東京新聞 2018年11月28日付社説
「入管法が通過 国会は責任放棄するな」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112802000185.html
出入国管理法改正案が衆院を通過した。 首相の出張で与党が審議を急いだためだ。
重要法案ならば国会延長の選択もあろう。
受け入れ外国人の人権がかかる問題に真剣さが足りない。
野党が批判し、反対する法案には、議論を尽くさねばならない。
民主主義の基本的なルールであり、立法府の責任だ。
だが、入管法改正案については、11月26日までにわずか15時間15分しか審議時間を使わなかった。
自民党の石破茂元幹事長は今月26日、
「成立させるだけなら圧倒的多数でできる。だが、それでは国会の意味がない」との趣旨の発言をしている。
法案審議や委員会の運営が強引にならないようにくぎを刺す意図だろう。
驚くべきは、与党が急いだ理由である。
安倍晋三首相は29日に日本を出発し、アルゼンチンで開かれる二十カ国・地域(G20)首脳会議に出席する。
この日程に合わせたというが、これはおかしい。
国会は首相の下請け機関ではないのだから。
そもそも法案の出発点は今年2月、経済財政諮問会議に首相が検討を指示したことだ。
6月には新たな在留資格の創設を盛り込んだ骨太方針を閣議決定した。
法案の閣議決定は今月2日。 衆院での審議入りは13日である。
あまりの急ぎ足ぶりがわかる。
外国人の受け入れ態勢など重要な事柄を考えれば、じっくり腰を据えた議論が必要なのに、
たった15時間余で打ち切り、採決に運ぶ手法は乱暴すぎる。
首相の出張予定があったら、帰国してから審議を再開すればよい。
国会延長も可能なはずだ。
「制度見直しは2年後に前倒し」
「外国人労働者の大都市圏集中を防ぐ」
「マイナンバー(社会保障と税の共通番号)などを活用した在留管理」などの修正もされた。
自民、公明の与党と日本維新の会の合意だが、強行イメージを弱めるためではないか。
特定秘密保護法(2013年)では41時間50分、
安全保障関連法(2015年)では108時間58分、
「共謀罪」法(2017年)では34時間10を衆院審議に要した。
時間で計れば、その半分の意識しかないのか。
高度な専門人材に限った従来の政策から転換する法案だ。
2019年度から5年間に計34万人の外国人労働者の受け入れを見込む。
日本の未来図にも影響する。 参院では充実した議論を望みたい。
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東京新聞 2018年11月28日付社説
「消費税10%対策 お金持ちに有利になる」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112802000184.html
政府与党が検討する消費税増税時の対策は来年の統一地方選や参院選を意識した単なるバラマキではないのか。増税の意味を消失させ、欠陥である逆進性を増幅し、将来世代まで愚弄(ぐろう)するものだ。
効果が期待できない対策にまで巨額の税金を投入するなら、何のための増税か。
怒りが込み上げる人も少なくないだろう。
商品券配布やポイント還元といった痛税感の目くらまし策のことだ。
さらに防災・減災に名を借りた公共投資の拡大も大いに疑問があるし、
この機に乗じてキャッシュレス化やマイナンバーカードの普及促進に税金を投じるのでは「何でもありか」との批判は免れまい。
日銀の試算では今回の増税による負担増は年5兆6000億円だが、
軽減税率や教育無償化などで実質的には2兆2000億円といわれる。
それに対し、この対策の規模はそれをはるかに上回ろう。
増税の本来の意味は、将来世代への負担先送りを減らすためだったが、逆につけ回しを増やすものだ。
過去の増税時などに繰り返されたプレミアム付き商品券や定額給付金、地域振興券は、
単に日々の買い物代の代用にされ、消費を持ち直させる効果は期待外れに終わったことを忘れたのか。
相変わらず金券やポイントで一時的にでも潤えば、国民は喜んで財布のひもを緩めるとでも思っているのだろうか。
国民をばかにするにも程がある。
今回新たに出てきたポイント還元策は、クレジットカードや電子マネーなど現金以外で買い物をした場合に、
金額の5%分をポイントとして消費者に戻すという。
つまり今よりも減税になる。
現金しか使わない人、あるいはさまざまな理由でカード類を持たない人、持てない人が恩恵を受けられないのは不公平だ。
カード類を多用するお金持ちに有利になり、格差を拡大させかねない。
低所得者家庭に発行を限るというプレミアム付き商品券も、慌てて2歳児以下の子がいる家庭を追加したが、
利用する人の尊厳を十分考慮したのだろうか。
現金しか扱わない零細商店にとっても恩恵はなく、あまりに配慮を欠いている。
増税の影響を抑えるのに躍起になるよりもやるべきことがある。
富裕層に有利な金融所得課税の増税にいつまでも手を付けないのはおかしい。
6年近くのアベノミクスは格差を拡大させたが、今回の対策はそれを一層強めるだろう。
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今日の新聞の社説を見ているだけでも、「この国民にしてこの政府」を痛感してならない。
もとは前回の総選挙で「誰が議員になっても同じ」とか
「政治なんてわかんないから、適当に自民党に投票すりゃあなんとかなるべ」とか投げやりに考えていないか?
