29日夜、東京・紀尾井町のホテルにある中国料理店で、石破首相(自民党総裁)は8人の首相秘書官と円卓を囲んだ。今後の政策展開について2時間近く議論し、首相は「これから大変になると思うけど、頑張っていこう」と呼びかけた。
自民、公明両党は衆院選で過半数を割り込み、今後は野党の協力を得なければ、法案も予算案も国会で成立させられない。野党が委員長ポストを握る委員会が増え、審議が滞る事態も予想される。野党の要求を優先し、「石破印」の政策が実現できない可能性がある。
首相は国民民主党との連携を模索し、周囲に「自民と考えが近い人が多く、話はできる」と不安を振り払うかのように語る。
ただ、霞が関は動揺している。内閣府幹部は「国民民主の公約を読み込んでいる」と明かし、事務次官の一人は「首相官邸の力は確実に弱まる」と言い切る。
国民など野党は、衆院選で大幅な財政支出が必要となる公約を掲げており、取り入れれば財政健全化は遠のく。岸田前首相は6月に所得税などの定額減税を始めたが、内閣支持率は回復せず、「バラマキは政権浮揚につながらない」(財務省幹部)との声も根強い。
外交にも影を落とす。岸田内閣の閣僚経験者は米国政府が与党の大敗を受け、防衛増税の先行きや中国への抑止力の低下を懸念していると耳にした。
首相は防衛増税の開始時期を年内に決める方針を示したが、野党は増税に反対だ。東アジア情勢が緊張感を増す中、防衛力強化の財源確保が揺らぎ、日本が応分の負担を担う責任を放棄したと映れば、日米関係に影響を及ぼしかねない。
首相は11月5日の米大統領選後、早期に次期大統領と会談したい考えだ。11月中旬の外遊では中国の 習近平(シージンピン) 国家主席との会談も調整するが、国内で指導力の発揮に苦しむ首相と、各国首脳がどこまで本音で向き合ってくれるのかは見通せない。
「これからの政策遂行は地獄の道となる」。政府高官はこう先行きを案じた。(この連載は政治部・海谷道隆、清永慶宏、中田征志が担当しました)
自民党の森山裕幹事長は31日、国民民主党の榛葉賀津也幹事長と国会内で会談し、石破茂首相(自民党総裁)と国民民主の玉木雄一郎代表による党首会談開催を要請した。石破政権の継続に向け、国民民主から協力を取り付ける狙い。榛葉氏は森山氏との会談後、記者団に「日程を調整する。(11月11日に予定され首相指名選挙がある)特別国会前になるだろう」と述べ、応じる考えを示した。
榛葉氏によると、森山氏から公明党の新代表が決まる11月9日以降の自国党首会談を要請された。政調会長同士の会議体設置の提案もあったが、国民民主は各党と等距離を保つ方針で「政策ごとに協議する」と拒否した。榛葉氏からは、特別国会の首相指名選挙で1回目、2回目とも玉木氏の名前を書く方針も伝えたという。
首相は、自公と国民民主が政策ごとに協力する「部分連合」を視野に入れており、11月中に策定予定の経済対策に国民民主の主張を取り入れる方針。公明党も1日に国民民主と協議する予定で、石破政権の継続を前提とした自公国の協議が本格化する。
国民民主は衆院選公約で、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」凍結解除や、年収が103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の見直しなどを掲げた。
10月27日投開票の衆院選で大敗し少数与党になった自公にとって、国民民主が首相指名選挙で立憲の野田佳彦代表の名前を書かないだけでも石破政権存続の可能性が高まる。【遠藤修平、川口峻】
衆院選の結果を受けて召集される特別国会が、11月11日に開会されることが決まった。
「特別国会では、首相指名選挙がおこなわれます。無所属議員以外は、自身が所属する党の党首や代表の名前を書いて票を投じますが、過半数を獲得する議員がいなければ決選投票になります。
