備忘録として

タイトルのまま

Darkest Hour

2018-03-17 14:18:28 | 映画

Success is not final.
Failure is not fatal.
It is a courage to continue that counts. 

  • 映画字幕:成功は最終形ではない。失敗も最終形ではない。大切なのは継続する勇気だ。
  • ネット訳:成功は決定的ではなく、失敗は致命的ではない。大切なのは続ける勇気だ。

 イギリスの政治家ウィンストン・チャーチルのことばである。このことばを紹介する第二次世界大戦初期のチャーチルを描いた映画『Darkest Hour』2017をよりよく理解するために、彼の略歴をWikiをもとにまとめた。

 チャーチルは1874年にイギリス貴族で政治家の父とアメリカ人の母を両親として生まれる。パブリックスクールでの成績が悪かったので18歳で王立陸軍士官学校に入る。当時イギリスは世界中に植民地を持っていて、キューバ独立戦争、英領インド駐在、スーダン侵攻に従軍したチャーチルは文才があったため、都度従軍記や小説を書き出版する。1899年に除隊し、保守党から選挙に出馬するが落選する。そのとき南アフリカで第2次ボーア戦争が勃発し「モーニング・ポスト」の特派員となり戦地に赴くが、すぐに捕虜となってしまう。民間人だからすぐに釈放されると思っていたが、特派員としてイギリス軍を称揚する記事を書いていたため身の危険を感じ収容所から脱出する。モザンビークのイギリス領事官に逃げ込んだあと軍に戻りボーア戦争を戦う。

 戦争後の選挙に保守党から立候補したチャーチルは、脱走劇などで有名になっていたことから初当選する。1900年、26歳のことである。議会では、所属する保守党の陸軍予算案や保護貿易に反対したため、保守党執行部との対立が深刻となり、1904年の選挙では自由党から出馬し当選する。1908年に通商大臣として入閣する。その後、商務大臣や内務大臣、海軍大臣を歴任する。1914年に第一次世界大戦が勃発し、イギリス軍はドイツ軍とのアントワープの戦いやオスマントルコ軍とのダーダネルス海峡での局地戦で敗北し、西部戦線も膠着状態となったことで、海軍大臣のチャーチルは激しく糾弾され大臣を罷免される。閑職になったチャーチルは軍に戻り陸軍少佐として西部戦線に従軍する。1917年に戦時内閣の軍需大臣として政治家に復帰し、1918年第一次世界大戦が終結する。国民の間で厭戦気分の広がっていた1922年の総選挙でチャーチルは好戦派の烙印を押され落選する。1924年の選挙では保守党に復帰し出馬するが再度落選し、1924年末の解散総選挙でやっと復活当選する。

 1924年の保守党ボールドウィン内閣に大蔵大臣として入閣する。大蔵大臣として戦争中に廃止されていた金本位制を復活させる。輸出産業の劣勢や戦争と植民地経営での出費でイギリス経済は疲弊していた。金本位制の復帰でポンドが過大評価され輸出競争力が低下し石炭産業が打撃を受け、各地でストライキが起こった。チャーチルによる共産主義を背景にしたストは違法であるという訴えが奏功し、ストに大衆の支持は集まらなかった。1929年世界大恐慌の時、チャーチルは大蔵大臣を退任する。チャーチルのいない内閣は、経済政策として金本位制の停止やブロック経済による保護貿易などチャーチルと反対の政策を推進する。植民地を持つ国々のブロック経済に対し、植民地を持たないドイツや日本は保護貿易のあおりを受けて経済が疲弊し植民地拡大政策に向かっていった。

 インドはその頃、ガンジーを中心に独立運動が盛んになっていたが帝国主義者のチャーチルはガンジーを嫌っていた。また、ドイツではヒトラーが台頭しナチスが独裁体制を敷き再軍備を進めていた。ナチスがロシアの共産主義拡大の防波堤になることを期待する保守党議員は対独融和派が多かった。しかし、チャーチルはドイツの拡張主義がイギリスの世界支配を脅かすだろうと考え対独強硬論をとった。ドイツは1938年にオーストリアを併合し、1939年にポーランドへ侵攻を始めたため、イギリス・フランスはドイツに宣戦布告し第二次世界大戦がはじまった。開戦により永らく政権から離れていたチャーチルは海軍大臣に復帰する。ドイツ軍との初戦での敗戦などの責任を問われ退任を決意した首相チェンバレンは、後任として海軍大臣チャーチルと外相のハリファックスが候補にあがった。

 このあたりから映画『Darkest Hours』2018がスタートする。監督:ジャー・ライト、出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、ベン・メンデルゾーン、リリー・ジェイムズ、映画は、チャーチルが対独融和派を退け首相に任命されてから、ドイツとの国を挙げての戦いと『ダンケルク』撤退を決断するまでを描く。ドイツの攻勢に危機感を抱くチャーチルが、アメリカ大統領ルーズベルトに電話し、参戦と支援を呼びかけたとき、ルーズベルトはモンロー主義を盾にまったくの他人事だった。その後、チャーチルが日本の南方侵略を餌に危機感をあおり、アメリカを大戦に引き込むことに成功したことは別の話である。チャーチルの人生は自身の言葉どおり何度も失敗し何度も成果を収め、その精神は不屈である。しかし、帝国主義的思想や好戦的な性格は彼の生きた時代や彼の生い立ちによるものだろうが疑問も多い。映画は史実をはしょったり前後を入れ替えたりして、第二次世界大戦下におけるイギリス政府の舞台裏をスリリングに脚色していて面白かった。★★★★☆

『Dunkirk』2017、監督:クリストファー・ノーラン、出演:フィオン・ホワイトヘッド、バリー・ケオガン、マーク・ライランス、第二次世界大戦初期、ドイツ軍の急速なフランス侵攻によりイギリスやフランスなど同盟国兵士40万人がドーバー海峡の海岸ダンケルクでドイツ軍に包囲される。兵士を救出するためイギリスの漁船など民間船が動員される。救出劇の数日を描く。遠い昔の遠い場所での出来事であり、救出での各エピソードがそれほどドラマチックではなく、特別な思い入れがないと面白いとは言えない。『Darkest Hour』を観ていなければ星2くらいか。★★★☆☆

 下の写真3枚は、左から本物のチャーチル(Wiki)、映画のチャーチルと役者のGary Oldman(映画ポスターも含めIMDbより)である。このチャーチルの特殊メークで辻一弘がアカデミー賞メークアップ部門のオスカーを受賞した。本作に関わる前、辻一弘は特殊メークの仕事を辞め現代美術家となっていたが、Gary Oldmanから直接懇願されチャーチルのメーキャップを引き受けたという。

 

 

 


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