夏に京都の寺社の特別公開を行う「京の夏の旅」で、下鴨神社の本殿と大炊殿(おおいどの)が公開されています。国宝の本殿は、通常は拝殿越しにわずかしか見えませんが、特別公開時には間近で鑑賞することができます。
あわせて神社の台所だった大炊殿と、資料館である秀穂舎(しゅうすいしゃ)も拝観できます。下鴨神社は、奈良時代以前からあったと考えられる京都で最も古い社寺の一つです。神々が住む聖域には、王朝文化がブレンドされた特別な空気が立ち込めています。
下鴨神社は、上賀茂神社とともに当地の古代豪族・賀茂氏の氏神を祀る神社です。両社の祭神は親子であり、かなり古い時代に上社・下社として分かれたと考えられます。平安時代以降は朝廷からあつい崇敬を受け、両社の祭りである葵祭は貴族の祭りとして最も重要なものでした。
こうした朝廷との関係もあって、境内には現在も王朝文化の雅な趣が随所で感じられます。拝殿や本殿の屋根は檜皮葺きで、寝殿造りのような落ち着いた上質感があります。神というよりも御門(みかど)が本殿の中にいるような趣です。
国宝の本殿は東西に二棟が並んでおり、下社の二人の祭神を祀っています。片方の屋根が庇(ひさし)のように長く伸びた流造(ながれづくり)の代表的な建築です。伸び方が実に優雅で、上質感のあるカーブを描いています。特別公開ではこのカーブを間近で見ることができます。
大炊殿
本殿の西隣に大炊殿があります。神様へのお供え物を調理していた台所です。お寺での台所の公開は比較的ありますが、神社での公開は他に聞いたことがありません。
お寺の台所はとにかく大人数の調理が必要だった場合が多く、大箱レストランの厨房のように大きな土間や板の間の中に機能的に器具や道具が配置されています。一方この大炊殿では、お供え専用の調理器具や食器に盛り付けたお供えのレプリカも展示されています。お供えというよりフルコースで、皿の数の多さが目を引きます。お供えだけを見ても最高格の神社であることを実感できます。
唐車
大炊殿の横では唐車(からぐるま)が展示されています。上皇や皇后が乗る最高クラスの牛車で、絵巻に描かれたまさにそのものです。黒漆塗りの外観に、前後の入口である赤い御簾(みす)がとても上品にマッチしています。
秀穂舎
京の夏の旅のチケットで、大炊殿から糺の森を通って10分ほど南に歩いたところにある、下鴨神社の博物館と言える秀穂舎も拝観できます。神社の社家(神社の神職を世襲した家)だった住宅を改装したものです。古い時代から下鴨神社がきちんと王朝文化を伝えてきたことがわかる展示物には見応えがあります。
王朝文化を味わうなら、京都御所や桂離宮だけではありません。下鴨神社のような意外なスポットは京都にはたくさんあります。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
第43回「京の夏の旅」 下鴨神社 本殿・大炊殿
https://www.kyokanko.or.jp/natsu2018/natsutabi18_01.html#06
主催:京都市観光協会
会期:2018年7月7日(土)~9月30日(日)
原則休館日:なし
開館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※8/1、9/1の10~11時は本殿拝観不可
下鴨神社
https://www.shimogamo-jinja.or.jp/
開門時間:6:30~17:00
おすすめ交通機関:
京阪電車・叡山電鉄「出町柳」駅下車徒歩12分、市バス「出町柳駅前」バス停下車徒歩15分
市バス「下鴨神社前」バス停下車徒歩2分、
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→市バス205系統→下鴨神社前バス停
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には有料の駐車場があります。
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