美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

展覧会,美術,お寺,行事,遺産,観光スポット 美しい理由を背景,歴史,人間模様からブログします

京都・相国寺・承天閣美術館の絶品がフル公開中 ~唐物から若冲まで

2018年10月17日 | 美術館・展覧会

相国寺と金閣寺・銀閣寺などの塔頭が所蔵する名品を一堂に公開する展覧会「温故礼賛」が、京都の相国寺境内にある承天閣(じょうてんかく)美術館で行われています。

相国寺は室町幕府の厚い庇護を受けてきた寺で、水墨画に代表される禅宗文化や中国美術の名品を数多く所有しています。また関係の深かった伊藤若冲ら、江戸時代の画家の作品もたくさんあります。京都のお寺のミュージアムでは最もコレクションの幅が広く、京都を代表する私立美術館の一つでもあります。

京博で行われている「かたな」展ほどは正直目立たないこともあり、さほど混雑することなく一級の作品をじっくりと鑑賞できます。ぜひおすすめします。


烏丸通からの相国寺境内への入口

承天閣のコレクションは、2004年に閉館した大阪の萬野美術館から多数の寄贈を受けたことで、さらに幅を増しています。今回の展覧会のII期で出展される国宝の玳玻天目(たいひてんもく)茶碗がその筆頭です。円山応挙や池大雅といった江戸時代の画家の作品も多くが萬野美術館の旧蔵品です。

展覧会のサブタイトルに「相国寺文化圏」と名付けられていますが、とても上手なネーミングであることが、鑑賞後に理解できます。雪舟を始め多くの画僧を輩出し、室町時代の一番のサロンとして京都文化を相国寺はリードしていました。江戸時代に若冲の才能を見出し、あの傑作「動植綵絵」が相国寺に納められたことが、明治の廃仏毀釈の嵐から相国寺を救うことにもなります。


若冲の「竹虎図」が展覧会の看板に

【公式サイトの画像】 足利義満像

展覧会のスタートはやはりこの人物でしょう。相国寺を開いた室町三代将軍・足利義満像です。鹿苑寺に伝わるこの像は、教科書などで見た記憶のある方も多いと思います。たれ目ですが目線は鋭く、絶大な権力を誇った威厳が見事に表現されています。黄金色の法衣も実に見事です。ゴージャスさを好んだ義満の人柄がとても気品よく描かれています。

【公式サイトの画像】 無学祖元墨蹟「与長楽寺一翁偈語」

鎌倉時代に北条氏の招きで中国から来日し、鎌倉・円覚寺を開いた無学祖元(むがくそげん)の国宝の墨蹟、すなわち高僧の真筆の文書です。優雅さと気品を兼ね備えた書の一級品です。教えを請いに来た老僧との問答に感動したことを記しています。文字が崩さずに書かれており、中国の高僧らしい実直さ伝わってきます。

雪舟作品のモチーフとしては珍しい毘沙門天図は、とてもユニークな表現です。仏法を守るりりしい姿というよりも、福の神として邪気を踏みつける愛嬌のある姿で描かれています。雪舟がこのような表現もしていたのかと感心する名品です。

【公式サイトの画像】 鳴鶴図(右幅)

鳴鶴図(めいかくず)は明の画家・文正による重要文化財です。悠久の渓谷の上を優雅にはばたく鶴の羽が輝くように見える名作です。700年ほど前の作品ですが、保存状態と使用した顔料のいずれも超一級だったのでしょう。

【主催者:京都新聞サイトの画像】 伊藤若冲「竹虎図」、円山応挙「大瀑布図」

伊藤若冲の「竹虎図」は若冲らしい生き生きとした虎のボディの表現が魅力的です。水墨画でモノクロなことも、当時は誰も実物を見たことがなかった虎の神秘性を増しています。

円山応挙「大瀑布図」は3mを超す大作で、岩肌と水の流れを一切妥協することなく誠実に緻密に描いています。重要文化財に指定されたばかりの、応挙らしい名品です。

茶道具では、東山御物(ひがしやまごもつ)だった「唐物小丸壺茶入」をぜひ見てほしいと思います。足利義政ゆかりの慈照寺の伝来品です。腰のラインがとても上品で、さすがは東山御物と思える雰囲気を漂わせています。


美術館入口から見た相国寺

いかにも意思の強そうな後水尾天皇の肖像、若冲が緑の箒の後ろに黒い犬を描いたとても愛くるしい厖児戯帚図、池大雅が悠久の仙境を描いた白雲紅樹図などなど、他にも名品が目白押しです。若冲が鹿苑寺で描いた余白の使い方が絶妙な障壁画も、常設展示スペースで鑑賞することができます。

【公式サイトの画像】 鹿苑寺大書院 障壁画

すごい展覧会です。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



和樂が茶道を斬る


相国寺 承天閣美術館
温故礼讃 -百花繚乱・相国寺文化圏
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:相国寺承天閣美術館、京都新聞
会期:2018年10月13日(土)~2019年3月24日(日)
原則休館日:2018/12/25~2019/1/12
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※12/24までのI期展示、1/13以降のII期展示で一部展示作品が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「今出川」駅下車、3番出口から徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
京都駅→地下鉄烏丸線→今出川駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設に駐車場はありません。


________________________________

→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大津歴博「神仏のかたち」展 ... | トップ | 京都・相国寺で秋公開 12/25... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

美術館・展覧会」カテゴリの最新記事