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旧大乗院庭園 ~奈良にしかない雄大さが堪能できる

2017年12月09日 | 城・屋敷・歴史遺産

朱い反り橋が池に映える姿はみやび

 

 

大乗院(だいじょういん)とは、奈良の興福寺の有力な塔頭の一つで、明治の廃仏毀釈で廃寺となった寺である。興福寺の南方の庭園跡地が平成になって復元整備され、一般公開されるようになった。室町時代に銀閣寺庭園を造った善阿弥の手による池泉回遊式の庭園は、江戸時代に公家たちに愛され「南都随一の名園」と称えられてきた。平泉の毛越寺(もうつうじ)庭園のように、スケールが大きく雄大さを感じさせる。京都にもなかなかない趣を今に伝えている。

 

興福寺は永らく大和国の実質的な支配者として君臨してきたが、江戸時代になってもその実力を徳川幕府も軽んじることはできなかった。興福寺は幕府から大名並みの2万石の禄を受けており、全国の仏教寺院で最多、神社を含めてもトップの伊勢神宮3万石に次いで2番目だった。

 

大乗院は一乗院とともに交互に興福寺の別当(=最高指導者)を出す最高格式の塔頭で、都の公家たちが南都に先祖供養に訪れた際に、優雅な時間を過ごしたことは想像に難くない。

 

庭園は保存状態の良かった江戸時代の遺構を忠実に再現している。まず池がとても大きいのが特徴だ。そのため花の季節には湖面に色が映える姿が実に美しい。またこの庭には石が少ない。狭い敷地に石で水の流れや山河の様子を表現するのではなく、大きい敷地で池や木々を「ゆったり配置して自然の美しさを表現しようとしたのだろうか。確かにこれだけの大きさであれば、かえってパーツを少なくして雄大に見せた方が、深みが出るように見えてくる。

 

周囲を取り巻く木々も高さが気にならない。庭が大きく木々との距離がある、奈良は高層建築がほとんどなく木々の背を高くする必要がない、といった理由が挙げられる。この木々の背の高さも絶妙で、実に包容力があるように庭を見せてくれる。木々の上には大きな空しかなく、このゆったり観は京都の庭にはない。

 

 

 

 

庭の池はスケールが大きい

 

池の真ん中に静かにたたずむ朱い反り橋は間もなく架け替えられ、中島に渡ることができるようになると言う。池の真ん中からどのような景観を見せてくれるのか、今から楽しみだ。

 

隣接する奈良ホテルも、もとは大乗院の敷地だった。園南側にある「名勝大乗院庭園文化館」とともに、不定期だが大乗院や奈良に因んだ美術作品や歴史資料の展示を行っている。奈良での皇族の宿泊地となるクラシックホテルであり、和洋折衷デザインの本館はとても趣がある。カフェや食事の際にそっと内部空間を体験されることをおすすめする。

 

ここにしかない見事な庭園である。

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

興福寺の住職と国宝館の館長が興福寺の魅力をどっぷり解説 

 

名勝旧大乗院庭園

http://www.narahotel.co.jp/daijyo_in_toha.html(奈良ホテル)

https://narashikanko.or.jp/spot/park/kyu-daijointeien/(奈良市観光協会)

原則休館日:月曜日

 

 

 


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