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日本トップクラスの仏教美術の宝庫 當麻寺_奈良の阿弥陀信仰の聖地

2018年12月19日 | お寺・神社・特別公開

奈良盆地の南西端の二上山(にじょうざん)の麓、堺と飛鳥を結んだ日本最古の街道・竹ノ内街道のそばに、日本有数の古刹である當麻寺(たいまでら)があります。當麻曼荼羅(たいままんだら)とその作者とされる中将姫(ちゅうじょうひめ)伝説がとても有名です。

  • 西方極楽浄土を描いた當麻曼荼羅と中将姫に祈る、中世以来の阿弥陀信仰の一大拠点
  • ラクダのこぶのような背後の二上山に夕日が沈む光景はまさに西方極楽浄土の入口のよう
  • 飛鳥時代から蓄積されてきた建物・仏像・工芸品のほとんどが国宝か重文
  • 写経・写仏や茶道、瞑想などお寺体験プログラムが充実、とてもフレンドリーな雰囲気


死後に極楽浄土へ行けることを願った、中世以来の空間がそのままのこされています。法隆寺や東大寺など奈良の著名寺院に比べてもまったく引けを取らない仏教美術空間を存分に体験できます。


境内から東側・奈良盆地をのぞむ(足場に覆われているのが西塔)

當麻寺は、612(推古天皇20)年に聖徳太子の弟・麻呂古(まろこ)親王が、現在地ではなく二上山の西側にある大阪の河内国に建立した寺が前身になったという縁起がのこされています。これを事実とするなら、聖徳太子が607(推古天皇15)年に法隆寺を建立したのとほぼ同じ頃です。

現在地には麻呂古親王の孫の当麻国見(たいまのくにみ)が、修験道の開祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)から土地の寄進を受け、680(天武天皇10)年に寺を開いたとされています。二上山の東側にないと西方極楽浄土に祈れないため移転した、というものです。

金堂・講堂は創建当初、国宝の本堂・曼荼羅堂は天平時代、国宝の東西両塔は奈良時代末期~平安時代初期の建立です。その後、平安末期の平重衡による南都焼討で金堂・講堂は焼失し、鎌倉時代に再建されています。


東塔と奈良盆地の遠景

當麻寺の伽藍の堂宇は、南向きに揃えられていません。南と西に山が迫る敷地に建立することを何らかの理由で優先し、南向きに揃える/左右均等にする、といった従来のルールを地形の制約であきらめた希少な例です。

最寄り駅からはとてもなだらかな坂をあがっていきます。伽藍に着いてから振り返ると、東に広がる雄大な奈良盆地をのぞむことができます。伽藍が結構な高台にあることがわかります。2021年まで西塔が修理中で、足場に覆われているため外観を見ることはできません。しかし東塔だけでも奈良盆地を見下ろすように立つ雄姿は感動的でもあります。


重文・金堂

境内入口の仁王門は東向きで、金堂・講堂は向かって左側の南向き、本堂は向かって正面の東向きに入口が造られています。金堂は當麻寺の目玉の美仏の宝庫です。

【寺公式サイトの画像】 金堂 弥勒仏、四天王

国宝の本尊・弥勒仏は創建当初の造立で、日本最古の粘土で作られた塑造(そぞう)です。お顔は若々しい丸顔で、飛鳥時代よりより写実性が一歩進んだ白鳳仏の特徴が現れています。

法隆寺金堂に次いで日本で二番目に古い四天王が、本尊を護っています。いずれも後世の補修部分が多いため国宝ではなく重要文化財です。後世の四天王のように威嚇的なポーズではなく、静かに見つめるような表情で造られています。お顔にも天平仏と比べエキゾチックな趣が色濃くのこります。本尊とともに1,300年前の中国文化の影響を今に伝える傑作です。

【寺公式サイトの画像】 講堂 阿弥陀如来

講堂の仏像は少し時代が下る平安時代が多くなります。本尊の阿弥陀如来坐像は、奈良では珍しい定朝様式です。白鳳時代よりはるかに日本的な、優雅で柔和な表情に注目です。

【寺公式サイトの画像】 當麻曼荼羅

本堂の曼荼羅堂では、5m四方の巨大な厨子にかけられた當麻曼荼羅が本尊です。室町時代と江戸時代に複製された2点のいずれかが常時かけられています。

根本曼荼羅と呼ばれる原本は、8cに中国で造られ、輸入されたものというのが定説です。高度な綴織技術が当時の日本にはなかったと考えられているためです。創建当初からずっと厨子に架けられていたため、鎌倉時代には相当損傷していたようです。鎌倉時代以降、根本曼荼羅から3度複製品が造られ、さらに孫世代の複製品も全国の寺社に少なからず存在します。當麻曼荼羅信仰の人気がうかがえます。

根本曼荼羅はほとんど公開できない状態ですが、昨年2018年に奈良国立博物館「糸のみほとけ」展で修復を終えたものが公開されました。私もお会いしましたがほぼ全面が黒くくすんでおり、画像はほとんど判別できません。しかし複製に比べて圧倒的なオーラを感じたことは事実です。蝋燭のすすの影響が大きいと思われますが、1300年前の巨大な織物が現存しているだけでも驚異的です。

中将姫が一夜で根本曼荼羅を織り上げたという伝説は、中世の人には圧倒的に支持されていたようです。曼荼羅堂の空間では、そんないにしえの祈りの空間の趣を濃厚に感じることができます。

信仰を求める人には、當麻寺は現代もとてもフレンドリーです。中世から続く、當麻寺の人気の秘訣でしょう。とても種類豊富なお寺体験プログラムが用意されています。

【寺公式サイトの案内】 写仏やお抹茶などのお寺体験


練供養会式の様子

毎年春には當麻寺の名物行事・練供養会式(ねりくようえしき)が行われます。中将姫が二十五菩薩に導かれ、極楽往生を遂げる様子を再現する祭りです。金色に包まれた二十五菩薩の動きがとても幻想的です。絶好のインスタ映えをゲットする機会になります。

1,000年を超える歴史があり、全国で行われる練供養の中でも最も著名です。毎年5/14から行われてきましたが、今年2019年からは1か月早まり4/14開催になります。こちらもぜひお楽しみに。

【寺公式サイトの行事案内】 中将姫ご縁日(練供養会式)

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



當麻曼荼羅を学びながら写仏もできる

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當麻寺
【公式サイト】 http://www.taimadera.org

伽藍三堂(本堂・金堂・講堂)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~17:00

※公開されていない仏像や建物・美術品があります。



◆おすすめ交通機関◆

近鉄・南大阪線「当麻寺」駅下車、西口から徒歩15分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間30分
大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ・御堂筋線→天王寺駅(大阪阿部野橋駅)→近鉄・南大阪線→当麻寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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