今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

大高ひさを(カスバの女)の忌日(Ⅱ)

2010-09-02 | 人物
菅原都々子のヒット曲に「連絡船の歌」(1951年)があるが、この歌など私はてっきり、日本独自の流行歌だと思っていたのであるが、この歌は、1937(昭和12)年、韓国の張世貞(チャンセジョン)が歌った 「連絡船は出ていく」(作詞:趙鳴巌 作曲:金海松)を、大高が作詞し直し、長津義司が編曲したものだったのである。(以下参考の※4:「日韓歌謡架橋」の歌謡ヒットパレード・連絡船の唄参照)。
菅原は韓国の歌である事を重々承知の上、レコード会社の資料室にあったレコードを持ってきて「良い歌だから歌ってみたい」と会社側に頼み込み、吹き込みが実現したのだという。しかし、当時の社会情勢等の問題から、その事実は伏せられていたそうだ。
YouTube -連絡船の唄 菅原都々子
そのほか、「カスバの女」の作詞をしたと同じ年・1955(昭和30)年に発表の曲、「木浦(もっぽ)の涙」がある。歌っているのは、やはり、菅原である。以下がその曲である。
YouTube - 木浦の涙 菅原都々子
私は、この曲のことを、よく知らなかったが聴いてみると、なかなかいい歌ではあるが、調べてみると、この曲は、もともとは、日本の朝鮮総督府統治下に置かれていた韓国で1935(昭和10)年に発表され、爆発的にヒットした曲だそうであり、内容は、男女の別れに比喩したものであるが、亡国の悲しみを歌ったものだという。作詞:金能仁、作曲:孫牧人のものを大高が作詞、編曲を久我山明(孫牧人)がしたものである。(この曲のことは、以下参考の※5:「韓国映画と歌」参照)。
こうして大高の作った歌についていろいろ調べているとその中には、「アリラン」や「トラジ」などの朝鮮民謡のカバー曲もあった。以下が大高作詞によるカバー曲である。
YouTube -アリラン 菅原都々子
YouTube -トラジ 菅原都々子
この2曲は、1950(昭和25)年12月に「アリラン/トラジ」組み合わせの盤として発表されたものであり、何れも長津義司の編曲によるものである。
私の地元神戸には、在日の韓国人や朝鮮人が沢山居住している。私の中学・高校時代の友達の中にもそのような人がおり、かって、春等、桜の咲く頃には、桜の名所である須磨寺横にあるの大池公園などで宴会をしている人達が「アリラン」の歌を唄いながら輪になってよく踊っていた。それを見ていた私たちも、その人達に誘われて一緒に見よう見真似で、歌の意味も良くわからないまま「アリラン アリラン アラリヨ アリランコーゲロ ノモカンダ 」と、唄いながら踊ったことがあるのを覚えている。1950(昭和25)年の年6月には朝鮮動乱が勃発、朝鮮戦争特需により戦後の高度経済成長の礎となった。そのようなこともあり日本でも朝鮮半島への関心が高かったことがヒットしたことがこれらの曲がヒットした一因とも云えるかも知れない。
「アリラン」の歌に出てくるアリラン峠は伝説上のもので、朝鮮半島各地にある同名の峠はこの歌にちなみ、後から地名としてつけられたものと考えられているようだ。この歌は、李朝末期(1860年代)に大院君景福宮復興工事を企てたとき、全道から徴発された労働者の間で歌われ、後年、李太王(李王家参照)が奨励して広まったという。この歌は元来咸鏡道地方の農民歌であったといわれるが、珍島アリランや密陽アリラン等、各地で多様な曲種をもち、数多くの歌詞を即興的に歌い継ぐ地方色豊かなものだそうである(Yahoo!百科事典も参照)。内容の多くは失恋を扱うが、世相への不満、怨情(えんじょう)や郷土愛なども織り込まれ、朝鮮民衆の心情が濃厚に反映されている歌のようだ。
この歌は、1926(昭和元)年の日本統治下時代に朝鮮キネマ株式会社で作成・公開の無声映画「アリラン」羅雲奎監督)の主題歌として全土に広まったものと考えられている。映画は見ていないので知らないが、Wikipediaや、以下参考の※6:「松岡正剛の千夜千冊『アリランの誕生』1995 年創知社宮塚利雄」などによると、主人公は、三・一独立運動に関係して投獄され、精神を病んで故郷に帰ってくる。主人公の妹を親日派が強姦しようとすると、主人公は親日派を鎌で殺して正気に返る。そして、ラストシーン、主人公が手縄をかけられたまま日本人の巡査に引かれてアリラン峠を越え連行されていく。このとき舞台の片袖で歌手の李貞淑(李正淑)が「アリラン」を唄った。その時、観衆は総立ちになったという。
日本で「アリラン」が歌になったのは、大高の作品以前にもある。以下参考の※:6では、1932(昭和7)年の佐藤惣之助作詞・古賀政男編曲による長谷川一郎(蔡奎耀の日本名)と淡谷のり子のデュエット曲「アリランの唄」が最初だったという。「アリラン アリラン アラリヨ アリラン峠を越えゆく」と始まるらしいのだが、この曲は聴いたことがないので歌詞知らない。しかし、この頃、この歌の他西條八十作詩、ビクター文芸部編曲による金色仮面(ゴールデンマスク)による「アリラン」がビクターから発売されているのは知っている。金色仮面とは小林千代子のことで、彼女は覆面歌手第1号と言われている。この曲は淡谷が唄った曲より前の1931(昭和6)年7月発売のようであるが・・・(以下参考の※7:「小林千代子」参照)。
この曲は、ここで聞ける。 ⇒ アリラン 金色仮面(小林千代子)
そのほか、以下参考の※8:「昭和歌謡大全目次」の(あ)のところを見れば判るように多くの「アリラン」の曲がつくられている。
トラジ」も、「アリラン」と並ぶ二大朝鮮民謡であり、もともと、京畿道地方の民謡だったといわれているが、やはり地方によってかなり歌の雰囲気も異なるようであるが、トラジは桔梗の事で、朝鮮族の間では「道拉基」や「桔梗謡」と表現され現代では後者のの方が一般的であるそうだ。この歌は、そのトラジ収穫の喜びを表したもので、「アリラン」に比べると明るく陽気な感じの曲である。
しかし、「アリラン」の歌にかける思いは、日本人と韓国や朝鮮の人達とは大分違っているようだが、私が、若い頃意味もわからずに夜桜を見ながら酒を飲んで、言い気分になって韓国の人などと一緒に「アリラン」の曲を歌い踊っていたことなど思い出すにつけ、以下参考の※6:「松岡正剛の千夜千冊『アリランの誕生』1995 年創知社宮塚利雄」にもあるように“当時、いったい日本人はどのような気持ちでこれらの歌を唄ったのか。メロディに惹かれたのか、なんとなく哀感を感じたのか。おそらくは何もわからず「釜山港に帰れ」のように唄ったのであって、朝鮮民族に対する批判や揶揄の気分で唄ったのではないだろう。 しかしそうだとしても、それはあくまで日本人のアリラン感覚であって、本来のアリラン感覚とはまったく異なるものだった。”・・・ようだと言う気がする。
今日、大高ひさをの忌日に大高のことを書こうと思ったが彼のことは何も判らないまま、最後には、韓国の民謡などに触れることになったが、書いていて、なにか、大高と朝鮮民族との間には深い深い繋がりがあるのだろうという思いがした。そして、彼がもともと韓国の歌であったものをカバー曲として作ったのも単なる当時の朝鮮特需ブームによる日本人の韓国に対する興味ほ満たすためだけではなかったのではないかと言うような感じもしてきた。
兎に角、「アリラン」は色々謎の多い曲のようである。以下参考の※6又※9:「アリランの謎」、※5:「韓国映画と歌」など見ていると・・・何かを感じるだろう。
日本は、2010年の8月15日に、65回目の終戦記念日を迎えたが、今年は、韓国併合から100年目にあたる年でもある。古くから深い関係にある両国の歴史について、今一度振り返ってみてもよいのではないか・・。
(このページ冒頭の画像は、終戦60周年記念、日韓国交正常化40周年記念企画としてキングレコードから発売されたCD。)

