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法隆寺・大宝蔵院の常設展示 ~お寺のミュージアムでは日本最高峰

2018年08月24日 | お寺・神社・特別公開

法隆寺と言えば、世界的にも著名な日本を代表するお寺です。世界最古の木造建築があり、姫路城と並んで日本で最初に世界文化遺産に登録されています。

指定対象が不動産の文化財に限られる世界遺産のインパクトが大きいため、法隆寺では建築に目を向けがちになりますが、動産の文化財である仏像・絵画などの美術品の所蔵も圧倒的な質と量を誇ります。平安時代など草創期からかなり後の文化財も多く、日本の仏教美術所蔵のチャンピオンともいえる存在です。

仏像や工芸品の多くは常設展示で見ることができます。その展示施設である大宝蔵院(だいほうぞういん)をご案内したいと思います。


西院伽藍の回廊

法隆寺に文化財がどれくらいあるか。「とてもたくさん」くらいにしか私も把握していなかったので、文化庁が運営する「国指定文化財等データベース」で寺社所有文化財の指定件数を調べてみました。このDBは国宝・重要文化財や史跡・名勝など国により指定された文化財はほぼ網羅されています。

【別ウィンドウで開きます】 国指定文化財等データベース

法隆寺は205件あり奈良県で1番、東大寺が2番で164件でした。ちなみに1番は京都府が醍醐寺で110件、滋賀県は延暦寺で70件、和歌山県は金剛峯寺で77件でした。他の都府県は確認していませんが、おそらく寺社所有の指定件数としては法隆寺が日本一だと思われます。

なおこの件数は所有者である宗教法人単位にカウントしたもので、別法人になっている塔頭(たっちゅう)の件数は含まれません。例えば塔頭を含む高野山全体を、金剛峰寺を本坊とする一つの寺院グループとみなすと216件になります。高野山全体には100を超える塔頭があるため、法隆寺とは寺院規模が格段に違います。法隆寺への文化財の集積密度はやはり別格です。

大宝蔵院(いん)は、従来の大宝蔵殿(でん)の宝物収蔵展示機能を強化するため、1998年に完成した新しい施設です。企画展ではなく法隆寺が所有する文化財の常設展示が行われています。従来の大宝蔵殿でも春秋の観光シーズンには、大宝蔵院に展示しきれない文化財を公開する「法隆寺秘宝展」が行われています。


東室

金堂で日本の仏教美術の原点の至宝・釈迦三尊像の荘厳さと向き合い、五重塔の優美さと回廊の静けさを体験し、東室(ひがしむろ)を拝観した後、すぐ東側にある大宝蔵院に向かうのが一般的なルートです。

大宝蔵院に常設展示されている文化財はほとんどが国宝です。国宝だ重文だと国家による格付けを鑑賞にあたって参考にすることはよくありますが、ここではそれも無意味になるほどです。

入口には、和田英作による大作「金堂落慶の図」と焼損した金堂壁画の写真が掲げられています。これが現存していれば敦煌・莫高窟(ばっこうくつ)の壁画に匹敵する世界的な遺産だったと、和田英作の絵と壁画の写真を見るたびに感じます。最新の防災設備が整っていると思われる大宝蔵院の完成により、かけがえのない文化財が守り続けられる確率がさらに高まったことには安堵の念を禁じえません

【公式サイトの画像】 夢違観音、地蔵菩薩

夢違観音(ゆめちがいかんのん)は、少年のような穏やかで清楚な表情をした白鳳時代の傑作です。銅像で、薬師寺の薬師三尊のように黒光りしたボディラインがさらに美しさを引き立たせています。この仏様に祈ると悪い夢が良い夢に代わると信じられていたことが名前の由来です。東京・深大寺の国宝・釈迦如来とお顔の造りが似ていることでも知られます。

【公式サイトの画像】 百済観音

百済観音(くだらかんのん)は、大宝蔵院建設時に寺が専用の部屋を設けたことでもわかるように、とても寺に大切にされている仏様です。しかしミステリアスなことに伝来がよくわかってないのです。元禄時代に寺にあった記録がありますがそれ以前はまったく不明です。他の寺から移されてきた可能性が高いと考えられています。

一般的な仏像に比べ、極端にスリムなボディとほぼ八頭身の頭の大きさは、現代のファッションモデルがステージの先端で無言のポーズを決めているようにも見えます。210cmもある高さと無表情の小さなお顔が神秘性を一層高めています。

飛鳥時代に日本で制作されたと考えられていますが、同時代の仏像とは様式が異なることから学説的にもミステリアスな仏様です。確かにお会いした時の印象や存在感が一般的な仏像とはかなり異なります。お顔の絶妙な無表情が観る者を惹きつけます。とにかく不思議な仏様です。

【公式サイトの画像】 飛天図(金堂内陣小壁画)

館内には、たまたまはずされていたために焼損を免れた金堂の内陣壁画が展示されています。二人が優雅に天空を舞う姿がモチーフです。衣の赤いひだがなびく部分に彩色がよく残っていることには驚きです。内陣中央の本尊・釈迦三尊像を取り巻くように描かれていたものです。実際の金堂内陣の空間にはめ戻し展示される機会が待ち遠しいものです。



大宝蔵院は、同じ奈良の興福寺・国宝館と並んで日本を代表するお寺のミュージアムです。いずれも様々な事情や防災上の理由で安置場所がなくなり、専用の展示施設に集められたものです。いつでも見られる常設展示は日本のミュージアムには多くありません。その意味でもとても感慨深いミュージアムです。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



昭和から平成にかけての法隆寺を支えた名管長が語る法隆寺の魅力


法隆寺
【公式サイト】http://www.horyuji.or.jp/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:00~17:00(11/4-2/21 ~16:30)

※公開期間が限られている仏像や建物があります。



おすすめ交通機関:
JR大和路線「法隆寺」駅下車、南口からバス「法隆寺参道」下車、徒歩7分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間15分
大阪駅→大和路快速→法隆寺駅→奈良交通バス→法隆寺参道バス停

【公式サイト】 アクセス案内

※バスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることをおすすめします。
※この施設には駐車場はありません。


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