中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

迎え梅雨—花菖蒲と山紫陽花

2021年05月31日 | こぼれ話
連作半巾帯10本が週末に織り上がり、取り敢えずホッとしました。(*‘∀‘)
まだ、たて糸の残りを織らなければなりませんし、反物の湯通し、伸子仕上げもしますので、終わったわけではないのですが、昨日は近くの薬師池公園まで花菖蒲を見に行ってきました。

まだ東京は梅雨入り宣言されてませんが、もう梅雨のようですね。
俳句の季語に“迎え梅雨”という美しい言葉がありますが、まさにその状態ですね。

丁度見頃を迎えたばかりといった感じで、本当に美しいものでした。
梅雨空のグレーと白から紫にかけてのグラデーションはよく合います。


ところどころに黄色い品種もあり、アクセントになっています。
ピント合ってませんが、、(^-^;


また、山紫陽花も見頃で、種類もいろいろでした。


特にトップの写真の山紫陽花(清澄沢)がなんとも可憐で心惹かれました。
途中雨が降り出して濡れた風情もいいです。



さて、急に花より団子みたいですが、、(^^ゞ
公園内に茶屋があって、そこでクリームあんみつを食べてきました。
町田市立公園内ですので、そんなにお味の期待はなかったのですが、とてもおいしかったです。フルーツも餡もしっかりした味わいでした。

緑に囲まれた戸外に縁台がありそこで景色を見渡しながら楽しみました。
昨日は誕生日でもあり、ささやかなお祝いとなりました。

新緑の季節に生まれて、“みどり”という名を付けてくれた母と、植物を使って染織の仕事をさせてもらえることに、こころから感謝しています。

7/4に鶴川のポプリホールで半巾帯の完成お披露目&解説の会をいたします。
また、詳細はブログでまたお知らせいたします。





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再読 [作品集「樹の滴」ー染め・織り・着る] その 3

2021年05月21日 | 作品集『樹の滴』
半巾帯プロジェクト10本目がようやく前柄に差しかかってきましたが、まだ終わりません、、。
最後の2本は1本が一柄のタイプで、結びの違いなども考慮しながら柄を考えていくことは、名古屋帯を10本分織るより何十倍も難しいです。
しかし、あと少し、集中力を保ち今月中には何とか終わらせたいと思っています。。

さて、作品集『樹の滴』再読、3回目です。

作品集の裏表紙とプロフィール写真に使ったこの中藍の着物は私が一人で織り始めた初期の作品です。
藍染めも、当時はまだ紺屋さんがあり、2~3箇所へ藍染めを頼んでいました。
浅葱色、甕覗き等を何反か注文もあり織りましたが、やはり薄い藍は褪色があり、お客様への販売はしないことにして、自分の着物にしました。まだ30代半ばとはいえ、未婚の私には地味な雰囲気で、母は「娘がそんな地味なものを…」と賛成してはくれませんでしたが、私は普段着らしいこの着物は紬の原点にあるような気がして好きでした。

単衣で仕立て、帯だけいろいろ替えて着た切り雀のように、30代、40代とよく着ました。工芸品を扱うアルバイト先へも着物で行きました。
裾が擦り切れ洗い張りもし、表裏も返して仕立て直しました。

この着物に“とことん着る”ということはどういうことか、帯の取り合わせのこと、単衣の真綿紬の着心地のこと、たくさん教わりました。

着物が売れると帯を買い、インド更紗、ジャワ更紗、イカット、絞りの帯など、手工芸の力のある帯を合わせて着ました。

今は確かに藍色が薄くなり、グレー味を増しさらに地味になってきました。
でも、グレーヘアーの私にはピッタリになってきました。(*^^)v
締めている半巾帯も残糸を使った自作です。
こちらの着姿ページもご参照下さい。→

日常に着物があった時代は格子の着物というのがよくあったのですが、今は高級品の手紬の着物はお洒落着となり、無地感覚が主流になりました。
しかし、売れる、売れないではなく、素朴な味わいのある小格子の着物も織りたいです。紬通の方に着てほしいです。


