『中国古典名言事典』諸橋轍次著 講談社学術文庫
この本に出会ったのは、かれこれ三十年近く前のことです。
中国の古典を読まずに、いろんな名言を知ることができるので、便利な本だと思い購入しました。
数多くの名言が載っていますが、私がこの本で初めて知り、特に感銘を受けた言葉が二つあります。
一つは、老子に出てくる言葉で「民、利器多くして、国家滋々昏し(ますますくらし)。」
もう一つは、荘子に出てくる言葉で「機械ある者は、必ず機事あり。機事ある者は、必ず機心あり。」
前者は、国民に便利な道具が増えてくると、国の中は、道具が増えてくるのに反比例して、どんどん暗くなっていく、未来がなくなっていくという意味です。
後者は、機械を使うものは、必ず計画の手段を講ずるものだ。計画の手段を講ずるものは、必ず計画を思い描いているものである。計画を思い描いていれば、心が純真無垢ではなくなり、精神も安定しない という意味です。
今から二千数百年も前の言葉ですが、現代社会の本質を、端的に言い表しているなと驚く次第です。
折に触れて、この本を手に取ることがあるので、肌身離さず手元に残しておきたい本です。