。
〈治療法〉点眼薬(人工涙液、ヒアルロン酸)、涙点プラグ、生活改善。
■加齢黄斑変性
〈 概要〉網膜の中心部(黄斑)が障害される病気。
〈症状〉視界の中心が歪む・ぼやける、視力低下。
〈治療法〉サプリメント接種、抗VEGF療法、光線力学療法、レーザー治療。
加齢黄斑変性は視覚障害の第4位ですが、欧米では2位だとか。3大リスクファクターとして、①加齢、②喫煙、③男性であることがあげられます。
▲高額な治療費を払う前に…
体力の衰えと同時に目も衰える
40歳を過ぎると、体力の衰えと並行するように目も衰えてきます。
・小さい文字が見にくい
・眼がしょぼしょぼする
・乾く感じがする
・疲れる
・眼を刺されたように痛い
・目がごろごろする
・瞼が下がってきた
・目ヤニが出る
・明るいところが眩しい
・夕方になると見にくくなる
・瞬きをしないとよく見えない
加齢に伴って眼の脆弱性が増加したところに様々な外的内的要因が加わり、自然と目の機能も低下するのです。そんな状態が「アイフレイル」です。アイフレイルに陥って深刻な病気になる前に生活習慣を改善すると同時に、定期健診と早期発見が欠かせません。視力を維持し、豊かな生活を送りたいものです。
何を食べたらいい?
不飽和脂肪酸(DHA、EPA)は、脳を活性化するので、脳卒中や認知症の予防効果があります。また、加齢黄斑変性の発症を押さえることに一役買っているという。加齢黄斑変性の患者の多い欧米でも青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸に人気が集まっているようです。
食の欧米化が進んだ戦後の食生活を見直すときかも知れません。日本人はもう一度、魚中心の食生活に戻ることを考えるべきでしょう。不飽和脂肪酸がふんだんに含まれるしそ油やえごま油も料理に活用してください。
眼科訪問診療とは
さて、北橋先生が行っている「眼科訪問診療」ですが、一体どんなことをしているのか。知らない人がほとんどでしょう。それも無理はありません。千葉県でたった一人しかいないからです。通院が難しい高齢者に診察する機会を与えるのが目的です。
北橋先生が院長を務める「のぞみアイクリニック」では、眼科検診、視力測定、眼圧測定、点眼指導、必要に応じた治療を提案しています。「在宅医療との連携や地域医療の充実が後の課題」だと指摘する北橋先生の活躍に大いに期待しましょう。
【北橋正康(きたはし まさやす)先生のプロフィール】
(写真/山本徳造)
のぞみアイクリニック院長。昭和49(1974)年、三重県名張市に生まれる。琉球大学医学部卒業後、2000年 4月 千葉大学医学部附属病院眼科、国立国際医療センター眼科、社会保険船橋中央病院眼科、千葉大学大学院医学研究院 眼科助教、千葉大学大学院医学研究院眼科講師、かきすぎ医院勤務を経て、令和5(2023)年1月に訪問診療を専門とする「のぞみアイクリニック」を千葉県船橋市に開院する。白内障手術と加齢黄斑変性が専門。千葉県眼科医会理事。夫人と子供3人の5人家族で、趣味は、ウォーハンマー(自分で組み立てたミニチュアを使って遊ぶテーブルボードゲーム)。