天皇陛下の即位に伴う儀式は大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀が終わり、5月に始まった関連行事はひと区切りがついた。今後焦点となるのは、皇位継承という避けては通れない課題だろう。

 皇位継承を巡っては、深刻な状況にもかかわらず、政府は検討を先延ばしにしてきた。ここにきて政府内では、さらなる先送り案が浮上している。秋篠宮さまが皇嗣(こうし)になったことを国内外に宣言される来年4月19日の儀式「立皇嗣(りっこうし)の礼」以降に議論に入るという案である。

 また、有識者が主体となって議論するのではなく、政府側が必要に応じて有識者からヒアリングする形式も模索されている。それでは水面下で事が運びかねない。

 課題のこれ以上の放置も閉ざされた議論も看過するわけにはいくまい。政府は一刻も早く、開かれた場で議論を始めるべきだ。

 衆参両院は2017年6月に成立した退位特例法に関する付帯決議で、皇位継承について「速やかな検討」を政府に求めている。議論の先送りは、国会の意思をないがしろにするに等しい。

 皇室典範は、皇位は父方が天皇の血筋を引く男系の男子が継承すると定める。皇位継承の資格者は現在、継承順に皇嗣の秋篠宮さま、長男悠仁さま、上皇さまの弟常陸宮さまの3人に限られる。

 50代の秋篠宮さま、80代の常陸宮さまの年齢を考慮すると、「皇統の維持」の責任を悠仁さま1人が背負っている形だ。現行制度のままなら将来、悠仁さまに男子が誕生するのを期待するほかない。

 皇室の先細りを回避するためには、皇位継承を女性・女系天皇に拡大することや、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の創設などが考えられる。

 実際、小泉純一郎首相時の05年、有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書をまとめている。野田佳彦内閣では12年に女性宮家の創設を柱とする論点を整理した。しかし、06年に悠仁さまが誕生したこともあり、いずれも後継の安倍晋三政権によって議論は棚上げとなった。

 女性天皇は過去10代8人いるが、母方が天皇の血筋を引く女系天皇は前例がない。仮に皇室典範が改正され、天皇陛下の長女愛子さまが即位した場合、男系の女性天皇となる。愛子さまが民間男性と結婚し、生まれた子どもが将来即位すれば、性別に関係なく女系天皇となる。

 安倍首相は、女性・女系天皇には慎重な立場とされる。一方で、共同通信の世論調査によると、女性天皇に82%、女系天皇に70%が賛成している。伝統に固執するだけでなく、新しい時代に即した皇室や天皇の在り方が検討されてもいい。

 政府にはもちろん、国会にも党派、思想信条を超えた幅広い観点からの積極的な議論を求めたい。