「死ぬ権利よりも生きる権利守る社会に」 ALSの舩後参院議員、事件受け
毎日新聞
全身の筋力が徐々に低下する難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を発症した京都市の女性(51)に頼まれ、薬物を投与して殺害したとして、京都府警は23日、嘱託殺人の疑いで、宮城県名取市でクリニックを営む医師、大久保愉一(よしかず)(42)=仙台市=と東京都の医師、山本直樹(43)の両容疑者を逮捕した。自身もALSを患うれいわ新選組の舩後靖彦参院議員は23日、コメントを公表した。
コメントは次のとおり。
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事件の報道を見聞きし、驚いています。ただ、現時点では正確な事実関係がわかりませんので、事件の内容についてのコメントは控えたいと思います。
報道を受け、インターネット上などで、「自分だったら同じように考える」「安楽死を法的に認めてほしい」「苦しみながら生かされるのは本当につらいと思う」というような反応が出ていますが、人工呼吸器をつけ、ALSという進行性難病とともに生きている当事者の立場から、強い懸念を抱いております。なぜなら、こうした考え方が、難病患者や重度障害者に「生きたい」と言いにくくさせ、当事者を生きづらくさせる社会的圧力が形成していくことを危惧するからです。
私も、ALSを宣告された当初は、できないことが段々と増えていき、全介助で生きるということがどうしても受け入れられず、「死にたい、死にたい」と2年もの間、思っていました。しかし、患者同士が支えあうピアサポートなどを通じ、自分の経験が他の患者さんたちの役に立つことを知りました。死に直面して自分の使命を知り、人工呼吸器をつけて生きることを決心したのです。その時、呼吸器装着を選ばなければ、今の私はなかったのです。
「死ぬ権利」よりも、「生きる権利」を守る社会にしていくことが、何よりも大切です。どんなに障害が重くても、重篤な病でも、自らの人生を生きたいと思える社会をつくることが、ALSの国会議員としての私の使命と確信しています。
2020年7月23日
参議院議員 舩後靖彦