作品集は紬塾に参加してくださった方々の協力のもとに制作出来ました。
トップの写真は撮影の日に紬塾の方と談笑しているところを捉えた写真をトリミングして使いました。

ご登場いただいた方は、当時は着物を着始めて1~2年の方や慣れてない方などがほとんどでしたが、それぞれの方の感覚でものを選び、自分の体型に合わせて着ています。私もゆるい着付けで、写真に撮るとやはりアラが目立ってお恥ずかしい限りですが、布を纏った時の皺や片寄りはむしろ自然です。

撮影から10年経ちましたので、参加くださったみなさんもいろいろ新たな着物や帯なども増えているでしょう。
また違う取り合わせの着姿を拝見し、写真を撮らせて頂きたいところです。

私は着付け教室にも通わず一人で見よう見真似で着物を始めましたが、着ていれば自然に身についてくる感覚があります。始めはいろいろ失敗もありますが、それが学びというものです。だから紬塾でその体験も生かして話ができるのだと思います。

まだ着物を着たことのない方も、良い着物に出会い、先輩方の着方を見せてもらいながら、着始めて見ませんか。文化は市井の人々、市民が育てるものです。

この人になら任せられると、選挙で真剣に一票を投じるように、着るものも、食べるものも住まいにも一票を投じましょう!
自分を育て、よい文化を生み、育てる大事な一票です。
見てるだけ、SNSで「いいね!」を入れているだけでは何も生まれません。変わりません。
誰かがやってくれるとみんなが思っていたら着物文化もいずれ終わります。
よい着物を着ることで、よき人との出会いもあります。着実に動き始めます。

作品集は私の作品を紹介してはいますが、そのことをアピールしたいというよりも、自由な発想に立ち、ものをよく見れば、一人でも着物の知識がそうなくても始められるということも知ってもらえれば良いと思っています。
信頼できる人のちょっとしたアドバイスがあればなおいいです。
難しく考えるよりもよきもの、どんなものが好きかと出会うことから始まるのだと思います。

紬塾も13期目が間もなくスタートします。
着物を着てみたい、布や手仕事を大事にしたい、自然が好き、大切に思う方は、是非作品集もお読みいただきたいですし、紬塾へも関心を寄せて頂きたいと思います。

『樹の滴』は現在、Amazon、楽天などインターネットで在庫がない状況になっているかもしれませんが、出版社には在庫がありますので、再入荷希望でご注文いただければと思います。

櫻工房オンラインショップでも購入できます。送料無料でお送りします。
半巾帯リーフレットをお付けします。



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再読 [作品集「樹の滴」ー染め・織り・着る] その 2

2021年05月07日 | 作品集『樹の滴』
作品集の制作で一番難しかったのは“色”ということは前回書きましたが、もう一つ、着姿写真を撮る時は、どうしても顔を含め全身を写す、引きの写真になります。 
そうすると、私の作品のような柔らかな微妙な色や布の風合いというものが一番の特徴という作品の存在感はほとんど写らなくなります。(^-^;

全て布アップも入れるようにすればいいのですが、紙面が限られていて、あれもこれもは載せられず、イマイチ作品の良さを伝えきれなかったものもあります。

その一つが、「秋麗」というタイトルの細かなよこ段の着物です。
コデマリで染めた黄色ベージュを地糸に濃淡でたくさんの色糸を織り交ぜました。
何でもないような柄ですが、染めも織りもとても時間がかかった作品です。

トップの写真は私が撮った生地アップです。
経ての紬糸の節がよく写っています。色糸も微妙な違いの糸が入っているのがお分かりいただけると思います。
着てくださった方は、「まるで樹皮のようだ」と感じたそうです。
このコメントも自然物を感じていただき嬉しく思いました。

