中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

自分でつむいだ糸を工房の庭木で染める

2010年07月23日 | 紬塾 '9~'12

中野みどりのHP





手順の説明。


染織実習コースを受講している方6人と、この猛暑の中、キッチンで染色しました。
途中、水分補給をしながらです。
染めるものは、前回みなさんが真綿からつむいだ糸と、
みなさん持参の使っている半衿など、そして赤城の太い節糸です。
染材は柿と桜の枝のみを使いました。

まず半衿。素材が絹でないと染まらないのですが、
絹かどうかの判断がつかない方もいらっしゃいましたので、
生地の端を少しほぐし、糸を抜き取って燃やしてみて、確認しました。
ウールや絹はたんぱく質でできていますから、燃やすと髪の毛を焦がしたような匂いがして、
玉状になりますので、すぐわかります。

今回は媒染をしない方法と、アルミ媒染による2通りの染めを体験してもらいました。
3時間ほどではほんのさわりもさわりですが、
枝を切るハサミもどんなものがよいのか、太いところはどんなふうに細かくするとよいのか、
小さな鉈を使ってのチップも作りました、手に豆を作る人もいましたが、手分けして行いました。

草や木で染めるのはシンプルだけど簡単なことではなく、
美しい色を引き出していくのはそれなりの経験と工夫が必要になってきます。
しかし、おいしいダシをとるにはどうしたらよいのか、
青野菜を色よく茹でるにはどうするのか、
アクの強い野菜の下処理の仕方やアクの生かし方など、
料理やお茶をおいしく淹れるやりかたに通じるところがあります。



チップをつくるための道具一式と、鍋を乗せるために植木鉢を利用。


[みなさんに感想を書いていただきました]

T.M.さん
大きな鍋のほか、ボウル、洗濯機(なんと懐かしい二槽式)など身近なものを使い染色できることに驚きました。
先生の作品の糸が、ふつうの民家の台所で染められていることを知って感慨無量でした。
染材の量は思っていたより少量でしたが、50cm足らずの桜の枝三本のパワー侮るべからずです。
染められた糸それぞれにはいろんな物語や風景があるのではないでしょうか。
仲間と枝をチップにし、風がよく通る台所でガスの火が消えないように注意し、時間を計り、どんな色に染まるか
ワクワクしながら…etc、そんな時間の流れも色として煮出され、糸に移され、織り込まれていくことでしょう。
あの桜はどんなところに生えていたのでしょう。
よかったね、ただ切られて捨てられることなく、糸に色を移すことで第二の命をもらって…、愛しい色です。
布作りは糸から始まるということを、糸つむぎ、染色を通じて実感させていただきました。
ありがとうございました。




食器棚の横の染色道具棚。染液の飛散よけの風呂用ふたなど。


K.M.さん
染織の手間のかかる仕事を垣間見させていただきました。
技術はもちろんの事体力と気力のかかる大仕事ですね。
再度同じ色が出せないところがとても魅力です。
(私が感じた限りでは)発色した色すべてが○、×がないところが気に入っています。
思うような色を出そうとするにはあまりにも多くのことを学ばなければならないようで。
3時間あまりで染を基礎部分から体験できて良かったと思います。







S.K.さん
草木染めの初体験は、火と水と草木(生物)=大自然の循環 に
わずかながら自分も参加したように感じました。
柿や桜の色に染まった糸と半衿は、その営みのたまものなのですね。
それとはまた別に、中野先生の、数々の制約の中で
身近なくらしの道具をできるだけ使いながら、草木のいのちを
最大限に引き出すという、概念ではない“リアル”な草木染めの
作業をじかに拝見して、たいへん勉強になりました。
それはそのまま、先生の紬織につながっているのですね。







N.K.さん
――自らの手で、小枝をチップにし、煮出し、手つむぎの糸を染める――
限られた時間の中ではありましたが、一つ一つの作業がとても新鮮で、貴重な体験でした。
細かくチップにされた小枝から、色が煮出されてきた時の驚き。
染液から染めあげられた糸に光が当たった時の、得も言われぬ輝き。
感動と同時に、「これは、お蚕さんと木々の命の輝きの色なんだなぁ・・。」と、
何とも言えず感慨深いものがありました。 
染めあがった半衿は、私のとっておきの大切な一枚になりました。
私は、まだ染織の世界のほんの入り口に立って見せて頂いているだけですが、 
「一本の小枝にも命がある」「何気ない日常の自分の身の回りも、命で溢れている。」
という当たり前のことに気づかされた一日でした。
目からうろこ・・・の思いの一日でした。




糸をポールで絞る。上手ですね!


U.S.
桜の木で染める、といっても具体的には「小枝を煮出す」?ぐらいの曖昧なイメージでしかなかったものが、
あのように細かなチップを作って、(鰹節の出しを取る話が分かり易かったですね)それこそ木の命のエキスを頂くようにして、
色をいただいているのだということがよくわかりました。
恐らく色だけではなく、きっと植物のいまだ命名もされていないかもしれない何かも一緒に含まれているのではないかと感じました。
そのチップを作るという作業から、糸を染めて、織って、を全部一人でなさっているのですね。本当にスゴイことですね。
中野先生の作品の稀有な美しさを考えると、まだまだその深さのごく一端を垣間見させて
いただいたに過ぎないように思います。
講習の残り半分で少しでも近づけたら、と思っています。




糸の水洗いと脱水は二槽式洗濯機で。


I.K.さん
身近な植物、木で、家庭でもできることが驚きでした。
おそれないで、半襟ぐらいはやってみてもいいですね。
染色が少し身近なものに感じられました。
手仕事は労働を伴うものなので先生の仕事の大変さはかなりの事なのだろうと、察しられました。
ただ、ほぼ全工程を自分でやっていくことが先生のやり方、表現、喜びなのだろうと思うと、たまらなく面白いことなのだろうと思いました。




うっすら染まった半衿。



次回の更新は8月下旬の予定です。



コメント
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