部屋の掃除をした。もう何年か前の手帳が出てきて、思い切って捨てるかなんて思いながらパラパラとページをめくったら懐かしいメッセージカードが出てきた。
彼にしては可愛らしい、有名な犬のイラストが描かれたカード。そこにはメッセージなんて書いてなくて、ただ私の名前が書いてあるだけ。もらった時は彼らしい、なんて妙に納得しながらも、何か一言でもくれたっていいじゃないと思ったことをおぼえている。
別に特別な名前の関係ではなくて、バイトの同僚だっただけ。それでも私は彼が好きだったし、傍にいられるだけで、話ができるだけで幸せだった。
バイト最後の日、彼は私にプレゼントをくれた。可愛らしいチョコレートの紙袋に件のメッセージカードが貼ってあったのだ。
もう会えないね、なんて思いながら家に帰ってチョコレートを食べた。チョコレートなのに、塩辛いような気がして泣いていたことに気づいた。ほろ苦いお酒の味と涙の味は今でもおぼえている。
彼との思い出と彼への想いを忘れたくなくてメッセージカードは大事に取っておいたのだ。
ふと空を見上げる。掃除を始めたときは青かった空が濃いオレンジ色に変わっていた。メッセージカードを撫でながら「明日も晴れだなぁ」なんて検討外れなことを呟いた自分に気がついて少し笑った。明日もあなたが幸せですようにと祈りながら。
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