人を包む布、着物も木に例えれば樹皮にあたります。
そういえば幸田文さんの「木」の“木のきもの”という章に、樹皮と着物の柄を重ね合わせるエッセイがあります。 
『杉はたて縞、たてしぼ、松は亀甲くずし、ひめしゃらは無地のきもの‥』などと綴られていますが、こんな風に樹木を見ていくのも面白いです。


この写真は作品集で使いませんでしたが、とても素敵な花織の帯を合わせてくださいました。
生糸使いの繊細な色柄の花織と、野趣のある私の紬と引き立てあいながらよく合っています。
素材感も色も違いながら、響きあっています。取り合わせとはこういうものです。
小物もこの日は薄黄緑に、程よい濃度のあるピンクの帯締めをしてくださってました。

他にもいろいろな帯と合わせて着て下さってます。
使い手の取り合わせのセンスの良さが着物を活かしてくれています。


もう1点、「花明かり」という作品です。
ベージュ地に桜で染めたよこ絣を配してあります。


ご本人は小柄で、よこの段は向かないと思ってらっしゃったようですが、柔らかな段ですので、全く気になりません。
この日は2本の帯をお持ちいただきました。
こちらの画像は作品集では小さなカットでしたので、改めてご紹介します。
帯は紙布で柿渋染めの重厚な色のものです。

着物初心者と当時おっしゃっていましたが、着方がとても自然で、帯結びもすごく早い方です。この時もささっと締めなおしてくれました。
紬塾にも参加くださっていたのですが、本当に着物が良くお似合いの方です。


取り合わせに関しては相談を受けましたので、帯締めや帯揚は一緒に決めました。
もともと落ち着いた色を好まれる方ですので、その範囲で選びました。
無地系の帯ですので、組紐はちょっと凝ったものにしました。紐1本で秋めいた装いになりますね。

取り合わせの参考にもなりますので、作品集も合わせてご一読頂ければ嬉しく思います。

現在、Amazon、楽天などインターネットで在庫がない状況になっているかもしれませんが、出版社には在庫がありますので、再入荷希望でご注文いただければと思います。
全国の書店でもご注文いただけます。

櫻工房オンラインショップでも送料無料でお送りします。
半巾帯リーフレットをお付けします。

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再読 [作品集「樹の滴」ー染め・織り・着る] その 1

2021年05月03日 | 作品集『樹の滴』
久し振りに作品集「樹の滴」を読み返しました。
新しくブログを読んでくださっている方も、最近私の仕事を知ってくださった方もたくさんいらっしゃると思いますので、改めて3回に分けて書きます(予定‥)。(^^ゞ                                                                                                                                   


たくさんの方にお読みいただき、そのことで個展に初めて来てくださったり、紬塾に参加してくださったり、感想をお手紙で頂いたり、十分な出来栄えではなかったと思いますが、ありがとうございました。

当ブログの『よきモノ、よき人の輪』(12.6.2付け)で、作品集「樹の滴」について書きましたが、【体力的なことからすればあと10年が残された私の染織の時間といってもいいかもしれません。もちろん命ある限りは仕事したいですが、、】と書いてあります。
あと1年しかありません。。(*^-^*);;

さて、作品集の制作で一番難しかったのが、作品の色です。
印刷は高精細印刷で、印刷所に実際の布を送って、午前中の光で色を見ていただき、写真の色の調整もしていただきましたが、やはり最初の写真の色が大事で、調整にも限界があります。

中でも最も実物と色が違ったのが、P.14、15の『白露』という縞の着尺です。
地色は真っ白ではなく白樫で染めたアイボリーです。そこに様々な色の細い縞がランダムに入っています。
若練りの糸を使った、張り感を少し残した単衣向けの着尺です。

作品集を作る際にどんなカットで撮ってもらおうかと考えた際に自分で仮に撮った写真がありました。
この方がまだ色は出ていると思いますので、作品集の参考にしてください。
ちなみにこの作品は、この作品集をご覧になった方が初めて個展にお越しくださり、お求め頂きました。

