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大神神社 ~神話の世界を垣間見る稀有な空間

2017年11月26日 | お寺・神社・特別公開

大神神社の拝殿、日本の国の原点

 

 

大神神社は「おおかみ」ではなく「おおみわ」と読む。難読固有名詞の典型例だが、神社の由緒からそう読まれる背景をうかがうことができる。

 

大神神社は、伊勢神宮や出雲大社よりも先に成立した日本最古の神社と考えられている。鎮座する三輪山(みわやま)の麓は、日本の国の原点であるヤマト王権の発祥の地であり、日本書紀や古事記を通じて伝えられる神話の世界の原点でもある。国造りの神、国家の守護神であり、神様の中の大神様としてあがめられてきた。

 

大神神社には、お祀りする神様(ご祭神)を具体的なモノで表現する「ご神体」がない。そのためご神体を安置する「本殿」もない。大神神社に参拝した際に手を合わせる建物は「拝殿」だ。通常の神社のご神体・本殿に相当するのは背後にそびえる三輪山で、大神神社はご神体の概念がなかった日本の原初の宗教の姿を今に伝えている。

 

拝殿の奥には珍しい「三つ鳥居」がある。国内では他に秩父の三峯神社などにしかない。中心の鳥居の左右に少し高さが低い鳥居を連結して一列に並べたもので、柱は4本で構成される。京都の蚕ノ社にある「三柱鳥居」、上から見て正三角形に組み合わせた柱が3本で構成される鳥居と同じく、神社の神秘性をとても増している。

 

【公式サイトの画像】 「三つ鳥居」

 

【Wikipediaの画像】 蚕ノ社(木嶋神社)「三柱鳥居」

 

 

参道や境内は、三輪山の神木である杉などによる鬱蒼とした森に囲まれている。その中に点在する摂社・末社の中には、明治以前の濃厚な神仏習合の名残を伝えるものも多い。大直禰子(おおたたねこ)神社は、神宮寺であった大御輪寺(だいごりんじ or おおみわでら)の本堂であったもので、美仏として著名な聖林寺・十一面観音が明治の廃仏毀釈の直前まで安置されていた。

 

神社の南方には、もう一つの神宮寺であった平等寺が1977(昭和52)年に再興されており、江戸時代までの仏像のいくつかを今に伝えている。

 

 

 

ご神体の三輪山の麓で緑に包まれる境内

 

 

古くからの造り酒屋では、「杉玉」と呼ばれる直径60cmほどの杉の穂先を集めてボールの形にしたオブジェクトを軒先に掲げるところが多い。この「杉玉」も大神神社が発祥で、秋に新酒ができたことを知らせるものだ。杉玉は新酒ができた時、すなわちワインで言うボージョレ・ヌーボーの時は青々としているが、時間がたつにつれ茶色に代わっていく。色の変わり具合で酒の熟成具合を客に知らせているのだ。とても興味深い。

 

【Wikipediaの画像】 造り酒屋の玄関「杉玉」

 

 

 

大神神社は国造りの神であり、酒造りのような基本的な人間の営みの守護神にもなっている。日本で最も古いと同時に、最も奥が深い神社のように思える。

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

大神神社が編集に協力した写真集、古代ロマンを感じさせる画像はお見事

 

 

大神神社

http://oomiwa.or.jp/

原則休館日:なし

※宝物館は毎月1日と土日祝のみ開館

 

 

 

 


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