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大阪・観心寺「如意輪観音」開帳 ~日本仏像の最高傑作に2日間だけお会いできます

2018年04月06日 | お寺・神社・特別公開


如意輪観音のいらっしゃる金堂内陣への入り口

大阪府南部と奈良県を隔てる聖なる山・金剛山のふもとに観心寺(かんしんじ)はあります。役小角が開創したとされ、山岳宗教特有の神秘的な雰囲気を醸し出す境内です。

そんな神秘性を象徴するのが本尊の国宝・如意輪観音です。平安密教美術の最高傑作であり、日本仏像の最高傑作でもあります。如意輪観音は現在も秘仏で、毎年4月17・18日の2日間だけ開帳されます。お会いすると、うっとりするほどの美仏です。わざわざ出かける価値が充分にあります。

役小角による開創は伝説の域を出ませんが、観心寺の実質的な建立には空海が関係しています。この地を訪れた空海は北斗七星をあがめ、その後空海の弟子が827(天長4)年に造営を始めています。空海があがめた北斗七星は現在も「里塚」で祀られています。

南北朝時代には豪族の楠木正成(くすのきまさしげ)が南朝方で活躍し、観心寺のある南河内エリアは南朝方の重要な拠点となりました。観心寺は一時期、後醍醐天皇を継いだ後村上天皇の「行在所(あんざいしょ、天皇の一時的な滞在施設)」にもなっていました。後村上天皇の陵も境内にあります。

如意輪観音がいらっしゃる国宝の金堂がほぼ現在の姿になったのもこの頃です。朱塗りの柱と漆喰の白壁のコントラストが美しい、和様と中国の大仏様・禅宗様がミックスした折衷様建築の代表例とよく言われます。

南北朝の動乱の後は、徐々に寺勢が小さくなっていったようですが、大きな動乱には巻き込まれていません。境内には如意輪観音以外にもとてもたくさんの仏教美術が遺されています。大阪府内を代表する仏教美術の宝庫と言えます。


禅寺のような屋根を持つ金堂はどこかミステリアス

如意輪観音はいらっしゃる金堂の内陣は、長年の煤で黒くなった中に、柱や壁に描かれた両界曼荼羅の極彩色が浮かび上がっています。密教ワールドに入っていることを人々に強く印象付けます。

如意輪観音は座像で像高は109cm、日本人女性が座っているくらいの大きさです。手が6本ある六臂(ろっぴ)像で、カヤの一木造ですが、顔や衣などふくらみのある部分には漆を塗り重ねています。この漆の厚みが、神秘的でもある豊満なラインを形成している秘密かもしれません。

長らく秘仏であって保存状態がとてもよく、驚くほど彩色が残っています。人肌のような艶のある手と赤い唇は官能的でもあります。密教美術の特徴である神秘性に妖艶な美しさが加わった超越的なオーラを発しています。

煩悩を打ち砕きあらゆる願いをかなえるにはどうすればよいか、と悩んでいるお姿を如意輪観音は現しています。性別も年代も如何様にも見えるお顔は、俗世間を超越した存在であるかのように見えます。

この仏様は瞳の表現も絶妙です。どこか物憂げですが、目が合うとなかなか離れません。とても人を惹きつけるパワーのある瞳です。どんな願いも叶えてくれる観音様を、これだけ魅力的に表現した像は他にはありません。

※公式・公的サイトに一切の「如意輪観音」画像は掲載されていませんので、このブログページでも画像をご紹介していません。

本尊開帳日には、金堂内陣にいらっしゃる平安時代の四天王像や、鎌倉時代の「大随求菩薩画像」も公開されます。いずれも重文です。大随求菩薩画像は本尊とは異なる、妖しい魅力の仏画です。こちらも必見の価値ありです。

境内の「霊宝館」は本尊開帳日以外も常時公開されています。金堂の如意輪観音の眷属だった等身大の聖観音・十一面観音が、平安仏らしい優雅なお姿を見せています。

「建掛塔(たてかけとう)」」は、楠木正成が三重塔を建立しようとしましたが、彼の死によって工事が一重目で頓挫し、屋根をかけたものです。「建掛」というネーミングが絶妙ですが、藁葺屋根が美しい重文建築です。内部に安置されていた4体の如来に霊宝館でお会いすることができます。金色肌が残る優美な仏様です。

4月17・18日をスケジュール表に書き留めることをおすすめします。ワクワクすること間違いなしです。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



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観心寺
http://www.kanshinji.com/

原則休館日:なし
※本尊・如意輪観音坐像は、毎年4月17・18日のみ開帳されます。


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