話を聞かせてもらった
整体師の仕事。
お客さんの方から訪ねて来てくれて、
お金を払ってくれる上に、
「ありがとうございました」とまで言ってもらえる。
飛び込み営業の時には、
お呼びでない、断られて当たり前、しつこいと怒られる。
断られ続けると、まるで人格を全て否定されたような錯覚に陥る・・・
という経験をしているため、
恵之助にとって、「整体師」というのは夢のようなお仕事に思えた。
無料の求人誌から2〜300円で買える有料の求人誌、求人広告など隈なく目を通し、
働きながら「整体師」の勉強ができる、見習い整体師として雇ってもらえそうな
治療院の面接を受けた。
「結果は後日電話連絡します。」
とのことで、手応えのほどはよくわからなかったが、
「若いやり手っぽい院長先生だったなぁ」
という印象だけが残った。
他の整体院も探してみるが、目ぼしいところは見つからず、ルーティーンの生活を1日2日と繰り返しながら
まだかなぁまだかなぁと、連絡を待つ恵之助。
「さすがにもうそろそろ働きたいぞ!」
お金も入れずに寝食世話になって、
昼間は1回400円の公共のジムに通ってお金にならない汗を流し、
帰りにブックオフに寄って、「自己啓発本」を立ち読みして、
「できる男になれる!」
気になって、家に帰る。
やばい、やばい、もし面接に落ちていたらどうしよう?
しばらくこの生活が続くのか?
採用されたい、採用されたい。
まだか、まだか、と連絡を待つ。
1週間ほど経っただろうか
恵之助が面接を受けた整体院から連絡が入った。
「採用です。」
「ありがとうございます!」
「明日から来れますか?」
「はい!行けます!」
やったー
やったー
これでようやく働ける。
と、初めての職場に不安はあったが、それ以上に働けることが嬉しい恵之助だった。
元々健康志向の恵之助は、飛び込み営業で
こういう仕事もあったんだ!
と大学の時の就職活動の際には全く選択肢には出てこない
整体師という仕事を発見したことは目から鱗だった。
さぁ、ようやく働ける。
そして、とても興味のある仕事だ。恵之助は、
期待に胸を膨らませて、見習い整体師としての初日を迎える。
つづく。