そんな怠慢な考えが、有権者が落とした雪玉のように転がり落ちながら肥大化して、
坂の下を歩く人々や人々の暮らしを潰してゆくのだ。
自分はクレジットカードも持つが、やはり日本には現金精算が出来ないとダメだ。
9月の北海道地震を思い出して欲しい。
あの時はほぼ全道が停電になり、当然クレジットカードもスマホ決済も不可能だった。
非正規雇用だったり高齢者になると、欲しくてもクレジットカードさえも持てなくなる人が多くいるはずだ。
「こぼれ落ちる人」を少なくするのが政治の役目ではないか。
「入管法が通過 国会は責任放棄するな」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112802000185.html
出入国管理法改正案が衆院を通過した。 首相の出張で与党が審議を急いだためだ。
重要法案ならば国会延長の選択もあろう。
受け入れ外国人の人権がかかる問題に真剣さが足りない。
野党が批判し、反対する法案には、議論を尽くさねばならない。
民主主義の基本的なルールであり、立法府の責任だ。
だが、入管法改正案については、11月26日までにわずか15時間15分しか審議時間を使わなかった。
自民党の石破茂元幹事長は今月26日、
「成立させるだけなら圧倒的多数でできる。だが、それでは国会の意味がない」との趣旨の発言をしている。
法案審議や委員会の運営が強引にならないようにくぎを刺す意図だろう。
驚くべきは、与党が急いだ理由である。
安倍晋三首相は29日に日本を出発し、アルゼンチンで開かれる二十カ国・地域(G20)首脳会議に出席する。
この日程に合わせたというが、これはおかしい。
国会は首相の下請け機関ではないのだから。
そもそも法案の出発点は今年2月、経済財政諮問会議に首相が検討を指示したことだ。
6月には新たな在留資格の創設を盛り込んだ骨太方針を閣議決定した。
法案の閣議決定は今月2日。 衆院での審議入りは13日である。
あまりの急ぎ足ぶりがわかる。
外国人の受け入れ態勢など重要な事柄を考えれば、じっくり腰を据えた議論が必要なのに、
たった15時間余で打ち切り、採決に運ぶ手法は乱暴すぎる。
首相の出張予定があったら、帰国してから審議を再開すればよい。
国会延長も可能なはずだ。
「制度見直しは2年後に前倒し」
「外国人労働者の大都市圏集中を防ぐ」
「マイナンバー(社会保障と税の共通番号)などを活用した在留管理」などの修正もされた。
自民、公明の与党と日本維新の会の合意だが、強行イメージを弱めるためではないか。
特定秘密保護法(2013年)では41時間50分、
安全保障関連法(2015年)では108時間58分、
「共謀罪」法(2017年)では34時間10を衆院審議に要した。
時間で計れば、その半分の意識しかないのか。
高度な専門人材に限った従来の政策から転換する法案だ。
2019年度から5年間に計34万人の外国人労働者の受け入れを見込む。
日本の未来図にも影響する。 参院では充実した議論を望みたい。
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東京新聞 2018年11月28日付社説
「消費税10%対策 お金持ちに有利になる」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112802000184.html
政府与党が検討する消費税増税時の対策は来年の統一地方選や参院選を意識した単なるバラマキではないのか。増税の意味を消失させ、欠陥である逆進性を増幅し、将来世代まで愚弄(ぐろう)するものだ。
効果が期待できない対策にまで巨額の税金を投入するなら、何のための増税か。
怒りが込み上げる人も少なくないだろう。
商品券配布やポイント還元といった痛税感の目くらまし策のことだ。
さらに防災・減災に名を借りた公共投資の拡大も大いに疑問があるし、
この機に乗じてキャッシュレス化やマイナンバーカードの普及促進に税金を投じるのでは「何でもありか」との批判は免れまい。
日銀の試算では今回の増税による負担増は年5兆6000億円だが、
軽減税率や教育無償化などで実質的には2兆2000億円といわれる。
それに対し、この対策の規模はそれをはるかに上回ろう。
増税の本来の意味は、将来世代への負担先送りを減らすためだったが、逆につけ回しを増やすものだ。
過去の増税時などに繰り返されたプレミアム付き商品券や定額給付金、地域振興券は、
単に日々の買い物代の代用にされ、消費を持ち直させる効果は期待外れに終わったことを忘れたのか。
相変わらず金券やポイントで一時的にでも潤えば、国民は喜んで財布のひもを緩めるとでも思っているのだろうか。
国民をばかにするにも程がある。
今回新たに出てきたポイント還元策は、クレジットカードや電子マネーなど現金以外で買い物をした場合に、
金額の5%分をポイントとして消費者に戻すという。
つまり今よりも減税になる。
現金しか使わない人、あるいはさまざまな理由でカード類を持たない人、持てない人が恩恵を受けられないのは不公平だ。
カード類を多用するお金持ちに有利になり、格差を拡大させかねない。
低所得者家庭に発行を限るというプレミアム付き商品券も、慌てて2歳児以下の子がいる家庭を追加したが、
利用する人の尊厳を十分考慮したのだろうか。
現金しか扱わない零細商店にとっても恩恵はなく、あまりに配慮を欠いている。
増税の影響を抑えるのに躍起になるよりもやるべきことがある。
富裕層に有利な金融所得課税の増税にいつまでも手を付けないのはおかしい。
6年近くのアベノミクスは格差を拡大させたが、今回の対策はそれを一層強めるだろう。
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今日の新聞の社説を見ているだけでも、「この国民にしてこの政府」を痛感してならない。
もとは前回の総選挙で「誰が議員になっても同じ」とか
「政治なんてわかんないから、適当に自民党に投票すりゃあなんとかなるべ」とか投げやりに考えていないか?
そんな怠慢な考えが、有権者が落とした雪玉のように転がり落ちながら肥大化して、
坂の下を歩く人々や人々の暮らしを潰してゆくのだ。
自分はクレジットカードも持つが、やはり日本には現金精算が出来ないとダメだ。
9月の北海道地震を思い出して欲しい。
あの時はほぼ全道が停電になり、当然クレジットカードもスマホ決済も不可能だった。
非正規雇用だったり高齢者になると、欲しくてもクレジットカードさえも持てなくなる人が多くいるはずだ。
「こぼれ落ちる人」を少なくするのが政治の役目ではないか。