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都心で植物園と大名庭園を一緒に楽しめる ~東京 小石川植物園

2018年11月19日 | 城・屋敷・歴史遺産

小石川植物園は、東京・文京区の「文教地区」としてのイメージの原点のような場所です。江戸幕府による薬草園が起源で、同じく文教地区イメージの原点となる湯島聖堂とほぼ同時期に創設されました。明治以降は東京大学の付属植物園となりますが、日本庭園などに江戸時代の面影を残しています。

四季を通じて多様な植物を楽しめるのはもちろん、高低差のある園内からは東京の街並みを見下ろすことができます。大名庭園らしい雄大な日本庭園では、東京では珍しく台地の斜面を借景として楽しめます。日本庭園の池に映る、重要文化財・旧東京医学校本館の赤レンガは明治の香りをふんだんに伝えています。

大名庭園が多く残る文京区の中でも、とても多様な表情を見せることが特徴です。幼稚園の遠足だけではありません。大人の遠足としても充分に楽しめます。


正門

文京区は、東京大学が加賀藩邸だったことがよく知られているように、大名屋敷が多いエリアでした。大名屋敷は千代田区や港区にも多くありましたが、大半は官庁や大使館、ホテルに姿を変えています。江戸時代の面影を残すところは多くありません。一方文京区は小石川後楽園や六義園がほぼ江戸時代の姿でのこされています。政治の中心とならなかったことが結果的に、稀有な文化遺産を今に伝えています。

小石川植物園も1684(貞享元)年に薬草園になるまでは、5代将軍・綱吉の将軍就任前、舘林藩主時代の屋敷でした。日本庭園は綱吉の屋敷時代の名残があると考えられています。薬草園内には1722(享保7)年、8代将軍・吉宗が大岡忠助に命じ、診療所である小石川養生所を設けています。東京大学がなかった江戸時代から、文京区は江戸随一の文教地区だったのです。

東京医学校は東大医学部の前身で、本館は1876(明治9)年に加賀藩邸の一角に建てられました。現在の東大本郷キャンパスの始まりです。関東大震災でも大きな被害のなかった本館は、東大最古の建築をのこすために、1969(昭和44)年に現在地に移築されます。小石川植物園の風景の魅力をより高めるとともに、東京大学総合研究博物館小石川分館として建築に関する展示を行っています。


播磨坂

最寄り駅の一つ・メトロ丸の内線の茗荷谷駅から植物園に向かって歩くと、文京区の桜の名所・播磨坂を通ります。文京区のイメージを象徴するような閑静な並木道です。

植物園の出入口は敷地の南東角の正門一か所だけです。木~日曜の東大総合研究博物館小石川分館の開館日のみ、敷地南西にある小石川分館への出口のみが設けられます。広大な敷地には網の目のように園路が張り巡らされ、じっくり回ると一日がかりになるほどです。正門のある南側が北側の台地より一段低い段丘のような構造になっています。


本館

正門から続く坂をのぼると本館が現れます。内部公開はされていませんが、1939(昭和14)年建築の美しい外観です。戦前の昭和らしいアールデコ調の優美なデザインが写真映えします。

私が訪れたのは11月の平日の午前中だったこともあり、園内は遠足の幼稚園児、ママ友、シニア、写真愛好家が目立ちました。しかし休日にはきっと、老若男女多様な来園者が訪れていると感じました。園内の植物はとにかく種類が多く、季節に応じて多様な表情が楽しめるからです。

サイエンスファンにはたまらない「ニュートンのリンゴ」の木が園内にあります。ニュートンの家にあった万有引力の法則の発見で名高いリンゴの木が接ぎ木によって移植され、子孫が現代に伝わっているものです。世界中のサイエンス機関に移植されている中で、日本に初めて伝わったニュートンのリンゴです。


シマサルスベリ

秋らしい表情をふんだんに楽しめた中では特に、沖縄から中国にかけて分布するシマサルスベリの森が印象的でした。白い木肌が黄色い落葉の海の中に映える姿には、映画のシーンに使えるような深い趣がありました。


高台から見下ろす日本庭園と文京シビックセンター(区役所)

北側の高台からは日本庭園と東京の遠景を見下ろすことができます。紅葉の時期でしたので実に見事な風景でした。小石川植物園は近くの椿山荘とともに、高低差を回遊しながら楽しめることが大きな魅力です。京都の庭園にはほとんどない魅力です。

台地から降りた日本庭園からは逆に台地の斜面が借景になります。池を回遊しながら随所で目に入る赤レンガはとても写真映えします。池の周囲にはベンチがたくさん設けられています。座っていると、東京とは思えない静けさの中で、実に多様な庭園の表情を楽しめます。とても贅沢な空間です。


日本庭園と総合研究博物館小石川分館

特別名勝に指定された小石川後楽園と六義園もある文京区はやはり、江戸の面影の宝庫です。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



著者は日本の植物学の父

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小石川植物園
正式名称:東京大学大学院理学系研究科附属植物園
【公式サイト】https://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/koishikawa/

原則休館日:月曜日、12/29-1/3
入館(拝観)受付時間:9:00~16:00



◆おすすめ交通機関◆

都営地下鉄三田線「白山」駅下車 A1出口から徒歩10分
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅下車 1番出口から徒歩15分
JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
東京駅→東京メトロ丸ノ内線→茗荷谷駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。


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