写真の色はやはり光線が大事で、雨や曇りやライティングだけで撮るものではないと思います。特に草木染の紬は難しいです。


上に乗せた帯は『羊歯文刺繍 節糸紬帯』で、お客様の着姿ページに入っていますのでご覧ください。
赤城の節糸の味わいに刺繍という一見ミスマッチな感じが私は好きです。
紬×刺繍がミスマッチなのではなく、その布の世界観と世界を同じくできる刺繍であることが大事です。

この羊歯文様は漆絵の柴田是真の作品からヒントを得て、生まれてきました。
羊歯の葉先は色違いで刺してもらいました。

表紙の作品「樹の滴」も刺繡入りです。
上前のドットを見せる感じで撮ってもらいました。
地の部分を細かく織り交ぜた感じはよく出ています。
木々の中に潜む色をドットの刺繍で表しました。この刺繡も同じ方にお願いしました。制作意図をよく汲んで頂きました。

仮絵羽の状態で、上手く着れないのですが、ざっと着てみるとこんな感じです。

刺繍は付け下げのような感じで配置してあります。
全て、色もドットの形も違えてありますが、嫌味にならないような控えめな感じですので、カジュアルなお洒落着から、帯の格のあるものまで合わせられます。落ち着いたモダンな感じの大人の着物です。

刺繍と言えば、作品集の中の私が着用している着物にも、野趣のあるバラを刺したものもあります。
刺繍は好きですね。。
子供の頃、小花模様の刺繍の入った品の良いブラウスを母が年に1回買ってくれて、何枚か持っていました。今でもはっきり記憶に残っています。色のグラデーション使いがとても好きでした。その記憶のせいかもしれません。。

他の作品も近づける努力はしたのですが、草木の色や真綿紬の立体感のある陰影は印刷物や画像で見るものではなく、自然光の中で見ていただくしかないのだということが結論ではあります。
ただ、一つの手がかりとして、良い写真が撮れれば、また作りたいと思います。

今年の11月には個展の予定がありますので、ぜひ実作の色、風合いをご覧頂きたいと思います。

作品集は写真だけでなく、制作の解説をしつつ、それにまつわるエピソードなども交えるエッセイになっています。男性や、着物を着ない方にも好評でした。

昨年からのパンデミックに遭遇するとは予測していませんでしたが、
12.6.2のブログでも書いていましたが、11.3.11の東北大震災、原発事故とも重なることもあるのだと思うのです。11年の5月に作品集の撮影を始めていましたが、10年後の今、改めて暮らし方を問い直す時期でもあります。
今回の新型コロナウイルスも人間が招いたことですから。

この状況下では、着物のお洒落を楽しむなどまさに不要不急の扱いになってしまいますが、着ていると心が落ち着きますし、眺めているだけでも高揚してきます。
食べることと同じように着ることも人を人としてとして成立させる大事なことです。

現代において着物を着ることは何なのか、本当の紬は何なのか、手仕事のこと、着ること、取り合わせのことなど、作品集を介して思いを馳せていただければ嬉しく思います。


この作品集は、作品のみを見せるだけでなく、作品所有者の方に、ご自分で着つけてもらった着姿を撮らせていただいたものと両方を作品として掲載しています。

身近な自然から糸をつむぎ、染め、織り、着ることは、もう一度見直されてよい日本の大切な文化だったことを知っていただきたいと思います。

拙文ですが、ペンダコを作りながら一気に書き上げたものです。(;^^)p
ご一読頂ければ嬉しく思います。

現在、Amazon、楽天などインターネットで在庫がない状況になっているかもしれませんが、出版社には在庫がありますので、再入荷希望でご注文いただければと思います。
全国の書店でもご注文いただけます。

櫻工房オンラインショップでも購入できます。
こちらからどうぞ。送料無料でお送りします。
半巾帯リーフレットもお付けします。
工房は連休中も仕事しておりますので、当方でもご注文承ります。




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