美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

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庭の借景として見る白鷺城 ~姫路 好古園~

2016年11月02日 | 城・屋敷・歴史遺産


JRの新快速や山陽新幹線で姫路に近づくと、車窓に白く光り輝く姫路城が表れる。2015年に終了した平成の大修理では天守閣が真っ白になって驚いたが、瓦の漆喰を塗りなおしたため白く見えるようになったそうだ。別名「白鷺城」でもあり、よくよく見ると確かに白い方が美しい。

そんな姫路城も昨今は、世界遺産になっていることもあり外国人観光客に大人気で、特に休日の入場待ちの行列の長さはひどい。

日本の人気の文化施設もそろそろ、欧米のように料金は高いが優先入場できるチケットを販売した方がよい。TDLやUSJの時間指定チケットと同じ原理のものだ。でないと外国人観光客にSNSでどんな文句を広められるかわからない。

そんな混雑をしり目に、お城の西側には「好古園」という池泉回遊式(ちせんかいゆうしき、建物から座って眺めるのでなく水辺をゆったり歩いてまわる)の庭園があり、隠れた人気がある。

姫路城の横にあるので江戸時代の大名庭園か?と思いきや、実は発掘調査で確認された武家屋敷跡などの遺構を活かし1992年に人工的に作庭されたものである。「当時のものじゃない」と聞くと途端に関心が下がってしまうのは日本人の悪い癖、現代の作庭だからこそ江戸時代の趣が出るよう計算して実に美しく作られているのだ。

まず城が真横にあるため、城が庭の借景になっており実に面白い。日本に少なからずの天守閣はあるが、城を借景にした庭が近くにあるケースはほとんどないのではないか。しかもその城は燦然と白く輝く白鷺城、ここで写真を撮らない人はまずいないだろう。

姫路藩主の下屋敷である西御屋敷があった「御屋敷の庭」は園内の最大の庭園で、池をまたいで建物を結ぶ「渡り廊下」からの眺めが美しい。渡り廊下はわずかに曲線を描いており、絶妙の美意識を感じさせる。

園内はすべて四季の花がきちんと計算されて植生・手入れされており、いつ訪れてもすがすがしい自然の色の美しさを目にすることができる。

園内の雰囲気はまさに江戸時代の武家屋敷の庭を歩いているように感じさせてくれる。時代劇の撮影地によく使われるというのもうなずける。



現存する天守閣は関ヶ原の戦いと大坂の陣の間1609年までに、初代姫路藩主池田輝政が完成させた。豊臣恩顧の西国大名を監視するために徳川家康が、重臣の池田輝政に地方都市の城としてはかなり大規模な天守閣を築かせたのである。

その後も譜代大名が転々としたが、江戸時代半ばの1749年に酒井氏が入ってからは明治維新まで安定して続いた。ご存知の方も多いと思うがこの酒井氏こそ、江戸琳派の巨匠、酒井抱一の実家(抱一は姫路二代目藩主の弟)である。

酒井家は代々文芸への関心が強い家で、抱一の頃の江戸藩邸は文化サロンのようになっていたと言われる。殿様がそうであったように姫路の人々には文化を愛する伝統が受け継がれているようだ。好古園は素晴らしい。

日本や世界には数多くの
「唯一無二」の名作がある。

「そこにしかない」名作に
ぜひ会ってみてください。

休館日 年末(例外が発生する可能性もあるので訪問前にご確認ください)
公式サイト http://himeji-machishin.jp/ryokka/kokoen/

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