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機内で呑みすぎて泥酔 【連載】呑んで喰って、また呑んで㉔

2019-12-11 10:35:05 | 【連載】呑んで喰って、また呑んで

【連載】呑んで喰って、また呑んで㉔

機内で呑みすぎて泥酔

●成田~マニラ

山本徳造 (本ブログ編集人)  

 

「あなた、どこから入国したの?」
 不思議そうな表情で私を見つめたのは、マラカニアン宮殿でプレス担当をしている女性職員だ。平成8年5月、戦後もフィリピン・ルバング島のジャングルに潜伏していた元日本兵の小野田敏郎さんがルバング再訪を終え、マラカニアン宮殿にラモス大統領を表敬訪問したときのことである。
「マニラ空港だけど……何か?」
 といぶかる私に、彼女は衝撃の事実を告げた。
「でも、パスポートに入国スタンプが押されてないわ。つまり、あなたはフィリピンに密入国したっていうわけ。逮捕されるわよ」
「えーっ! そんなー」
 頭が混乱してきた。10日ほど前に成田からマニラ空港に着いたのだが……入国スタンプが押されていないとは、一体どういうことなのか。うーん、やっぱりあれが原因なのか。マニラ到着時の状況が徐々に蘇ってきた。
 私とカメラマンのナベさんこと渡辺克巳さんは、小野田さんのルバング再訪を随行取材をすべく、成田空港から小野田さん夫妻と同じ飛行機に搭乗した。座席も同じビジネスクラスである。飛行機が離陸してしばらくしてから私たちは、小野田さんご夫妻に挨拶し、随行取材したい旨を告げた。快く承諾してもらったので、あとは機内でリラックスするのみだ。
「さ、ナベさん、マニラに着くまで呑みましょうか」
「いいね」
 なにせビジネスクラスである。食事が運ばれてきた。ふたりとも糖尿病持ちだが、たまには心ゆくまで美味い酒を呑みたい。まずは取材の成功を祈って、シャンパンで乾杯だ。
「うっめー!」
 ナベさんが喉を鳴らす。もう一度シャンパン・グラスで乾杯する。
「ビジネスクラスに乾杯!」
「カンパ~イ!」
 スモーク・サーモンがまた美味い。
「さてと、ナベさん、次は何にします?」
「オレ、ビールがいいかな」
「私はドライ・マーティニにします」
 こんなやりとりが何時間も続く。マニラ空港に着いた頃には、ふたりとも完全に出来上がっていた。小野田さん夫妻の後を追ってVIPルームに向かったのだが、気がついたときには夫妻の姿が見えない。
「あれっ、ナベさん、小野田さんたちは?」
「………」
 その後の記憶が定かでない。空港の外にふたりとも出たことは覚えているが、ナベさんとはぐれてしまった。いくら探しても見つからない。約2時間後にマニラ・ホテルで小野田さん歓迎パーティが開かれるので、私はタクシーを拾ってマニラ・ホテルに急いだ。しかし、このホテルにもナベさんはいない。一体、どこに消えたのか。
 写真が撮れないと困る。そんな心配をしているうちに、すっかり酔いが醒めてしまった。泣きそうな顔でナベさんが会場に現れたのは、パーティーが始まる直前である。間に合ってよかった。さすがプロである。つい先ほどまで泥酔状態だった人物とは思えない引き締まった表情で写真を撮りまくるナベさんであった。
 ところで、私がどうして入国スタンプも押されずに空港の外に出ることができたのか。いまだ答えは出てこない。謎のままである。幸いなことに、マラカニアン宮殿の女性職員が後日、私のパスポートに入国スタンプを押しに行ってくれたので、逮捕されずに済んだ。教訓―。高度の高い飛行機の中では酔いやすいので、調子に乗って呑みすぎてはいけません。が、この教訓を守ったためしは一度もない。

 

 


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