備忘録として

タイトルのまま

劔岳 点の記

2009-06-21 14:23:28 | 映画
上映初日の昨日、レイトショーで観た。
原作は読んでいないが、新田次郎の小説は学生時代に愛読した。「孤高の人」、「芙蓉の人」、「銀嶺の人」、「強力伝」、「栄光の岩壁」、「アラスカ物語」、「聖職の碑」など、職業や登山家として山や自然に深く関わる人間の極限状態を描き、深い感動があった。だから、「蒼氷」、「縦走路」、「火の島」、「武田信玄」を含め新田次郎は乱読状態で、自室は朱色の背表紙の本が山積みになっていた。

映画は残念ながら、人間の描き方が浅かった。
「何をなしたかではなく、何の為にやったか」という言葉が、言葉だけに終わっていて、主人公たちの測量基点を作るという崇高な使命感が伝わってこなかった。陸軍との軋轢、山岳隊との競争と交流、主人公と案内人長次郎の信頼、長次郎と息子の確執など、いずれも描き方に深みがなかった。さらに、剣岳登頂の場面が、そこに至るまでの苦難に比べ淡泊だったため、映画のClimaxがぼやけてしまっていた。

黒澤明は確か映画の良し悪しは脚本で決まると言っていたが、この映画は脚本がだめだと思う。キャストと自然、カメラワークが素晴らしかっただけに、残念としかいいようがない。原作を読んでいないのでコメントするには躊躇があるが、他の作品から抱いている新田次郎作品の印象を考えると、原作の素晴らしさが生かされていないのではと疑ってしまう。

初登頂のはずが、先人がいた。剣岳頂上に修験者の古い錫杖が置かれていたのは史実である。
江戸時代の修験者”泉光院”は、「日本九峰修行日記」と題する日記を残している。九峰とは、英彦山、羽黒山、湯殿山、富士山、金剛山、熊野山、大峰山、箕面山、石鎚山で、日記では、さらに白山、御岳、榛名山、妙義山、浅間山、立山、鳥海山にも登っている。特に、1816年6月6日(旧暦)には、映画にも出てきた”室堂(むろどう)”まで雪の中を登り、さらに立山(3015m)に登頂したという。晴れていたので、富士、浅間、白山がよく見えたという。剣岳は立山のすぐ北側にそびえ、山頂は立山よりも低い2999mである。
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”劔岳 点の記”2009 監督:木村大作 出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、夏八木勲 ★★★☆☆

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