運慶作と推定される大日如来を購入して話題となった宗教法人の真如苑。その所蔵する仏教美術を公開する「半蔵門ミュージアム」を訪れました。今年2018年4月のオープンで、真新しい展示室には大日如来以外にも目を見張るような名品がたくさんありました。
熱海のMOA美術館や滋賀県のMIHO MUSEUMなど、宗教法人が設立した美術館はとても優れたコレクションが目立ちます。その蒐集力の背景には豊富な資金力があると思われ、名品を日本国内で大切に保管・展示していることには大きな意義があります。
半蔵門ミュージアムもその一つと言え、驚くことに入館料は無料です。メトロ半蔵門駅の真上にあり、仕事の合間にも立ち寄りやすいところにあります。ぜひおすすめします。
エントランス
国内の一般的な美術館と異なるのは、無料であることに加え、1F受付で首から下げる入館証を受け取ることです。館内はミュージアム以外の機能もあるようで、そこへの来館者と区別するためだと思われます。
【半蔵門ミュージアム公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています
最初にB1Fの展示室におります。大日如来像などの常設展示のフロアです。エレベーターを降りるとガンダーラの仏頭が目に入ります。とても美しい目にくぎ付けになり、この美術館のコレクションの上質さが最初に強く印象付けられます。
続いて岩に浮き彫りにしたガンダーラの仏像彫刻が並んでいます。いずれも大きさが1mに満たない小さな作品ですが、素朴ながらも菩薩の瞑想や仏陀の入滅など仏教信仰の象徴的なシーンが丁寧に彫刻されています。2-3世紀のガンダーラの人々の篤い信仰心が伝わってくる名品です。
続いて最大の目玉作品である大日如来像が目に入ります。テーブル上の展示台に置かれていますが、像を取り囲むガラスケースがほとんど見えないほど透光性に優れたガラスを使用しています。光のあて方も実に上質で、仏像自身が輝いているように演出しています。
運慶作とは断定されていませんが、座像の底の上げ底や納入品の特徴から、運慶作の可能性が高いと考えられています。お顔の表情に若々しさ、ボディの造形に力強さといった運慶らしい特徴も確認できます。仏像に詳しい方でも、運慶作と言われて違和感を感じる方は少ないと思われます。
この作品は2008年のニューヨークのクリスティーズのオークションに出品され話題を呼びました。一級の仏教美術の海外流出を懸念する報道が相次いだためです。真如苑による落札後まもなく重文に指定され、ミュージアム開館まで東京国立博物館に寄託されていました。私も東博でお会いしました。
醍醐寺旧蔵の不動明王像は、保存状態が良くボディラインが光背の金箔に美しく映えています。大日如来の左側に置かれており、二体で実に荘厳な空間を醸し出しています。
2Fでは企画展示が行われています。展示期間については明らかにされていませんが、春の開館以来「当館の大日如来坐像と運慶作品-その納入品と像内荘厳-」が行われています。全国の主要な運慶作品の像内納入品やX線写真をパネルで紹介し、運慶作品の特徴を詳しく学べるようになっています。仏像ファンの方にはとても”熱い”内容が楽しめます。
【半蔵門ミュージアム公式サイト】 企画展示
3Fにはシアターがあります。こちらも春の開館以来、18分の映像「大日如来坐像と運慶 祈りと美、そしてかたち」が上映されています。運慶作品の特徴をとても美しい映像で表現しています。こちらは仏像の知識があまりない方でもうっとりするように楽しめます。
【半蔵門ミュージアム公式サイト】 上映作品
都内に常設でこれだけの美しい仏教美術空間を鑑賞できる施設ができたことは、歴史のある古刹が少ない東京ではとても素晴らしいことです。
東博本館の仏像の常設展示室も、ここを見倣って光のあて方を工夫してほしいと強く感じました。平成館の仏像の企画展ではきちんとできています。日本の文化予算の少なさが要因でしょう。東博は世界有数の美術館になれるレベルのコレクションは揃っているだけに残念です。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
天空に君臨する大日如来をあなただけの空間に
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半蔵門ミュージアム
【公式サイト】https://www.hanzomonmuseum.jp/
原則休館日:月火曜日、12/29-1/4
入館(拝観)受付時間:10:00~17:00
◆おすすめ交通機関◆
東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅下車、4番出口から徒歩1分
東京メトロ有楽町線「麹町」駅下車、3番出口から徒歩5分
JR中央線・東京メトロ南北線・丸の内線「四ツ谷」駅から徒歩15分
JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
東京駅→東京メトロ丸の内線→大手町駅→東京メトロ半蔵門線→半蔵門駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場はありません。
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