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半導体のイロハから 【新連載】半導体一筋60年①

2024-05-23 05:30:32 | 半導体一筋60年

【新連載】半導体一筋60年①

半導体のイロハから

釜原紘一(日本電子デバイス産業協会監事)

 

 

最近たびたびテレビや雑誌などで取り上げられているのが半導体です。人々の関心が高まっているのでしょうか。私はサラリーマン生活の全てを半導体産業の中で過ごしてきました。今も多少は関わっています。だから、半導体に関して何か質問されたら答えなければならないと感じていました。ただ、80歳を超えた年寄りなので、極めて雑然とした話になりそうです。そんなわけで、よもやま話と思って読み流してください。(釜原紘一)

 

▲自宅の家電には半導体が多く使われている

 

どこに半導体が使われているの?

 私たちの身の回りには多くの家電があります。テレビ、ラジオ、携帯電話、スマホ、パソコン、DVD(プレーヤー、レコーダー)などの電子機器には多くの半導体が使われています。

 冷蔵庫、エアコン、洗濯機などは「白物家電」と呼ばれますが、ここにも半導体が使われているのをご存じですか。ここ数年、照明にLED(発光ダイオード)が使われるようになりましたが、これも立派な半導体です。
 交差点の信号もLEDに置き換わりつつあります。外に出れば車や電車に乗ります。遠出をするときは新幹線や飛行機を利用します。これらは半導体無しには動きません。

 このように半導体は身の回りのあらゆるところに使われており、半導体無しに私たちの生活は成り立たなくなっています。しかし私たちは半導体を目にする事も意識することもないので、分かりにくいのかも知れません。

集積回路と個別半導体

 半導体製品には、集積回路(IC)と個別半導体の二つに分けられます。まずこの二つについて話を始めましょう。

 

▲一般的な集積回路(IC)

 

 皆さんはメモリ、マイコンという単語を耳にしたことがあるかも知れませんが、これらは集積回路の代表的なものです。メモリはデータを記憶しておくもので、代表的な品種にDRAM(ディーラム)とフラッシュメモリがあります。DRAMは主にパソコンの主記憶装置として使われます。


 DRAMの世界一のメーカは韓国のサムスンです。かつては日本の日立、NEC、東芝、富士通などの日本勢がDRAM世界一の座を争っていました。しかし、韓国との競争に敗れ、DRAM市場から撤退しています。
 フラッシュメモリは、主に携帯電話とスマホに使われています。スマホで撮影した写真は内臓されているフラッシュメモリに記憶されます。現在、フラッシュメモリで世界一のメーカーはどこかというと、やはりサムスンですが、東芝から分離したキオクシアも健闘しています。
 
 ところで、マイコンは元々マイクロコンピュータの略称でした。具体的な品種としてはMPU(マイクロプロセッサー)、MCU(マイクロコントローラ)などがあります。
 MPUはパソコンの頭脳である中央演算処理装置となるもので、米国のインテルが圧倒的シェアを誇っています。これによって同社は世界最大の半導体メーカとなりました。

▲マイクロプロセッサ


 MCUはMPUほど高性能ではありませんが、価格も手ごろで自動車、家電などで幅広く使われています。この分野では日本のルネサス(日立、NEC、三菱の半体が統合)が健闘しているのではないでしょうか。

電力を制御するパワーデバイス 

 個別の半導体では、パワーデバイス(電力用半導体)を取り上げたいと思います。

 パワーデバイスは電力を制御する半導体で、環境問題を解決するために無くてはならないもの。パワーデバイスには、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などがあります。
 余り意識していないと思いますが、私たちの身の回りには、モータが少なくありません。冷蔵庫は1年365日ひと時も休むことなく働き続けていますが、その中ではモータが回ってコンプレッサ(圧縮機)を動かしています。
 エアコンも洗濯機も同じで、モータが大活躍。このモータの回転を制御するときにパワーデバイスが使われます。インバータエアコンは、省エネタイプとして宣伝されていますが、電気を効率よく利用する技術としてインバータ回路があるのです。

