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滋賀・坂本・旧竹林院庭園 ~広さを活かした優美な庭園

2018年07月15日 | 城・屋敷・歴史遺産

竹林院(ちくりんいん)は坂本にあった延暦寺の里坊(さとぼう)の一つで、明治の廃仏毀釈で土地が資産家の手に渡り、現在は大津市が所有しています。里坊の中で最大の面積を誇る雄大な庭園と主屋の建物は明治に整備されたもので、庭園は国の名勝に指定されています。

この庭園には、整備した明治の資産家の愛情が注がれているように感じます。滋賀院門跡のような王朝的な雅さではないものの、明治の富裕層の数寄を楽しむセンスをところどころに感じさせます。



現在施設内にはお寺の施設は存在しないため、名称に“旧”と“庭園”を付けています。お寺ではなく明治の資産家の御屋敷庭園という理解が適切です。

主屋の建物の耐震工事のため2014年8月まで休館していましたが、工事完了後に主屋の2Fから庭を楽しめるようになり、ここの魅力がぐんと増しました。



受付に至る細道は、茶室へ向かう路地のように、訪れる者の期待感を高めるようなデザインがなされています。坂本は町全体が比叡山の山麓で緩やかな傾斜地となっています。難儀するような坂道では全くなく、少しずつ上って目的地に近づいていることが実感できるような、心地よい傾斜です。



庭園もこの緩やかな傾斜を上手に生かして作られています。石垣はもちろん穴太積みで、ほどよいキビキビ感を醸し出しています。比叡山頂の西塔付近から流れ出る大宮川の清流を取り込み、川が曲がりくねる曲水(きょくすい)の様子を庭に表現しています。

水の流れがあって面積にゆとりがあるため、春秋の平安貴族の歌遊びを再現する「曲水の宴」が行われる京都・城南宮の神苑・平安の庭のような優美な趣があります。

この庭は散策できます。庭の中に少人数の人がいるとかえって、庭から放たれる四季折々の自然の色に映えて絵になります。庭から主屋を眺めることもぜひお勧めします。主屋のナチュラルな木の色使いが庭の緑に絶妙に溶け込んでいる様子がよくわかります。


主屋の2F

庭は縁側のような低い位置から見るのもよいですが、高いところから見ると表情が違って見えます。部屋は数寄屋風のデザインで、明治大正期の上流階級が求めた洗練された空間にしつらえられています。主屋の2Fからも庭を鑑賞しましょう。

庭に石灯篭が目立つような“演出のし過ぎ”がなく、シンプルに自然の魅力を伝えていることがよくわかります。春から夏には苔がみずみずしく輝いています。芝生の庭はとても綺麗です。とても手入れが行き届いていることに感謝したくなります。

広くてゆとりがあるのにとてもシンプルなことがこの庭園の最大の魅力です。これほどの庭は、京都でもなかなかありません。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



熟練の庭師が後世に技術をのこすべく執筆、庭好きの学習にも最適


旧竹林院
http://kyuchikuriin.web.fc2.com/index.html

原則休館日:月曜日、祝日の翌日、12/26-31
開館(拝観)受付時間:9:00~16:30

おすすめ交通機関:
京阪石山坂本線「坂本比叡山口」駅下車、徒歩 5分
JR湖西線「比叡山坂本」駅下車、徒歩20分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40分
京都駅→湖西線→比叡山坂本駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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