すぐ下には平安神宮が見える
京都・東山の山頂にある将軍塚(しょうぐんづか)は、都心の近くで京都盆地全体をほぼ見渡せる絶景スポットとして地元ではよく知られている。山頂付近はふもとにある青蓮院(しょうれんいん)の飛び地境内になっており、2014年には青龍殿(せいりゅうでん)が設けられた。国宝・青不動(あおふどう)が安置されているとともに、清水寺の4倍以上の広さの大舞台から京都市内の一大パノラマを楽しめる。昼夜を通じて観光スポットとしても見逃せない。
将軍塚という名は、平安京に遷都した桓武天皇の故事に因む。奈良から長岡に遷都したものの絶えないトラブルに悩まされた桓武天皇を、忠臣・和気清麻呂(わけのきよまろ)が京都盆地を見下ろすこの地に誘い、新たな都にふさわしい土地として進言した。桓武天皇はその勧めに従い平安京に遷都し、都の鎮護のために将軍の像を塚に埋めるよう命じたという。
将軍塚は京阪電車三条駅からタクシーで10分程度、青蓮院からも山道を歩いて30分程度の近距離にある。本数は少ないがバスもあるので事前に確かめられたい。将軍塚に客待ちタクシーは常駐していないこともあり、行の上りはタクシー、帰りの下りは徒歩をおすすめしたい。京都の都心のすぐそばの山道から見える風景は、ここでしか味わえない。とても見応えがある。
青龍殿の建物は、大正天皇即位を記念して北野天満宮に建造された武道場「平安道場」を移築したものだ。現代では入手不可能と言われるヒノキの大木を用いた建築がとても美しく、室内には凛とした空気が漂う。
平安時代の仏画の傑作で、園城寺(三井寺)の黄不動、高野山明王院の赤不動と並び称される国宝「青不動」はここに安置されている。原本は保存のためほとんど公開されないが、複製は常に祀られている。燃え盛る炎の中に、ご神体が青く描かれた不動明王は、見る者の煩悩を焼き尽くすが如く圧倒的な迫力を示している。しばし時間を忘れて向き合ってほしい。炎が醸し出す迫力は、日常の煩悩と冷静に向き合うよう導いてくれる。
大舞台には冬になると訪れる人は少なくなる。周囲の木々は彩りを控え、じっと春が来るのを待っている。しかし冬は空気がとても澄んでいる。京都市内のパノラマを楽しむにはどこまでも綺麗に見える冬が最高だ。50kmほど距離のある大阪の高層ビル群が見えることもある。
東京でも富士山がきれいに見えるのは冬だ。大自然は、寒さに耐える者に絶景をプレゼントしてくれる。
青龍殿の裏が、京都市外をのぞむ巨大な大舞台
こんなところがあったのか。
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将軍塚 青龍殿
青蓮院門跡
原則休館日:なし
※仏像や建物は、公開期間が限られている場合があります。