 それらの回路にパワーデバイスは絶対に欠かせません。太陽光発電、風力発電などでも電力を送電線に送る時に必須です。新幹線や地下鉄などもモータで動くので、パワーデバイスが必要なのは言うまでもないでしょう。これによって電車の性能が決まると言っても過言ではありません。
 またハイブリッドカーや電気自動車はモータで動くので、パワーデバイスが主役なのです。パワーデバイスは三菱電機、富士電機などの日本メーカが頑張っています。

▲パワーデバイスの製品群

 

 昭和39(1964)年、私は大学を卒業して三菱電機に入社しました。当時は山陽新幹線向けのパワーデバイスが開発され、量産へ移るころです。また30代には全国の製鉄所に向けてパワーデバイスの製造に追われました。
 製鉄所では真っ赤な鉄を圧延する時、巨大なローラーをモータで回すので、多くのパワーデバイスが必要でした。そんなわけで、新日鉄君津、住金和歌山・鹿島、川鉄水島、鋼管扇島、など当時の全国の製鉄所の名前が今でもスラスラと出てきます。

 後に私は千葉に住むことになりました。国道16号線の新日鉄(今の日鉄住金)の君津製鉄所のそばをドライブした時なんか、「あの時作ったデバイスがここで動いているのか」と感慨に耽ったものです。

 さて、半導体の働きをひとことで言えば、「電気を制御すること」。つまり、電流を流したり、止めたり、電圧を上げたり、下げたり、交流を直流にしたり、逆に直流を交流にしたりするのに半導体が使われます。

人工知能(AI)に欠かせない半導体

 半導体の進歩と共に電子機器が小型化して新しい機器が生まれました。それによって私たちの生活が変わったのは否定しようがありません。そして、これからはAI(人工知能)が、だんだんと私たちの生活に影響を与えることになるでしょう。

 AIには半導体が不可欠です。半導体づくりは、国を支える重要な産業です。安全保障上も極めて重要な技術なので、米中で激しい競争が行われています。もちろん、米中だけでありません。世界中が半導体を戦略産業として力を入れています。はて日本はどうでしょうか。我が国も遅ればせながら重い腰を上げ始めました。
 次回からは半導体の技術がどのように発展してきたか、その歴史を振り返りたいと思います。歴史ですから、日本の浮き沈み、欧米の巻き返し、韓国、台湾、中国の台頭、そして今後の世界などにも触れることにしましょう。

 

【釜原紘一(かまはら こういち)さんのプロフィール】

昭和15(1940)年12月、高知県室戸市に生まれる。父親の仕事の関係で幼少期に福岡(博多)、東京(世田谷上馬)、埼玉(浦和)、新京(旧満洲国の首都、現在の中国吉林省・長春)などを転々とし、昭和19(1944)年に帰国、室戸市で終戦を迎える。小学2年の時に上京し、少年期から大学卒業までを東京で過ごす。昭和39(1964)年3月、早稲田大学理工学部応用物理学科を卒業。同年4月、三菱電機(株)に入社後、兵庫県伊丹市の半導体工場に配属され、電力用半導体の開発・設計・製造に携わる。昭和57(1982)年3月、福岡市に電力半導体工場が移転したことで福岡へ。昭和60(1985)年10月、電力半導体製造課長を最後に本社に移り、半導体マーケティング部長として半導体全般のグローバルな調査・分析に従事。同時に業界活動にも携わり、EIAJ(社団法人日本電子機械工業会)の調査統計委員長、中国半導体調査団団長、WSTS(世界半導体市場統計)日本協議会会長などを務めた。平成13(2001)年3月に定年退職後、社団法人日本半導体ベンチャー協会常務理事・事務局長に就任。平成25(2013)年10月、同協会が発展的解消となり、(一社)日本電子デバイス産業協会が発足すると同時に監事を拝命し今日に至る。白井市では白井稲門会副会長、白井シニアライオンズクラブ会長などを務めた。趣味は、音楽鑑賞(クラシックから演歌まで)、旅行(国内、海外)。好きな食べ物は、麺類(蕎麦、ラーメン、うどん、そうめん、パスタなど長いもの全般)とカツオのたたき(但しスーパーで売っているものは食べない)


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