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嵐山 大河内山荘 庭園にワクワク ~回遊の楽しさと絶景は随一

2018年11月09日 | 城・屋敷・歴史遺産

京都・嵐山の大河内山荘(おおこうちさんそう)は、往年の映画俳優・大河内傳次郎(おおこうちでんじろう)の別荘だった庭園を公開している施設です。前回ご紹介した北隣の常寂光寺がある小倉山が大堰川に向かってくだる斜面に敷地が設けられています。東の比叡山と西の嵐山・保津川渓谷、逆の方向を敷地内で見渡せることが、この庭園でしか味わえない大きな魅力です。

木々に囲まれてあえて細くしたような園路は、次にどんな絶景が現れるのかとワクワクさせるような楽しみがあります。風景にしろ、木々の美しさにしろ、ワクワク感を裏切りません。木々や園路が空間と風景を楽しめるよう見事に配置されており、手入れも見事に行き届いています。

とても気持ちの良い空間です。常寂光寺は腰を落ち着けて空間を楽しむことに、大河内山荘は歩いて空間を楽しむことに、その特徴があるように思えます。京都の”はしっこ”で、ぜひ両者の魅力を見比べてみてください。秋の美しさはもちろんですが、四季いつでもOKです。


中門

大河内傳次郎は主に戦前に活躍した時代劇映画の大スターで、当たり役「丹下左膳」がよく知られています。とはいえ1962(昭和37)年に故人になっていますので、現在概ね80歳以上の方でないと活躍の記憶はないでしょう。

しかし大河内と同じ頃に活躍した「時代劇六大スタア」の中には、現代の大スターの系譜につながる人物もいます。市川右太衛門の次男が北大路欣也、阪東妻三郎の次男が田村正和です。両氏とも70歳を超えており、最近はテレビで目にすることも少なくなっています。時の流れを感じます。

テレビもなく、ラジオも普及していなかった時代に、動画で楽しめる映画は娯楽の王者でした。大河内がギャラで稼いだ巨万の富をつぎ込み、1931(昭和6)年から30年に渡って造成を続けたのが現在の大河内山荘庭園です。大河内は仏教にも傾倒しており、現存する持仏堂でよく経を唱えていました。


視界が開けない園路

この庭園は園路の周囲の木々の高さをあえて高くし、ビュースポットに到達するまで視界が開けないように設計されていることが目立ちます。修学院離宮の上御茶屋にもみられるテクニックです。なので歩いたほうが楽しいのです。

詫びを感じさせる弓型の屋根のラインが可愛い中門を抜けて、母屋の大乗閣(だいじょうかく)に至ると、視界が開け大きな空間と空が楽しめます。その空間の中心には、寝殿造りにも数寄屋造りにも見える大乗閣の姿が目に飛び込んできます。これも大乗閣の不思議な魅力を強調する演出なのでしょう。


正面が比叡山

さらに上に進むと最も高い位置にある茶室・月下亭(げっかてい)に至ります。このあたりからは東側の嵯峨野の町並と比叡山の雄大な姿が絶景です。比叡山の左下に仁和寺の五重塔も見えます。京都にいることをまさに実感できます。


左の山が嵐山、右下に保津川渓谷

点在する茶室を通り順路に沿って迷路のような園路を進むと、西側の展望台に出ます。こちらは幽玄な嵐山の山河が目に飛び込んできます。近距離で山が折り重なるように見えるところが、遠距離で借景になっている東側の比叡山とは対照的です。この絶景の変化の見せ方もとても上手です。

大河内の華やかな時代の写真が展示された資料館もあります。大河内を御存じの方は往年の思い出を確かめる、御存じない方は映画が娯楽の中心だった時代の文化や世相を確かめる、いずれの楽しみ方も可能です。



最後には無料の抹茶もいただけます。お茶の苦みと甘みのブレンドが、少し歩き疲れたボディに心地よい刺激を与えてくれます。

京都の”はしっこ”は、とても奥が深い魅力がたくさん詰まっています。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



嵐山は歩いてこそ、美しさが堪能できます

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大河内山荘
【京都市観光協会サイト】

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~17:00



◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車、南口から徒歩15分
京福電鉄・嵐山本線(嵐電、らんでん)「嵐山」駅下車、徒歩15分
阪急電鉄・嵐山線「嵐山」駅下車、徒歩25分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→JR嵯峨野線→嵯峨嵐山

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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