白井健康元気村

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高齢者の運転免許 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㊵

2022-03-03 07:31:32 | 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆

【気まま連載】帰ってきたミーハー婆㊵

高齢者の運転免許

岩崎邦子 

 

 
「あれから、もう3年も経つのかぁ! ついこの間だった気がするのに……」
 千葉県公安委員会から「運転免許更新のための講習のお知らせ」のハガキが1月の半ばに届いた。
 高齢者講習は70歳から74歳までの人は、2時間の講習や手数料だけで、ほぼ免許更新が出来るのだ。75歳以上になると、認知機能検査後に高齢者講習・実車・手数料を払う、という手続きが。これが3年ごとにやってくる。
 このことを、以前の私のエッセー「日々悠々」の25回目(2019年3月8日)の「認知症検査を受けた」で、ハガキが届いてからの講習の予約のこと、認知症テストの時の様子など細々した内容を書いた。
 ニュースでは、高齢者がブレーキとアクセルの踏み間違えで起こした事故が度々放映されている。元上級官僚とかが、自転車に乗った母・娘に対して、悲惨な事故を引き起こしたのに、あくまでも、自分の間違いを認めない悪質に思われる事故には、呆れるばかりであった。
 コンビニや店舗に突っ込んで、車や店先がぐちゃぐちゃになっている映像はも度々見かける。ギア間違いで駐車場を突き抜け落下の画面もあった。小さな孫を巻き込んでしまった痛ましい事故も見た。
 だから、「事故を起こしているのは高齢者が多い」と思いがちだ。でも、交通事故では年齢が公表されるので、若者の無茶ぶりや横暴さも露呈している。
 そこで、免許保有者の交通事故の年齢別事故発生率(警視庁2020年)を調べてみた。
 一般的な交通事故の主な原因として、挙げられるのは、①最高速度違反② 脇見運転③動静不注意④漫然運転⑤運転操作不適――だ。 
 まず、16歳から19歳が飛びぬけて多く、次いで20歳から29歳、3番目が85歳以上である。35歳から69歳は横ばい、70歳から74歳まで事故率が上がるのだが、75歳から79歳は、なんと25歳から29歳と同等の事故率ではないか。
 実態の事故件数は減少しているにもかかわらず。高齢者の交通事故が多いように見えるのは、報道の影響を受けているからだろう。80歳以上では、一時増加していたが、直近では減少している。
 死亡事故に限った場合、免許保有者の10万人あたりの事故件数が、若年層を若干上回る。報道を見聞きした時の、印象の残り方が大きいことが、高齢者の事故件数が実態以上に多く感じられているようだ。
 そうした事態を受けて、高齢者の免許返納が推進されるようになった。本人にまだその気がなくても、家族の大きな説得と要望で、観念して免許の返納した人たちがいる。
 その一人のОさんだ。もう10年ほど前にパークゴルフで出会った。現役時代は要職についておられたようで、国からの勲章も授与されていた。私より10歳上だったが、腰が低くとても温厚で、決して上から目線ではなく、主婦上がりの私にも丁寧な言葉づかいで話しかける人であった。
 まだまだお元気で、車も新しくされて間もなかったし、元気にプレーに参加されていた。ところが、免許返納をすることになり、パークゴルフの行き来は息子さんのお嫁さんが担当されることになった。
 心優しいОさんは、パートに出ているお嫁さんへの遠慮もあったのだろう、パークゴルフ参加はすっかり減ってしまった。免許返納は家族の強い要望であったそうだ。
 時々、プレーに参加されたのだが、休憩後、クラブをどこに置いてきたのか、また誰と組んでのプレーだったのか、分からなくなることも。
 同じ会には、もう一人のОさんがいた。この方も気性の穏やかな方で、その会の発足以来の重鎮の方であったが、やはり家族の強い要望で免許は返納された。難聴とかで補聴器が必需品になったことが、理由のようだ。
 以後は近所に住む人たちが交代制で、車の相乗りという形で参加されるように。しばらくして、私自身はそのパークゴルフの会を辞することになった。
 会の責任者の形だった私にとっては、一人の女性が引き起こした問題で、彼女の会の去就に悩まされた結果であった。その時の顛末は、やはり「日々悠々」のエッセー(26回・27回「迷惑と困惑」(2019年3月15と同月22日)で綴っている。
 奇しくも二人のОさんは、免許返納という共通の行動をされることになったが、お二人のその後が気になって仕方なかった。
 先に書いたOさんは認知症や他の病気もあって、亡くなられたとのこと。後述のOさんは、コロナ騒ぎの前に、腰をまげて歩くことを、奥さんから厳しく叱咤激励されたらしい。
 そんなОさんをスーパーマーケットで見かけたのは、二度や三度ではない。すっかり面影のなくなった姿だったので、とても声を掛けられる気になれなかった。
 でも、私の知っているお二人は、優しくて立派な方たちであったことは確かだ。あくまでも私個人の意見を言わせてもらえば、こじ付けかも知れないが、自らの判断ではなく、免許返納を強要されたことの弊害もあったのでは…。
 ところで、知り合いのご夫婦が揃って免許返納をされたことを聞いた時は、かなりびっくりした。活動家でもあった奥さんが、台所に立つときも、家の階段も介添えが必要な状態になり、老々介護状態だとか。
 当時は、返納することが「勇気ある決断」、あるいは「美談」でもあるかのような捉え方をされていた。が、行動範囲が狭くなったことや、今までの友人関係も薄れていくことの焦燥感が大きかったようだ。
 こんな思いになるのは、最近になってパークゴルフの仲間から、何人もの人が免許返納以来、すっかり元気が無くなった挙句、病気で寝込んだり、亡くなった方がいかに多いことか。
 ここで少し救われる話をしよう。
 やはりパークゴルフの仲間のUさんの弁である。彼女のご主人(82)が昨年秋、コロナの病院逼迫状態が少し緩和された隙に、内臓の手術をされた。その後は元気にパークゴルフに参加されている。そして若者向けの型と色の新車をお子さんの勧めもあって購入されたらしい。
 そのことを躊躇なく受け入れたのには、いずれ孫に譲れるからの思いがあったからという。運転免許返納を強いられることの何倍も、何倍も嬉しい話だったに違いない。
 さて、日々を生活しているなかで、物忘れやうっかりミスが増えている私。これは認知機能の衰えでもあろう。まだ家族から運転免許返納の話は出ていない。だが、年を重ねることの悲哀は、必ず私の身にも起きる。
 認知症検査の結果が悪く、医師の判断を仰ぐことになった時には、速やかに免許返納に踏み切ろう。
 3月末に、高齢者講習と実車を受けることで、しばらくは車に乗れる切符を手に入れることが出来るのだから、悔いなく元気に楽しく過ごしたい!

 

 

【岩崎邦子さんのプロフィール】 

昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。


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