新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
2020年07月02日 09時52分 JST 更新 3時間前
HUFFPOST
大規模な集団感染が発生した永寿総合病院が、患者対応に当たった医師らの手記を公開。自らも感染し、死を覚悟した体験が記されていた。
國崎万智(Machi Kunizaki)
新型コロナウイルスの大規模な院内感染が発生した、東京都の永寿総合病院。7月1日の記者会見と併せて、病院は患者対応に当たった医師や看護師計3人の手記を公開した。
院内感染が瞬く間に広がり絶望感に襲われた様子や、自身が感染し死と隣り合わせになった体験がつづられていた。
■「子どもを頼む」 呼吸困難で死を覚悟
医師は、新型コロナウイルスに感染し、死を覚悟した闘病体験を記していた。
「私は永寿総合病院に医師として勤務しております。勤務中にコロナウイルス感染症に罹患しましたが、入院治療にて回復し業務を再開しております。私の場合、高熱と全身倦怠感で発症し、数日後に強い乾咳と呼吸困難が出現しました。当時、当院でもコロナウイルス感染者の受け入れを始めておりましたので、スタッフを含めて感染対策には細心の注意を払っておりました。
しかし、元々の病気で入院された方がいつの間にかコロナウイルス感染症を合併されるという状況が出現し、これは我々医療従事者でも予測困難な事態でした。私は、自らの発熱を認めた際に、症状の強さからまず間違いなくコロナウイルス感染症に罹患しただろうと思いましたが、いつどこで感染したかが分からないことに慄然としました。
入院後、安静にしていても呼吸が苦しくなり、症状の強さと酸素数値の悪さから死を覚悟致しました。
家族との面会はできず、妻には携帯電話で「死ぬかもしれない、子ども達を宜しく頼む」と伝えました。妻は大変なショックを受けただろうと思いますが、とにかく諦めずに治療を受けるよう励ましてくれました。
呼吸不全はさらに悪化し、人工呼吸管理を必要としましたが、それでも改善が得られず、ECMO(体外式人工肺)を導入することになりました。人工呼吸器使用中は鎮静剤が使われますので意識はありませんが、病状が改善して人工呼吸器が外れ、意識が回復した際には、生きていることが不思議でした。
入院期間は3週間以上に及び、退院後は、筋力の低下とコロナウイルス感染による肺障害から、日常生活を送れるようになるまで数週間のリハビリテーショ ンを必要としました。思うように体が動かず歯がゆい日々が続きましたが、当院へ通院・入院されている方とそのご家族、そして共に医療に従事する仲間がきっ と私の復帰を待ってくれているという思いから、頑張ることができました。
現在は体力が回復し、業務を再開しております。 当院での新型コロナウイルスの院内感染により、入院されていた多くの方に感染が発生し、多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを大変申し訳なく思っております。また、同感染によりお亡くなりになった方には、心よりご冥福をお祈りいたします。
外来・入院で担当しております患者様は、主治医が突然不在となったことにより、大変な不安を感じられたことと思います。当院は、通常の診療を取り戻すまでに、まだまだ時間を必要としておりますが、一日も早く安心して医療を受けていただくことができるよう尽力いたします」
■無菌室まで拡大。その場に座り込んだ
患者対応に当たった血液内科の医師は、院内感染が広がった状況を以下のように振り返った。
「3月23日に院内感染が明らかになり、3月25日に2名の同僚が、微熱があるとのことで自宅待機となり、後日にPCR陽性しかも肺炎発症で長期離脱となりました。
当初は5階病棟のみの集団患感染と考えていましたが、4月上旬には8階の無菌室にまで広がっていたことが判明し、その時は事態の重大さにその場に座り込んでしまったことを思い出します。
とは言え、未感染の方を含め50人を超える診療科の患者様の命を守るべく、 研修医共々、少ない人数で日々防護服に身を包み、回診に当たる日々が1カ月以上続きました。また、休診により通院困難となった患者様への連絡にも明け暮れていました。
当院の患者層の特徴としては、大学病院など高度医療機関から依頼され、転院 となった治療歴の長い、高度に免疫機能が低下した高齢者が多く、アビガンやその他の良いと思われる治療薬などを投入するも効果に乏しく、残念ながら最終的に血液内科だけで23名の患者様がお亡くなりになりました。
血液内科専門医が圧倒的に少ない城東地区において、深い反省を込めて、二度と院内感染を繰り返さない体制を整えつつ、患者様に安心して当院での血液疾患の治療を受けていただけるよう、一層の努力をして参る所存です」
2020年07月02日 09時59分 JST | 更新 4時間前
国内最大規模のクラスターが発生した永寿総合病院。仲間や患者が次々と感染していく中、恐怖と不安と自責の念を抱えながら医療の現場に立ち続けた看護師の手記が公開されました。
ハフポスト日本版編集部
新型コロナウイルスの大規模なクラスターが発生した永寿総合病院(東京都台東区)では、患者と職員ら計214人が感染し、入院患者43人が死亡した。
