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東福寺の”文化財の質”を物語る光明宝殿_京の冬の旅 公開 3/1から

2019年02月18日 | お寺・神社・特別公開

普段は非公開の京都・東福寺の宝物館、光明宝殿(こうみょうほうでん)がまもなく特別公開されます。2019年の「京の冬の旅」による特別公開で唯一、3月だけに公開される施設です。

  • 京都でも有数の質と量を誇る東福寺の文化財にじっくり向き合える
  • 伝運慶作の金剛力士像、万寿寺の阿弥陀如来など、禅寺としては美仏が多い
  • 渡辺了慶の障壁画や応挙らの江戸絵画の名品もずらり


東福寺の持つ文化財の質と量をふまえれば、展示品を入れ替えて「常時公開できるとのでは?」思えるほど充実しています。



東福寺は、鎌倉時代初めに絶大な権勢を誇った九条道家(くじょうみちいえ)によって創建され、以来九条家との密接な関係を保ってきました。京都の禅寺でも最大規模を誇る伽藍は、近衛家と並んで江戸時代に五摂家最大級の石高を得ていた九条家の威光、そのものでもあります。

妙心寺と並んで塔頭も非常に多く、現在も25か寺あります。普門寺や万寿寺といった京都の禅寺の名門も影響下に治め、光明宝殿に数多くの文化財が集まる背景となっています。

普門寺(ふもんじ)は、東福寺に開山として迎えられた聖一国師円爾(しょういちこくしえんに)が、東福寺の伽藍完成に先立って住するために開かれました。東福寺の原点のような寺ですが、おそらく江戸時代に廃寺となります。現在は東福寺の開山堂があるエリアにある常楽庵(じょうらくあん)の庫裏や客殿に、名称だけが伝えられています。


万寿寺

万寿寺(まんじゅじ)は禅寺として創建されたのではなく、平安時代後期に絶大な権勢を誇った白河上皇が、皇女の菩提を弔うために建てた御堂が起源です。鎌倉時代に禅寺となり、当時あった境内地は現在の五条通の一筋北・万寿寺通に名を残しています。

室町時代には京都五山の第五位にまで昇格します。戦国時代には衰退し、現在地へと移転します。現在地には東福寺末寺の三聖寺(さんしょうじ)もありましたが、明治になって万寿寺に吸収合併されます。万寿寺は明治に東福寺の塔頭となって現在に至ります。


光明宝殿の入口

光明宝殿にある阿弥陀如来坐像は、平安時代後期の定朝様式の巨像です。万寿寺創建時の造立と考えられており、平等院の阿弥陀如来のようなふくよかな表情が、平安貴族の信仰の証であることを物語っています。

金剛力士像は三聖寺にありました。運慶作と伝えられており、東大寺南大門を思わせるダイナミックでリアルな造形が目を引きます。

普門寺にあったと伝わる渡辺了慶(わたなべりょうけい)の障壁画「柳松遊禽図」「桜梅遊禽図」は江戸時代初期の名品です。安土桃山時代から江戸初期に上流階級をもてなした障壁画の典型例です。普門寺は、上流階級の大切な交際の場であるサロンだったのです。渡辺了慶は狩野永徳の嫡男・光信の高弟で、狩野探幽とほぼ同世代の絵師です。西本願寺の国宝・白書院の障壁画の作者として知られています。

応挙や幕末の塩川文麟といった江戸絵画も見応えがあります。東福寺が上流階級との交流を保ってきた証でもあります。



現在の東福寺・本堂にある本尊釈迦三尊像は、1881(明治14)年に本堂と本尊が焼失した際に万寿寺から移されたものです。この釈迦三尊のルーツは三聖寺です。京都の1,200年の雄大な歴史を物語るようなオーナーの変遷を、東福寺で確かめることができます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



古寺巡礼、古刹の魅力を知る教科書

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第53回 京の冬の旅
非公開文化財特別公開 ~秘められた京の美をたずねて~
東福寺 光明法殿
【主催者による特別公開公式サイト】

主催:京都市観光協会
会場:東福寺 光明法殿
会期:2019年3月1日(金)~3月18日(月)
原則休館日:会期中無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00

※京の冬の旅の他の公開施設とは、公開期間が異なります。
※この特別公開は定期的に行われるものではありません。
※この堂宇は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。

東福寺
【公式サイト】 www.tofukuji.jp



◆おすすめ交通機関◆

JR奈良線・京阪電車「東福寺」駅下車、徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
京都駅→JR奈良線→東福寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には無料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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