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嘯くセリフも白々しい

主に、「バックパッカー」スタイルの旅行情報を体験記のかたちで書いています。少しでもお役に立てば嬉しく思います。

なぜブルガリアなのか ブルガリア旅行1

2012年07月23日 | ブルガリア旅行(2012年6月、7月)
 出発前に知人へこの国に行くと話したら、どうしてまたそんな所へ、という意味のことを言われた。日本にいる大多数の人々がブルガリアと聞いてまず思い浮かべるのは、明治ブルガリアヨーグルトだろう。そして、日本で一番有名なブルガリア人は大相撲の琴欧洲だと言われても、大抵の人には異論がないと思われる。日本に住んでいると、「ブルガリア」と名の付くそれ以外のものに触れる機会はほとんどないと言っていいかもしれない。ブルガリアは日本からの旅行者にとってマイナーな目的地であり、情報が決して多くはない状況である。したがって、実際にそこを訪れた自分のような者が、旅行することを決め、その手配へ着手した経緯に多少触れておくことは、今後渡航を検討している人にとって情報の一つになるかもしれないと考えた。

 話は前年の夏に遡る。当時私の頭にはヨーロッパへ行きたいとの思いが何となくあった。寒さが苦手なのでそこへ行くなら夏しか考えられず、ある日、思い立ったが吉日とばかりに日本との往復航空券の値段を調べ始めた。しかし欧州はこの季節が一番のハイシーズンである。どのサイトを見ても総額は10万円を優に超え、国や都市によっては20万円に近い。ロンドン、パリ、ローマなど主要都市まで安くたどり着ければ、後はLCC(Low-cost carrier。格安航空会社)を使って希望の場所を目指せばいいとも考えたが、それらへ行くチケットすら貧乏人の自分に出せる額ではなかった。私はヨーロッパ訪問を諦めざるを得なかった。
 しかし断念はしたものの、久しぶりに行きたいなあという思いはその後もずっと胸の内で燻り続けた。この地域を最後に訪れたのは約15年前で、通貨ユーロが導入される以前のことだった。
 私は細かく予定を立てて旅行をするのが好きではない。目的地、時期、旅程、その日の行動すらも行き当たりばったりに決め、やりたい時にやりたいようにするのが自分の肌に合う。だがヨーロッパ行きに関しては、この流儀が通用しないようだった。多くの人がそうするように数か月前から計画を練り、必要な手配をしなければならない。旅行をする季節が夏で、しかも出せる金額が限られている場合は尚更だ。
 年が変わり冬が過ぎて、春に私は行動を開始した。日本を発つ時期を6月末と決めて3月中旬から航空券について調べ、3月末にチケットを購入した。旅行開始の、実に3か月も前のことだった。

 では、ヨーロッパにあまたある国のうち、なぜブルガリアを選んだのか。
 前述のように、多くの人にとってブルガリアとは明治ブルガリアヨーグルトであり、琴欧洲だろう。そしてこの国における最も著名な国際的観光イベントは、バラの谷とかいう場所で開かれるバラ祭りなるものらしい。この場合の「バラ」は、別にそういう地名や他の何かがあるわけではなく、植物のバラである。だが私はヨーグルト、琴欧洲、バラのいずれにも興味がない。ではなぜブルガリアなのか。以下にその理由を列挙する。
・ここ数年、渡航歴のある国を再度訪れてばかりいたので、行ったことのない所へ旅行したかった。
・東ヨーロッパ訪問の経験がなかったので、行ってみたかった。
・その東ヨーロッパで、よりアジアに近く文化混交度の高そうな所に興味があり、それがこの国だった。
・私はワインとパン、それにチーズかハムという食事が大好きだ。しかし、日本でこんなことをやるとかなり高くつく。ところが欧州や南米の一部ではアホみたいに安いので、これらを飽食したかった。
・この国はワインの産地として名高く、旨いものを安くがぶ飲みできることが期待された。
 こんなところである。
 私は知人から、どうしてまたそんな所へ、という意味のことを言われた際にこれらの動機を説明しようとした。相手は、最初のうちはうんうんと相槌を打ってくれていたが、すぐに呆れて興味を失った様子になってしまった。そりゃそうだ。私がこの国を選んだ理由は要するに、「そこまだ行ったことないー。どんな所か見てみたーい。行きたいいきたい」とか「酒と食いもんが安くて旨いらしいじゃねえか。げへへ」という、ガキと中年オヤジの、それぞれの単純でアタマの悪そうな欲望を合わせたような代物である。渡航歴がない国へとか文化混交度がうんぬんなどと御託を並べても、その底の浅さは明白であり、知人が呆れるのも無理はない。でもこれが、紛れもなく、今回のブルガリア旅行を始める自分の原点なのだった。