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京の冬の旅「東福寺・即宗院」 ~平安時代をしのばせる隠れ家

2018年01月31日 | お寺・神社・特別公開


平安時代を感じさせるシンプルな庭は苔が美しい

東福寺の境内を流れる渓谷に架かる通天橋(つうてんきょう)は、京都で最も混雑する紅葉の名所としてよく知られています。東福寺の境内は巨大で、渓谷の上流にも堂宇が広がっています。

即宗院(そくしゅういん)は最も奥にある塔頭で、通天橋の上流に架かる偃月橋(えんげつきょう)を渡らないと行くことができません。即宗院も清水寺・成就院と同じく、幕末に西郷隆盛と月照が密談を重ねた場所でした。

今年2018年は明治150年、京の冬の旅も幕末にゆかりのある非公開寺院が多く公開されています。即宗院が公開される貴重な機会ですので、ぜひお訪ねください。

即宗院は、南北朝時代に薩摩の守護大名だった島津氏久の菩提寺として創建されました。江戸時代は薩摩藩の京都の菩提所として藩から厚遇を受け、幕末には藩の活動の重要な拠点となりました。幕府の目を盗んで活動するにはまさに絶好の場所です。現在でも巨大な東福寺の境内の最も奥にあり、そこに寺があると言われない限り誰も気づきません。

偃月橋は、昭和に鉄筋コンクリート製で再建された通天橋とは異なり、江戸時代初期に建造された木造の橋です。重文指定されています。橋を渡った先には普段非公開の即宗院と龍吟庵しかないことから、通天橋と比べてかなり人は少なくなります。偃月橋からも紅葉や新緑の青もみじの眺めは絶景です。

即宗院は、平安時代末期の有力な公家・九条兼実の山荘の跡地に建てられています。庭園は「月輪殿」と呼ばれますが、兼実の山荘名「月輪殿」にちなんで名づけられてものです。

江戸時代でも名園とされており、1799(寛政11)年に刊行された京都の庭園ガイドブック「都林泉名勝図会」に紹介されています。自然と調和するようシンプルに石や苔が配された庭で、平安時代のような佇まいを感じます。九条兼実の時代を後世に偲んだのでしょう。


「千両」の赤い実が苔に映える

山深いところにあるため、自然の美しさをとても感じさせます。禅宗庭園のような謎めいたオブジェが一切なく、純粋に木々や花の美しさが目に飛び込んできます。敷き詰められた苔は、シンプルな庭を引き締めています。冬には「赤千両」が凛とした空気に華を添えます。


山の中の隠れ家に入っていくようでワクワクする

幕末にこの庭にあった茶室が西郷隆盛や月照による密談の舞台となりました。鳥羽・伏見の戦いの際には薩摩軍の基地にもなりました。島津家ゆかりの調度品も多く残されており、京の冬の旅の期間中、展示されています。幕末の面影とともに、東福寺が創建される前からあった平安時代の貴族の邸宅の佇まいを今に伝える寺です。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんあります。



宗派の個性をコンパクトにまとめた一冊


第52回 京の冬の旅 非公開文化財特別公開 「東福寺 即宗院」
http://kyokanko.or.jp/huyu2017/huyutabi17_01.html#05

主催:京都市観光協会
会期:2018年1月6日(土)~3月18日(日)
原則休館日:1/14(日)11:00~11:45頃

即宗院について(公式サイト)
http://www.sokusyuin-sizensou.com/temple01.html

※この寺は常時公開されていません。次の公開時期は未定です。



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