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京都 宝蔵寺 若冲ファンにはたまらない寺宝展 2/7~11

2019年01月14日 | お寺・神社・特別公開

京都随一の繁華街・河原町通から一本西に入った裏寺町通は、繁華街と思えない静けさの中に、多くの寺が立ち並んでいます。その一つの宝蔵寺(ほうぞうじ)は、伊藤若冲ゆかりの寺です。毎年2月8日の若冲の誕生日の前後に、境内と寺所蔵の若冲作品の特別公開が行われます。

  • 年1度だけの特別公開では、若冲のドクロの絵が人気
  • めったに見られない若冲派と呼ばれる弟子たちの作品も鑑賞できる稀有な機会
  • 江戸時代の京都の町衆の菩提寺の面影を色濃く残す


秀吉の都市計画による寺の集団移転時は、寺町はその名の通りほとんどが寺でしたが、現在は多くが繁華街の店に姿を変えています。宝蔵寺は時代の変化の中で、脈々と寺町における法灯を守っています。


山門から見える本堂

宝蔵寺には空海が創建したという言い伝えがあるようですが、歴史が明確になるのは鎌倉時代からです。千本釈迦堂の住職で浄土教に精通していた如輪上人が再興し、秀吉によって現在地に移転します。幕末の蛤御門の変で境内は全焼しますが、若冲の遺した作品や伊藤家の墓は大切に守られました。現在の本堂は1932(昭和7)年に再建されたものです。浄土宗西山深草派に属します。

裏寺町通に面した山門からまっすぐ伸びる石畳の先に本堂があります。山門からも見える入母屋造りの屋根が印象的です。昭和の再建という新しさを感じさせず、長い時間を積み重ねてきたような落ち着きのある本堂です。

石畳の両側にはコンパクトながらも前庭がしつらえられており、すぐそばの繁華街の喧騒感を打ち消すような趣があります。季節の花も楽しめるでしょう。


伊藤家の墓

本堂の前にある伊藤家の墓は、2016年に修理が完成し、屋根もかけられました。宝蔵寺は観光目的では普段は非公開ですが、伊藤家の墓参りと御朱印だけは、一般向けに常時受け付けています。若冲ファンにとっては聖地の一つです。

なお宝蔵寺には若冲自身の墓はありません。若冲自身の墓は相国寺と伏見の石峯寺にあります。宝蔵寺にある墓は伊藤家代々の当主の墓で、若冲が1751(寛延4)年に両親の墓石を築いたことが始まりです。若冲は23歳だった1738(元文3)年に父が急死し、錦市場の青物問屋・桝屋の4代目当主となります。

父は桝屋の3代目ですので、伊藤家の先祖代々の墓は他所にあったと思われます。何らかの事情で若冲が宝蔵寺に菩提寺を移したか、新たに定めたのでしょう。1755(宝暦5)年に次弟の宗厳(そうごん)に家督を譲って画業に専念した後、1765(明和2)年には急死した末弟・宗寂の墓も新たに設けています。

【宝蔵寺公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

「髑髏(どくろ)図」「竹に雄鶏図」の2点は、宝蔵寺を代表する若冲作品です。寺宝展の毎年の目玉になっています。髑髏図は背景を漆黒にし、その中に白いドクロを浮き出たせています。若冲は背景を漆黒にした作品を他のモチーフでもよく制作しています。モチーフそのものには強烈なインパクトがありますが、絵の印象としてはとてもシャープで洗練されています。江戸時代の人はどのように見えたのでしょうか?

「竹に雄鶏図」は近年になって若冲の真筆と確認された作品です。竹と鶏という二つのモチーフが目立つよう、余白を持たせ方が絶妙です。鶏は今にも動き出しそうにリアルで、竹の葉から風になびく音が聞こえてきそうです。バランスの良い素晴らしい作品です。

宝蔵寺の寺宝展は、若冲作品だけではなく”若冲派”とも呼ばれた弟子たちの作品も展示されます。若冲の弟子はほとんど知られていないため、宝蔵寺の寺宝展は貴重な機会となります。

若冲から家督を継いだ次弟の宗厳は白歳(はくさい)と称し、兄に教えられて絵も描いていました。今回の寺宝展で出展される「南瓜雄鶏図」は南瓜の横の鶏のとさかだけが赤く着色された水墨画です。「羅漢図」は、悟りを開いた羅漢の表情をしわくちゃに描いています。構図や表情、色の使い方はまさに”若冲派”と言えます。

若冲と交流のあった大坂の表具師・松本奉時の作品も出展されます。評判を呼んだ彼のカエルの絵も出展されます。


弥次さん喜多さんがいる三条大橋はすぐ近く

普段めったに見られない若冲の周囲の絵師と作品を見ることができます。若冲ファンにはたまらない、濃厚な展覧会です。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



奇想の系譜の著者が語る若冲の秘密

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宝蔵寺
寺宝展/伊藤白歳生誕300年記念
【寺による展覧会公式サイト】

会期:2019年2月7日(木)~2月11日(月)
原則休館日:期間中無休
入館(拝観)受付時間:10:00~15:30(2/8は~12:30)

※この寺は観光目的では常時公開されていません。公開は毎年冬(2月上旬)に限られます。
※御朱印は通年で受け付けています。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。



◆おすすめ交通機関◆

阪急京都線「河原町」駅下車、6番出口から徒歩5分
京阪本線「祇園四条」駅下車、4番出口から徒歩10分
京阪本線「三条」駅下車、6番出口から徒歩10分
京都市営地下鉄・東西線「京都市役所前」駅下車、地下街ゼスト御池2番出口から徒歩7分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅→地下鉄東西線→京都市役所前駅

【公式サイト】 アクセス案内(宝蔵寺概要)

※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄を乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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