菅首相が緊急事態宣言の再発令を検討する考えを表明したことを巡り、与党内では再発令はやむを得ないとの受け止めが広がった。「伝家の宝刀」と言われる宣言の発令には、「もう後がない」と危機感も高まっている。
「初めてのことで思ったようにいかなかったところもある。速やかに政策を是正するのは、命にかかわる問題だから大事だ」
与党内では、新型コロナウイルスの流行が深刻化する中、再発令を支持する声が大半だ。自民党の世耕弘成参院幹事長は「自粛を呼びかけても感染者が減らない中で、ぎりぎりのタイミングだ」と評価した。
ただ、首相の対応には与党から不満も出ている。小池百合子東京都知事らから再発令の検討を要請された2日後に表明する展開となったことに対し、自民党幹部は「小池氏のパフォーマンスに押し切られたように見える」と指摘。内閣府幹部も「突き上げられた形になってしまった。失敗だ」と語る。
閣僚経験者は「本来なら首相が率先して再発令を決断すべきだった。ただでさえ、国の対応が遅いと言われているのに、先手でやらなければ、内閣支持率は上がらない」とぼやく。
コロナの感染再拡大に加え、安倍前首相や吉川貴盛・元農相を巡る「政治とカネ」の問題で内閣支持率は急落している。18日召集予定の通常国会では、野党の攻勢は必至で、自民党内からは「このままでは菅内閣は持たなくなる」との声も漏れている。
野党「遅きに失したが出さないより何倍もマシ」
野党は、緊急事態宣言の再発令には理解を示しつつも、政府の対応の遅れを批判した。
立憲民主党の枝野代表は4日、再発令の検討について、「遅きに失したことは残念だが、出さないよりは何倍もマシで、そのことは評価したい」と国会内で記者団に語った。その上で、「緊急事態宣言に伴う損失補償をセットで打ち出すべきだ」と強調した。
安住淳国会対策委員長も、「政府が主導的に緊急事態宣言を先手、先手で出すべきだった。都道府県知事から促されるようにして後手、後手に回ったのは残念だ」と批判した。
共産党の志位委員長は、東京都内で記者団に「再発令はやむを得ないが、菅政権の無為無策がこの事態を招いた。政治責任は極めて重い」と指摘。「休業要請や時短要請には十分な補償が必要だ」と訴えた。
日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で、「政府の対応はかなり後手に回った」と指摘した。