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気まぐれ本読み日記

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読書について

2023-06-16 20:32:35 | その他

『読書について』ショウペンハウエル著 斎藤忍随訳 岩波文庫

この本は、ドイツの哲学者アルチュール・ショウペンハウエル(1788-1860)の短編集で、表題作の『読書について』のほか、『思索』、『著作と文体』の計3作品が収められています。

3作を通して共通することは、読書とは、他人にものを考えてもらうことである。従って自分の思想に行き詰ったときにのみ行うもので、「ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く。(中略)しかしこれこそ大多数の学者の実状である。彼らは多読の結果、愚者となった人間である」と著者は述べています。

そして読書に対する心がけとして、「読まずにすます技術が非常に重要である」としています。「その技術とは、多数の読者がそのつどむさぼり読むものに、我遅れじとばかり、手を出さないことである」ということです。そして読むなら評価の定まった古典を読むように勧めています。

また著者は毒舌で知られた人ですが、人類の知識の進歩についてこう語っています。「人類は、めざましい進歩をとげると、その後まもなく、ほとんど決まったように迷路に陥る」また、こうも言っています。「学問、文学、芸術の時代精神が、約三十年ごとに破産宣告を受けるのも、このような事情と関係がある」ショウペンハウエルの時代から百年余り経っていますが、現代にも当てはまる言葉だなと思いました。

 

 

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松の文化誌

2023-06-10 15:51:00 | その他

『松の文化誌』

ローラ・メイソン著 田口未和訳 原書房

私がこの本を読もうと思った理由は、松葉茶を飲むので、松葉についてもっといろんなことが知りたかったからです。

松葉にはビタミンAとCが豊富にあり、体にいいことは間違いなさそうです。

しかし読んでみると、松葉だけでなく松そのものについても勉強になることがたくさんありました。

たとえば野球で、ピッチャーがマウンドで使うロジンバッグの原料が松脂で、他にも錠剤薬のコーティングやチューインガムにも松脂が使われていたそうです。

またパイナップルは、コロンブス探検隊が見た目が松かさに似ているという理由で名付けられたが、実際には松の仲間ではないそうです。

松の木はヴェネチアやアムステルダムの土壌の基礎にも使われていること、松の木を焼いた煤から墨を作ること、等などこの本を読んで非常にためになりました。


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風土ー人間学的考察ー

2023-06-09 16:39:51 | その他

『風土ー人間学的考察ー』和辻哲郎著 岩波文庫

この本によって、特にヨーロッパの風土というものがたいへんよくわかりました。
たとえば地中海を日本の海と比べて、「死の海」「瘦せ海」「海の砂漠」と呼んでいます。その理由は、日本の海に比べ極端に生物が少ないからです。しかも生物が少ない原因として、ヨーロッパ大陸から地中海に流れ込む川らしい川が、「マルセーユの傍らのローヌ河とヴェネチアの傍らのポー河」のみであり、それ以外の地域では、海の生物が食べ物を得ることが難しいから当然生物が少なくなるわけです。したがって地中海にそそぐ大河を持たないギリシア人が魚類をあまり食べなかったのは無理もないといっています。そして地中海は南にサハラ砂漠、東にアラビアの砂漠地帯が近いため、砂漠の乾燥した空気が流れ込むことから、海が乾燥し、沿岸地域も乾燥します。それは雑草の繁茂を妨げることから、農作業が楽になるということです。
また西ヨーロッパはたいてい昆虫が少ないようで、夏から秋にかけて日本のような虫の音が聞こえないそうです。ヨーロッパ人は日本人とちがって虫の音を愛でる習慣がないという話を以前聞いたことがありましたが、この本を読んで納得しました。
そしてヨーロッパ大陸の川は、頑丈な堤防というものがほとんどなく、これは大雨の少ない証拠であると著者は言います。
またヨーロッパ人がキリスト教を受け入れた理由として、「陰鬱の苦悶が沙漠の恐怖と共鳴したからなのである」としていて、陰鬱の一番の理由として、ヨーロッパは全体的に日照時間が短く、冬の半年ほどは日光が乏しいため、春になって日照時間が増えると、人々は熱心に日光浴をするということです。
この本が世に出てから、かれこれ90年になり、当時と比べて現在の彼我を取り巻く環境は変わっているでしょうが、ここまで風土が異なる国々のやり方を我々日本人が取り入れるのであれば、日本に適応したやり方で取り入れないとだめなんだということがよくわかりました。
 
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人間らしさの構造

2023-06-04 22:36:59 | その他

『人間らしさの構造』渡部昇一著 講談社学術文庫

この本は、1977年(昭和52年)に初版が出ました。この本では、それまで自分が知らなかったようなことが数多く出ていました。

特に「わけ登るふもとの道の多けれど同じ高嶺の月を見るかな」という和歌には非常に感銘を受けました。現在、国内でも国外でも様々な問題があり、対立する意見がありますが、この歌を持ち出せばすべて解決するのではないか、と思える気がしました。

またトマス・アクィナスとイマヌエル・カントの比較論は、先にあげた和歌に負けず劣らず感銘を受けました。「近代の病弊の一つに努力すなわち価値という迷信がある。」と著者は言います。そしてその迷信が「努力しないでえられたものは価値がないというような迷信」に発展していったと、著者は指摘しています。この本に出会うまでは、私自身もそういう迷信に陥っていたので、この本を読んで目が覚めた感じがします。さらに、この本で、トマス・アクィナスが丸々と太って腹を突き出しており、カントが晩年認知症を患っていたと、はじめて知りました。

今の時代にこそ、こういう本がもっと見直されるべきではないか、と読み終わってから痛感しました。

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