院内感染発覚から3カ月が過ぎた。病院は7月1日、医師ら3人の手記を公表。看護師の手記には、未知のウイルスに対する恐怖や感染への不安、病院がクラスターとなってしまったことへの自責の念や周辺住民への感謝がつづられている。
以下、全文を紹介する。
お詫びしながら手を合わせる日々
患者さん109名、職員83名もの感染者を出し、原疾患で闘病中の患者さん43名が亡くなられました。亡くなられた患者さんのお荷物から、これまでの生活や 大切になさっていたもの、ご家族の思いなどが感じ取られ、私たち職員だけが見送る中での旅立ちになってしまったことを、ご本人はもちろん、ご家族の皆様にもお詫びしながら手を合わせる日々でした。
感染の拡大が判明した当初は、患者さんが次々と発熱するだけでなく、日に日にスタッフにも発熱者が増え、PCR検査の結果が病院に届く20時頃から、患者さんのベッド移動やスタッフの勤務調整に追われていました。
仲間を戦地に送り出しているような気持ち
なかなか正体がつかめない未知のウィルスへの恐怖に、泣きながら防護服を着 るスタッフもいました。防護服の背中に名前を書いてあげながら、仲間を戦地に送り出しているような気持ちになりました。
家族がいる私も、自分に何かあったときにどうするかを家族に伝えました。
幼い子供を、遠くから眺めるだけで、抱きしめることができなかったスタッフ、 食事を作るために一旦は帰宅しても、できるだけ接触しないようにして、ホテルに寝泊りするひとり親のスタッフもいました。家族に反対されて退職を希望するスタッフも出てきましたので、様々な事情を抱えながら、永寿が好きで働き続けてくれるこの人たちを何とかして守らなければ、今の業務を続けていくことはできないと強く感じました。
涙を拭きながら非常口を開けた
4 月 4 日、「頑張れ、永寿病院 地元有志一同」の横断幕が目に入り、「まだ私たちはここにいてもいいんだ」と思えました。涙を拭きながら非常口を開けたのを覚えています。支えて下さった地元の皆様には、本当に感謝しかありません
私たちは、今回のウィルス感染症で多くのことを学びました。
人の本質は、困難な状況に直面するとより露わになることを実感しました。困 難な状況であるからこそ、思いやりのある行動や、人を優しく包むような言葉を宝物のように感じました。育児休業中のスタッフが、「メディアで医療従事者が感謝されていますが、私はまだ何もできていない」と話してくれたときは、「その気持ちこそが宝物ですよ」と答えました。
院内感染発生の他院に救援「お役に立てた」
少し前に、東京都看護協会から、院内感染が起きた他院への看護師の派遣を依 頼されました。感染が拡大した頃の自分たちを思い出し、何とかしてあげたいと ころでしたが、精神科病棟への派遣なので、無理には頼めないなと思っていました。しかし、4人の看護師が志願して11週間の救援に参加してくれました。先週こちらに戻ってきて、「お役に立てるところがありましたので、大変でしたが行ってよかったです」と報告してくれました。
これまで支えて下さった地域の皆様のため、支えてくれた家族やスタッフのた め、地域の中核病院としての機能を再生させていかなければなりません。私たちはまだその途上にいますが、何よりも安心して医療が受けられる場を提供することが重要であると考えています。地域の皆様、関連する医療機関の皆様におかれましては、今後とも、より一層のご指導とご支援をお願いいたします。
新型コロナウイルスの感染対策に必要な防護具の在庫が10個以下の小規模診療所はおよそ9割となっている。
中村 かさね (Kasane Nakamura)
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、東京都内の小規模診療所にはマスクなどの防護具の在庫がほとんどないことがわかった。災害時の医療支援などを行うNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」が4月にアンケート調査を行った。
都内529カ所を対象とした調査(有効回答数130)では、感染症対策に必要な防護具の在庫について質問した。
在庫が「全くない」と答えた割合は、「N95マスク」が67.3%、「アイソレーションガウン」が69%、「フェイスシールド」が70.9%となった。約7割の小規模診療所が感染防止に必要な防護具を持たずに日々の診療に当たっている実態が浮き彫りになった
在庫数が10個以下の小規模診療所は、それぞれ「N95マスク」で88.7%、「アイソレーションガウン」で86%、「フェイスシールド」で94.4%となった。通常なら使い捨てで使用するはずのマスクやアイソレーションガウンは、洗濯するなどしながら複数回使用している状況だという。
この他にも、現場からは消毒液や手袋の不足を訴える声も上がっている。感染が疑われる患者に対しても丸腰で診察しなくてはいけないことへの不安も強い。
「抗体検査をしてほしい」「誰が感染者か、全く不明。どう対応するのが正しいか分からない」など、PCR検査を受けにくいために不安や負担が増している状況も浮き彫りとなっている。