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参考:
※1:早すぎた流行歌 「カスバの女」
http://www.asahi.com/shopping/tabibito/TKY201004080257.html
※2:名作映画特集 -望郷-
http://www.tk-telefilm.co.jp/pepe.html
※3:カスバの女: 二木紘三のうた物語
http://duarbo.air-nifty.com/songs/2007/07/post_0172.html
※4:日韓歌謡架橋
http://casey.web.infoseek.co.jp/
※5:韓国映画と歌
http://homepage3.nifty.com/taejeon/songs/song.htm
※6:松岡正剛の千夜千冊『アリランの誕生』1995 年創知社宮塚利雄
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0876.html
※7:小林千代子
http://www5e.biglobe.ne.jp/~yu_yuan/index_kobayashi%20chiyoko.htm
※8:昭和歌謡大全目次
http://www005.upp.so-net.ne.jp/tsukakoshi/kayoudaizenn/kayoudaizenn.html
※9:アリランの謎 |Music PlayTable
http://www.playtable.jp/album.php?ItemId=B0009S8FDW
中川敬のシネマは自由をめざす!風の丘を越えて<西便制>
http://www.breast.co.jp/cgi-bin/soulflower/nakagawa/cinema/cineji.pl?phase=view&id=132_sopyonje
ブロコリ | ニュース:団成社が経営難で不渡り、映画館は通常運営の見通し
http://news.brokore.com/content_UTF/Read.jsp?num=6995
日本統治時代の朝鮮- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B5%B1%E6%B2%BB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%9C%9D%E9%AE%AE
懐かしの歌の広場
http://www.jttk.zaq.ne.jp/babpa300/
外務省: 文化外交最前線 [II]:ユネスコ編—第2号—
http://www.mofa.go.jp/mofaJ/gaiko/culture/koryu/others/070201.html
アリラン- Yahoo!百科事典
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%A9%E3%83%B3/
YouTube - 田端義夫 玄海ブルース 1978
http://www.youtube.com/watch?v=L5Fu3hsm30Q
YouTube - 銀座の恋の物語 石原裕次郎 牧村旬子
http://www.youtube.com/watch?v=FuhXCrZ-u9E
比較建築研究会版・世界建築用語集
http://www.geocities.jp/womb_archi/hkk/dic_frame.htm
骨董・アンティーク資料室(流行歌手変名一覧他)
http://zarigani.web.infoseek.co.jp/hp2.htm
YouTube - チョー・ヨンピル - 釜山港へ帰れ
http://www.youtube.com/watch?v=17cA7096SB0
大高ひさを - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%AB%98%E3%81%B2%E3%81%95%E3%82%92




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