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「どこで収入立てればいいの」1トン以上の生乳を“廃棄” 北海道の酪農が“最悪の事態”に 2023/02/12

2023年02月12日 20時36分02秒 | 時事問題(日本)

「どこで収入立てればいいの」1トン以上の生乳を“廃棄” 北海道の酪農が“最悪の事態”に|TBS NEWS DIG

シリーズ「現場から、」です。乳製品の原料となる、搾ったばかりの生乳が一部の農家で廃棄されています。国内の6割近くの生乳を生産する北海道がいま、最悪の事態に直面しています。

 

 

近年よく話題になる生乳の大量廃棄の問題。「牛乳を飲んでください」という消費の呼びかけもありますが、泣く泣く廃棄するケースも。さらに穀物や燃料高騰で酪農経営は危機的な状況に陥っています。なぜ廃棄しなければならないのか――。都内でミルクスタンドを経営し、各地の牧場を訪ねている著者が、その理由を解説します。(木村充慶)

生乳の廃棄問題とは

牛乳のもととなる「生乳」の廃棄問題は、コロナ禍になってから問題になり始めました。

搾りたての「生乳」は、牛乳やバター・クリーム・チーズ、など様々な乳製品に加工されます。

しかし、コロナ禍で学校が閉鎖されて給食での供給がストップしたり、緊急事態宣言での飲食控えなどもあり、消費が激減し、大量に余ってしまう事態に陥りました。

2021年末には5000トンの生乳が破棄される可能性があるとして、政府を中心に消費喚起の取り組みも行われました。

需要が落ち込む夏休みの時期、年末年始や年度末によく問題になっています。

政府や酪農団体、乳業メーカーなどがそのたび、「牛乳を飲みましょう」「牛乳や乳製品を料理に使いましょう」といったキャンペーンを立ち上げています。ニュースを目にした方も多いでしょう。

 

「生産と消費」の調整が難しい

生乳は傷みやすく、生き物の牛から生産するため、「生産と消費」の調整がそもそもとても難しいものです。

だからこそ、長年にわたって政府を中心に組合・業界団体・乳業メーカーが一体となって需給の調整をしていました。

2014年ごろ、深刻な「バター不足」が大問題となり、その影響から、政府は国内の生産量を上げようと、牧場の大規模化を推進しました。

その結果、国内の生乳の生産量の半分近くを占める北海道では「メガファーム」と呼ばれる大規模牧場が増えました。

そして2019年ごろから生産量が上がり、乳製品が安定して供給されるようになりました。

 

「牛は生き物」生産を減らすのは難しい

その矢先、新型コロナが蔓延。休校・飲食店の休業や外食控えなどにより、乳製品の消費が激減し、大量に余ってしまいました。

しかし、工場とは異なり、生き物である牛による生産のため、消費状況にあわせてすぐに減らすのが難しいのです。

牛の赤ちゃんは2年半ほどかけて成長して、子牛を産むことで生乳を出すようになります。

搾乳期間は人間と同じくらいの10ヶ月程度。その間に再び妊娠し、次の子牛を産めるようにします。

乳が出切った後は、数ヶ月ほど休んだ上で、また出産。この出産を繰り返しながら、乳を出してくれています。

全国的には平均3回ほど妊娠して生乳を出し、乳が出づらくなってその役目を終えたら、最後は人間が食べるお肉になります。

牛が生まれてから役目を終えるまで、大体5年から6年です。すぐに牛を減らすこともできません。

また、生乳は絶えず作り続けられてしまうので、搾らないと病気になってしまいます。だから生産をすぐに減らすことはできないのです。

 

やむを得ず、早く食肉処理場へ出すことも

もし、牛乳の消費量が増えなかったり、政府が生乳を減らす計画を立てたりしたら、生乳を廃棄するしかありません。

しかしそれでは酪農家にお金は入ってきません。牛たちのエサや暖房費など、経費ばかりがかかり続けてしまいます。

そこで、まだ生乳を出せる乳牛をやむを得ず早く食肉処理場に出す酪農家もいます。飼料や燃料の高騰で、酪農家の経営は危機的状況に陥っているからです。

手塩にかけて育ててきた牛から、ようやく搾れた生乳を破棄するだけでもつらい。さらに牛そのものまでも淘汰しなければいけない現状は、酪農家にとってはあまりにもつらいことだと思います。

 

日本の酪農の構造

牛は暑さに弱く寒さに強い生き物で、夏は生乳の生産が少なく、冬は増えます。

一方で、消費はその逆。夏はたくさん飲まれるので消費量が大きく、寒い冬は消費が落ち込みます。

このギャップを埋めるため、夏に生産量の基準を合わせつつ、生乳が余る冬に、比較的消費期限が長いバターや脱脂乳・チーズなどの乳製品を製造しています。

できた乳製品は乳業メーカーなどの巨大な倉庫に保管。消費の状況に合わせ、安定して供給できるようにしています。

また生産の半分近くを占める北海道から、消費の大半を占める東京といった都市部に乳製品を送って、全国の消費バランスも調整しています。

しかし牛乳などの飲用と、バター・チーズ、などの加工用では販売価格が大きく異なります。

地域により異なりますが、飲用は約120円ほど、加工用は約75円ほどです。加工品は日持ちするので、輸入品の存在が影響しています。

日本は海外と比べて、土地が狭くて大規模化が難しい、政府の補助が少ないといった理由で、牛の餌にかかる費用が高いといわれています。

安い輸入加工品と価格で負けてしまう……。そうならないよう、加工品用の生乳の価格を安くして、乳業メーカーが安く乳製品を作れるようにしているのです。

加工用として売ると、かかった経費を下回って赤字になってしまうケースも。特に加工用の生乳を多く生産している北海道では、売り上げが大きく下がってしまいます。

そのため、政府は販売価格に「工原料乳生産者補給金(補給金)」という補てんをして酪農家の売り上げを安定させています。

 

減産の理由、倉庫もいっぱい

新型コロナで消費が落ち込み、生乳が余り始めたことがニュースになると、「バターやチーズにすればいいのでは?」というコメントや疑問をよく見かけました。

たしかに当初は、バターや脱脂粉乳を大量に製造し、倉庫に保管していました。しかしそれも徐々にいっぱいになってしまったのが現在の状況なのです。

倉庫の空きがなく、生乳を減産する、または廃棄するしかなくなってしまったのです。

「生活困窮者や途上国に乳製品を支援すればいいのでは」という意見もありましたが、大量の乳製品を支援に使うには、それ相応の仕組みが必要です。

それを構築するのに膨大な時間もかかりますし、毎年一定量が余るかどうか分からない中で仕組みを作っても、安定した支援にならない可能性もあります。

途上国への支援に使う場合、本来その国にビジネスとして乳製品を輸出したいと思っていた国との関係が悪くなる可能性もあります。

鮮やかな打開策はそう簡単には見出せません。難しい状況の中で、生乳が余り続けてしまっているのです。

次回は、酪農家の経営問題を解説していきます。

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