自民・公明の与党が過半数に達していませんから、今回は決選投票となるでしょう。そのため、自民と立憲は、それぞれ『石破茂』『野田佳彦』と書いてもらえるよう、他党への働きかけを活発化させています」(政治担当記者)
自民党にとって「過半数割れ」は深刻だ。首相指名以外でも、今後の円滑な議会運営を考えれば、ひとりでも多くの“仲間”が必要になってくる。そうしたこともあり、石破首相(自民党総裁)は10月30日、衆院選で派閥の裏金問題を理由に非公認となった萩生田光一元政調会長、西村康稔元経済産業相、平沢勝栄元復興相、そして離党勧告処分を受けて離党した世耕弘成前参院幹事長の4氏に自民党会派入りを要請し、与党系無所属の三反園訓(さとし)氏、広瀬建氏にも声をかけ、6氏すべてが了承した。
「なかでも、離党した世耕氏の会派入りには納得していません。というのも、森山氏は二階俊博元幹事長と親密で、菅義偉(よしひで)政権誕生のときは、ふたりが尽力しました。
そのため、自民党公認で立候補した二階氏の三男・伸康氏と同じ選挙区に出馬した世耕氏の行動を『反党行為』ととらえ、『週刊文春』では政治ジャーナリスト・後藤謙次氏のインタビューに『彼の復党はありません』と断言していました。
30日、森山氏は首相官邸で記者団に『自民・無所属という“会派”に入ってもらうということです』と厳しい表情で語り、あくまで『復党ではない』ことを強調していました」(自民党関係者)
政治ジャーナリストの宮崎信行氏は「今後、世耕氏が復党するなら2025年夏の参院選前に、野党から提出されるであろう内閣不信任案のタイミングなどが考えられます」と語る。
しかし宮崎氏は、森山氏の胸中をこう推察するのだ。
「森山氏は『不足人数を埋めるだけなら、会派入りだけで十分。復党までさせる必要はない』という考えのはずです。森山氏には、国民民主党など野党とのパイプもありますから、野党の協力も視野に入れているのでしょう」
今回の措置に有権者の目は、予想どおり厳しいものがある。Xには《非公認にした意味ってあったのだろうか?》《詐欺と同じ》《党員資格停止中の議員に、会派入りしてほしいと頼む党が変という感じ》などの意見がポストされていた。
非公認議員の所属支部へ2000万円の活動費を給付していたことで、問題視されている森山氏。それに加えて、“盟友”の息子を降した世耕氏の会派入りと、心中穏やかではなさそうだ。自民党大敗の“戦犯”との声もある森山氏だが、「忸怩たる特別国会」の開幕の日は近い。
最大勢力は麻生派に、旧安倍派は第5勢力へ後退 旧森山派は選挙後も維持 自民の衆院構図
産経新聞 10/31
7日投開票された衆院選で、自民党内の衆院勢力図が変わった。麻生太郎最高顧問が会長を務める麻生派(志公会)は31人と、解散した旧派閥を含めて最大勢力となった。最大派閥だった旧安倍派は昨年12月1日時点の59人から20人に減らし、第5勢力に後退。麻生派、旧茂木派、旧岸田派の3勢力が上位を占める結果となった。旧森山派は、各派が減らす中、唯一落選者を出さなかった。
旧安倍派のうち9人は、派閥パーティー収入不記載事件に関与して自民を非公認となり、無所属で立候補した。このうち萩生田光一元政調会長、西村康稔元経済産業相を除く7人が落選した。両氏を除き当選者は20人だった。
旧二階派は昨年12月時点で31人だったが、自民非公認で当選した平沢勝栄元復興相を除く21人が当選した。同派会長だった二階俊博元幹事長、林幹雄元経済産業相が引退し、武田良太元総務相が落選するなど同派を差配した実力者が姿を消した。一方、細野豪志元環境相は自民候補で最も多い14万1千票を獲得した。
旧森山派は森山裕幹事長や坂本哲志国対委員長、城内実経済安全保障担当相ら立候補した7人全員が当選した。
石破茂首相(党総裁)を中心とする旧石破グループでは、メンバーだった門山宏哲法務副大臣、八木哲也環境副大臣らが落選した。