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フィリピン美人は太っ腹 【連載】呑んで喰って、また呑んで(67)

2020-10-14 15:53:45 | 【連載】呑んで喰って、また呑んで

【連載】呑んで喰って、また呑んで(67

フィリピン美人は太っ腹

●日本・東京

山本徳造 (本ブログ編集人)  

 

 

「私、ベルナデットよ。覚えてる?」
 電話の主はフィリピンの女性だった。あー、あの美人か。その2年ほど前に香港で何かのパーティーで彼女と知り合って、日本の連絡先を教えたのである。今もそうだが、私はアルコールが入ると、誰かれなく、「今度、うちに泊まりに来てよ」というのが口癖になっていたのだ。

 その半年ほど前にも、ベルナデットから「今、日本に着いた」という電話が入ったが、あいにくニューヨーク取材で成田空港に向かう直前だったので会うことができなかったことを思い出した。30代前半の彼女は白人みたいな顔立ちなので、おそらくスペインの血が濃いメスティーソなのだろう。
「今、新宿にいるの」と彼女は要件を切り出した。「友達と一緒だけど、あなたのところに泊まってもいい?」
「ああ、いいよ」
 なにせ、気の弱い私だ。人から何か頼まれると、断れない。損な性格である。そんなわけで、新宿まで迎えに行くことに。
 JR新宿駅でベルナデットとその女友達、そして背が高くて色白のイケメンが、それぞれ大きなスーツケースを地面に置いて、私を待っていた。
「心配しないで。彼はこれから日本人のガールフレンドのところに泊まりにいくから、友達と二人だけよ」
 居候が3人もいたことがあるから、まあいいか。イケメンと別れて、彼女たちを新高円寺の拙宅まで案内する。部屋に着くと、ベルナデットがスーツケースを開けてウイスキーのボトルを取り出した。
「これ、お土産よ」
 と彼女がウイスキーのボトルを取り出した。免税店で買ったのだろう。有難い。まずは礼を言う。
「で、いつまでいるの?」
「うーん、1週間ぐらいかしら」
 そう言ってベルナデットが普段着に着替える。友達のほうの名前を思い出せないが、二人はタガログ語で笑いあってはしゃぎ。まるで自分たちの部屋のようにくつろいでいるではないか。たまには深刻になるが、表向きは底抜けに明るい。それがフィリピ―ナである。
 向かいの焼鳥屋に連れて行ったが、残念ながら、アルコールはほとんど飲まない。ビールを少し舐める程度である。食が細いのか、焼鳥もあまり食べないので、早々に切り上げた。
 彼女たちも疲れていたのだろう。早めに寝ることにした。すると布団の上で聖書を広げて、その一節を声を出して読み始めるではないか。友達はというと、鼾をかいていた。
「毎晩、聖書を読まないと、眠れないの」
「あ、そう」
 どうやら毎日の習慣らしい。敬虔なカトリック教徒なのだろうが、真面目な一面を見せつけられて驚くやら感心するやら。気になったのは、来日の目的である。翌日、何本か誰かに電話して、怒ったようにまくしたてていた。タガログ語なので、会話の内容はわからない。いずれにしても、観光目的でないことは確かだった。
 その翌日だったろうか、ベルナデットに、
「仕事でフィリピンの女の子たちと会うので、つき合って欲しい」
 と言われた。一体どんな仕事をしているのか、興味津々である。女の子たちはJR船橋駅の近くのアパートに住んでいるという。友達は別の用事で、どこかに出かけた。何の用事か知らないが、詮索するのも野暮だ。

 ベルナデットと私が船橋駅に着く。歩いて5分ほどのところに彼女たちのアパートがあった。ドアを開けると、狭い部屋に若いフィリピン女性たちがひしめいている。7、8人はいただろうか。みんな日本で水商売に従事しているようだ。ベルナデットはその子たちからお金を徴収し始めた。
「この前、あなたに会えなかったけど、私、日本に来たでしょ。そのときに彼女たちにドレスとかいろいろ売ったのよ。その代金を集めてるの」
 ふーん、そういう商売をしているのか。無事に集金が終わった。高円寺に戻るために電車に乗ると、ベルナデットは上機嫌である。それも無理はないだろう。なにしろ大金が入ったのだから。私を誘ったのは、用心棒代わりだったに違いない。
 夕方になると、友達も戻ってきた。その夜、近所のカラオケ・スタジオで盛大な夕食会が催された。彼女の奢りである。海外青年協力隊でフィリピンにも数年いたことのあるM君も誘った。おかしなことにベルナデットと友達が生ビールをぐいぐいと呑んでいる。
「えーっ、お酒、駄目だったんじゃないの?」
「私、ビールが大好きなの。今日、集金したのでホッとしたわ」
 どうやら、集金を終えたので、「さ、呑むぞ!」となったのだろう。彼女は生ビールを何倍もお代わりした。フレンチ・フライもソーセージも瞬く間に平らげている。
「このフライド・チキンも注文しようかしら。あなたも食べるでしょ?」
 ベルナデットがM君に尋ねる。
「もちろん!」
 久しぶりにただ飯にありつけてМ君は大喜びだ。フィリピン女性に会えるというので、彼は写真を数枚持参してきた。フィリピンでつき合っていた女性の写真である。カラオケ・スタジオでの宴会は深夜まで続き、彼女たちは代わる代わる英語の歌を熱唱した。プロの歌手みたいである。М君はというと、何やら暗い演歌をが鳴っていた。それから数日、彼女たちは拙宅や私の友人宅での宴会を大いに楽しんだようである。ベルナデットは帰国の日、私に紙包みを手渡した。
「あなたには世話になったわ。これ、宿泊代よ」
 なんと万札が5枚入っていた。フィリピンの「マガンダ」は太っ腹である。有難く頂戴した。用心棒代として。(つづく)

 


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