がらすざいくのゆめでもいい あたへてくれと
うしなつたむすうののぞみのはかなさが
とげられたわづかなのぞみのむなしさが
あすののぞみもむなしからうと
ふえにひそんでうたつてゐるが
大岡信による「水底吹笛 三月幻想詩」と題された詩の一節(『大岡信詩集 自選』所収、岩波書店、2004年)。だが私はこれに音楽を付けた、混声合唱組曲『方舟』(木下牧子作曲)の一部として好きなので、厳密にいえば「好きな言葉」ではなく「好きな曲」である。同組曲の第1曲「水底吹笛」が、この詩によっている。
私はこの曲を聴く時、「とげられたわづかなのぞみのむなしさが」の部分でいつも泣く。遂げられた望みは、むなしい。そのとおりだと思う。私がこれまでに望んだり願ったりしたことの多くはかなえられなかったが、ほんの一部は手に入り、実現した。しかし、それらもいつかは空虚になる。望んで得た物はそのうちゴミとなり、愉快な気分や快楽が消えるのにさほど時間は掛からない。地位や名声、財産が永遠に続くという保証はどこにもないし、自分と自分以外の人間との関係は、どれほど長く続いても、必ず自分か相手のどちらかが死ぬという局面を迎える。
だが、それでも私は、何かを望んだり願ったりするのをやめることができない。望みや願いの多くはかなえられず、遂げられたほんの一部もむなしい。そんなことは、十分に知っている。涙が出るほど、そのむなしさを理解している。それなのに私は、望んだり、願ったりするのをやめることができないのである。
うしなつたむすうののぞみのはかなさが
とげられたわづかなのぞみのむなしさが
あすののぞみもむなしからうと
ふえにひそんでうたつてゐるが
大岡信による「水底吹笛 三月幻想詩」と題された詩の一節(『大岡信詩集 自選』所収、岩波書店、2004年)。だが私はこれに音楽を付けた、混声合唱組曲『方舟』(木下牧子作曲)の一部として好きなので、厳密にいえば「好きな言葉」ではなく「好きな曲」である。同組曲の第1曲「水底吹笛」が、この詩によっている。
私はこの曲を聴く時、「とげられたわづかなのぞみのむなしさが」の部分でいつも泣く。遂げられた望みは、むなしい。そのとおりだと思う。私がこれまでに望んだり願ったりしたことの多くはかなえられなかったが、ほんの一部は手に入り、実現した。しかし、それらもいつかは空虚になる。望んで得た物はそのうちゴミとなり、愉快な気分や快楽が消えるのにさほど時間は掛からない。地位や名声、財産が永遠に続くという保証はどこにもないし、自分と自分以外の人間との関係は、どれほど長く続いても、必ず自分か相手のどちらかが死ぬという局面を迎える。
だが、それでも私は、何かを望んだり願ったりするのをやめることができない。望みや願いの多くはかなえられず、遂げられたほんの一部もむなしい。そんなことは、十分に知っている。涙が出るほど、そのむなしさを理解している。それなのに私は、望んだり、願ったりするのをやめることができないのである。