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本法寺 巴の庭・京都 ~光悦デザインは今見ても素晴らしい

2018年03月08日 | お寺・神社・特別公開


カッコいい表札、庭に進む回廊に掲げられている

京都・本法寺(ほんぽうじ)は、長谷川等伯と並ぶもう一人のスーパースターとも、とても深いゆかりがあります。本阿弥光悦です。豊臣から徳川に権力が移る激動の時代を生き抜いた文化人です。刀剣の鑑定を本業としながら、陶芸・漆芸・茶の湯・歌道などあらゆる当時の最先端文化をリードしたプロデューサーでもあります。

光悦は洛北の鷹峰の光悦寺がよく知られていますが、本法寺は本阿弥家の菩提寺でした。「巴の庭(ともえのにわ)」は光悦による作庭で、彼らしいカッコいいデザインを楽しむことができます。宝物館でも光悦のカッコいい書や茶碗を観ることができます。

本法寺は室町時代半ばの創建ですが、幾度も寺域の移転を余儀なくされています。法華宗(日蓮宗)が一網打尽に京都から追われた1536(天文5)年の「天文の法難」の際も、堺に逃れていました。1542(天文11)年になって後奈良天皇により法華宗が京都に戻ることを許されます。

本法寺は一条堀川に再建されましたが、1587(天正15)年に秀吉の命で現在地に再び移転しています。この現在地への移転の際に本阿弥光二・光悦親子が資金援助し、巴の庭を作庭しました。


回廊と書院南側の庭

庭には曲がりくねった回廊を進みますが、この回廊が実に風情があります。屋根の庇が深く、周りは木々の緑しか見えません。まるで探検しているようで、どんな庭が目の前に現れるのかとワクワクさせます。巴の庭は書院の東と南側にL字型に庭が配置されており、最初に南の庭を目にします。枯山水庭園ですが、現在は苔に覆われています。曲がり角となる東南隅にだけシンプルに石組が配置されています。

通常庭園は南側がメインですが、こちらは東側がメインのように見えます。東側の庭面のデザインが実に素晴らしいからです。


十角形の「蓮」池

蓮池の手前の円形の石が「日」

十角形の「蓮池」は、初夏には大きな蓮の葉に隠れて形がよくわからなくなりますが、葉のない秋・冬には明確に形が見えます。「日」を表す円形の石と蓮池で「日蓮」と表現したと伝わっています。

しかしこの十角形が、尾形乾山の器の幾何学的デザインのように、現代人が見てもカッコいいのです。ここでコーヒーを飲んだら、さぞかし美味いだろうと感じさせます。お茶ではなくコーヒーです。それくらいデザインが斬新です。

“カッコいい”と感じる庭はほとんどありませんが、東福寺・本坊・北庭も苔を幾何学的な市松模様で表現した数少ない例です。しかし時代は新しく、昭和の名作庭家・重森三玲による1939年の作品です。

【公式サイトの画像】 東福寺・本坊・北庭

枯山水にしろ、池泉式にしろ、日本庭園は石・植物・水で宗教的な世界観や自然の奥ゆかしさを表現します。西洋の庭園のように幾何学的な表現は通常しません。そのため通常“美しい”とは感じますが、“カッコいい”とは感じません。400年前の京都にはこんな斬新な表現ができるデザイナーがいたのです。


十(つなし)の庭

本法寺にはもう一つ「十の庭」があります。こちらも幾何学的紋様が表現されていますが、ラインが曲線で白砂が使われており、とても優美な印象です。日蓮宗寺院の檀家は富裕な町衆が多く、ファッション産業の中心地・西陣も寺の近くです。古式にとらわれず、ファッションで培った斬新なデザインの庭を寄進する檀家がいたのでしょう。

寺宝を入れ替えながら公開している「宝物館」もぜひご覧ください。「寛永の三筆」と言われるほど、とても達筆だった光悦の書や、陶芸・漆芸作品が展示されています。光悦がいかにセンスのあった人かを改めて確認することができます。

【公式サイト】 宝物館の最新の展示内容

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



一見わかりにくいマルチアーティストの業績がこの一冊に


本法寺
http://eishouzan.honpouji.nichiren-shu.jp/index.htm

原則休館日:なし
※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。
※仏像や建物は、公開期間が限られている場合があります。


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