往路:5月26日(金) 八王子→神田 :中央線快速 神田 →上野 :山手線 上野 →金沢 :急行能登 金沢 →新大阪:サンダーバード6号 新大阪→天王寺:はるか15号 運賃:周遊きっぷ京阪神ゾーン
5日前、途中下車した八王子から、再び、鉄路の旅人となる。
今宵の宿は、夜行急行能登である。
急行能登は、上野発23時33分なので、先週、先々週とは違って、金曜日の夕方に、時計を気にしてソワソワする必要は無い。
それをいいことに、調子に乗って20時過ぎまで働いていたものだから、帰郷準備が大幅に遅れてしまい、上野到着は23時20分と、かなり際どくなってしまった。中央線や山手線にトラブルが無かったから良かったようなものの、あまり、誉められたものではない。
急ぎ足で、上野駅16番ホームに向かうが、能登は、まだ車内整備の最中である。
先頭付近では、小生同様、この列車の姿をカメラ付き携帯に収めようとする人達がいる。特に鉄っちゃんといった風貌の人種ではない。どう見ても普通のサラリーマンであり、ボンネット特急に郷愁を感じる年代の人々である。
人生の折り返し地点を過ぎ、能登の姿に自分の若かりし頃をダブらせているのだろう。小生には、その気持ちがよくわかる。能登の先頭部分は、積年の運行のため荒れており、見るから痛々しい。あたかも、自らの姿を見ているようである。
出発5分前になって、ようやく扉が開き、乗車開始となる。今回は、最も空いていると思われる3号車喫煙席を指定している。案の定、上野からの乗客は約10名。これなら、ボックスを作って悠々眠ることができそうである。
ほぼ定刻に上野を出発。
鞄の中の荷物を放り出して、就寝準備に余念がない。停車駅と到着時刻の案内も上の空である。とりあえず、夜景を眺めながら睡眠薬(アルコール)を服用する。
そして大宮到着。
これだけ空いているのにも関わらず、よりによって、真後におっさん2人組が乗ってきて、若い女性のように、しゃべりまくる。大声ではないのだが、耳元でしゃべり続けるものだから気分が悪い。
しばらくすると、遅い検札が始まった。きっぷを見せるついでに、後ろの乗客がうるさいので、注意してや!!と、関西弁のイントネーションで、聞こえよがしに車掌に申告する。後ろのオッサンコンビは、やはり、指定券を持っておらず、車掌にボロボロに言われて、デッキに消えていった。
20代とおぼしき若い車掌であるが、なかなかしっかりしている。
大宮を過ぎても、前の席が空いているので、早速座席を回転させ寝床を作る。前回乗車した禁煙席とは違って、座面がしっかりしており、座り心地、寝心地は悪くない。十分なスペースを占有できるので、簡易スーパーシートと言っても良いくらいである。
空気枕をふくらませ、最適ポジションを探索する。回りにだれも居ないので、人目を気にせず体を横たえることができる。
耳栓、アイマスクを身に纏い、足を投げ出す。ボックス間隔は前回の調査で判明したように極狭なのだが、さすがに仰向けに寝ると腰が落ちてしまう。不本意なのだが、横向けに寝ざるを得ない。
列車は、間もなく、高崎を出発し、お休み放送の後に減灯される。
上越線の心地よい線路のリズムを聴きながら、意識が遠のく...はずであった。久々の夜行列車の旅が嬉しくて、興奮気味である。眠れない。
列車は無情にも、水上まで来てしまった。東海道線では、目を閉じていても体内GPSが働き、居場所が分かってしまうのであるが、上越線でも、そうなってしまうのか?
清水トンネルを抜ける。まもなく、長岡に到着。逆行して出発。全部、分かってしまう。
どうやら、この前のサンライズ出雲の時以来、夜行列車不眠症を患ったらしい。ならば、いっそのこと、起きて、夜景でも見ながら過ごしても良かったのだが、そこまで、開き直ることもできない。あと一越で眠れそうな感じがするからである。
とうとう、最初の停車駅、直江津に到着。短時間停車の後、すぐに発車。次は糸魚川である。ここまできても眠れない。重度の不眠症と思われる。
さすがに、糸魚川を過ぎると、眠れもしないのに、体を横たえているのがアホらしくなってきて、アイマスクを外し、一度起きあがる。
するとどうか。空はすでに白んでおり、眼下に青い海が広がっている。偶然にも、列車は眺望の名所、親不知を走行中であった。筆舌尽くしがたい風景が広がっている。
しばし、呆然と見とれるが、無情にも山に阻まれトンネルに入ってしまう。不覚にも、一枚の写真も残せずじまいである。
しかし、安堵感からか、ここで、ようやく睡魔がやってきた。その後、富山のおはよう放送と、金沢到着の案内放送以外は記憶に残っていない。恐らく、熟睡していたのであろう。
終点金沢に到着。
重たい足取りで、列車から降りる。しかし、懲りてはいない。なんとか夜行列車不眠症を治して、再びこの鉄路を辿りたいものだ。
トイレを済ませ、2番ホームへと向かう。そして、6時45分開店の駅そばを試す。前回訪問時からリニューアルされており、コンビニと一緒になっている。ここでは、天ぷらソバ¥450を注文。立ち食いスペースはさほど広くはないが、味は十分満足できる。
腹を満たして、乗り継ぎのサンダーバード6号を待つ。本日は自由席の待ち行列も長くはない。しかし、人気の特急であるには間違いないため、早めに指定席を押さえておくことが肝心である。
サンダーバードは金沢で増結後、定刻に発車する。
やはり、座り心地は良い。在来線特急普通席ではピカ一だろう。さすがJR西日本&近畿車輛である。リクライニングを倒し、しばらくは、北陸の車窓を眺めて過ごす。
金沢では、空席が目立っていたが、意外なことに福井で、沢山の乗客が乗り込んできて、隣席も埋まってしまった。前回同様、乗客の平均年齢は高く、隣は小柄な老婦人である。車内販売の弁当が食指を誘ったが、食べ過ぎは良くないので我慢する。
北陸トンネルを高速で通り抜け、敦賀を通過し、ループ線を渡る。新疋田で寝台特急日本海を追い越して、湖西線に入った頃、再び、寝入ってしまった。
気がつくと、京都到着。例によって、多くの乗客がここで降りる。
京都を出発すると、サンダーバードは再び快走し、間もなく新大阪に到着。今回は、ここで降りて、関空特急はるかに乗り換えて、天王寺へと向かう。
せっかくの、周遊きっぷだから、このときばかりはと、特急に乗ろうとする。ある意味、貧乏根性である。
どういう訳か、団体客が自由席乗車位置に長い列をなしていたが、なんとか、窓側に着席できた。はるかが満席になるのは珍しい。
久々の大阪の風景を貨物線から眺めて、天王寺到着。事情があって、みどりの窓口に寄り道した後、阪和線で帰宅する。
夜行列車不眠症のおかげで、またまた、眠れぬ一夜を過ごしてしまった。
若い頃から、寝台や夜行バスには慣れており、初めての宿でも大抵は熟睡できるはずであった。また単身赴任開始後も、数々の夜行をこなしてきた。たまに眠れぬ夜もあったけれども、頻度は低い。普段の生活でも、寝付きは良い方である。何も問題はない。
そして、今回、急行能登のボックス席は思いの外、抜群だった。
にも関わらず眠れなかったのはなぜか? 眠っている間に移動する事で、時間とお金の両方を節約してきた小生にとって、悩みは実に深刻である。