寝付かれないまま朝になった。 憂鬱な気分で休日の早朝をまどろんでいると、キャーという叫びらしき声とどかんという物音がした。大通りに面した部屋なので物音には慣れっこになっている。どうせ誰かがふざけているのだろうと思い またボーっとした。すると今度は救急車のサイレンが。１００ｍほど先に救急病院があるので患者の搬送だろうと、寝ぼけた頭で想像した。部屋は車の音と人声とで一日中ごった返している。しばらくして今度はパトカーのサイレンで、どうやらすぐそばで停止したようだ。今度は様子が違う。急いで通りに出ると、緊急車以外に車がないので交通事故ではない。靴が散らばり 女性が警官の質問を受けていた。そして数人の救急隊員がかがみ込んで男に救命作業をしていた。自殺か。すでに野次馬もいて不安そうな面持ちであった。又かという気がした。そばの24時間ガソリンスタンド前のビルでは今まで5人も飛び降り自殺している。救急車が去った後は数人の警官が検分をしてたが7時ごろには引き上げてしまった。原因はストレスか借金か失業かと予想がつくが詳しいことはわからない。近所も早朝だったので知った人は少ないようだ。どうせすぐに忘れ去られて、統計にひとつ加算されるだけだろう。