漫トラ日記

現実生活空間&脳内妄想空間を日々マンガに浸食される主婦の怠惰な日常

『少女マンガパワー!』展図録

2008年04月02日 23時12分42秒 | マンガ
         
買って一週間もほったらかしだった図録を、やっとじっくり見ることが出来ました
前半は原画のカラーページで、後半は各まんが家先生へのインタビュー記事
これがとっても興味深くて、すごく面白かったので
ごく一部だけど、ご紹介します!
(長いので、興味のある所だけ読んでください。)


※わたなべまさこ先生
家庭に入ってからデビューされたので、その頃の事を聞かれて
主人が良く協力をしてくれて、育児や家事を手伝ってくれて。
~略~女の人っていうのは家庭に入ったままじゃいけない、
社会とのつながりを持っていたほうがいいよって言ってくれて。
私の実家のほうからは「女性が働くなんてとんでもない、子どももいるのに」と反対されましたけれど。


※松本零士先生
女性を描くことについて
「大砂塵」とか、気の強い女性がヒロインの映画ですよ。
そういうものを描きたかったんです。絶世の美女を描きたいわけですね。
それが少女漫画を描く一つの要因になったわけですね。
そういうものが、後の少年漫画に写ってからもヒロインとして出てくるし、
「銀河鉄道999」のメーテルも、全部そこから続いてるわけですね。
当時の少年漫画家は女性を描くのが苦手だったんですよ。アニメーターも実はそうで。
「宇宙戦艦ヤマト」のアニメの頃は、スターシャなんかは原画も動画も自分で描いたりしてました。
でも、みんなだんだん上手くなってね。
「999」のアニメの頃になったらメーテルでも何でも描けるようになりましたけどね。


※水野英子先生
デビュー作の内容について
仔馬をめぐる女の子の話。完璧な西部劇。
~略~要するに当時はお涙ちょうだいばっかりだったでしょう、女の子ものっていうと。
メロメロの薄幸な女の子のね。そういうの大嫌いだったの。
~略~西部劇好きだったんですね。動物が好きだったし。馬が好きだったし。

悔しかった事
原稿をなくされたのは嫌でしたね。
~略~当時は原稿が大事なものだという意識が無いままで、
「ああ、どっかいっちゃった」でおしまいなんですよ。
あと、原稿に勝手に色を塗って、予告のカットなんかに使ってたりね。
~略~そんなのいっぱいある。単行本にするたびに、ひっくり返してみて、
何枚か無いって言って。


※牧美也子先生
その頃の少女漫画は枕詞のように「お涙ちょうだい」とか「母もの」と、
ひとくくりによくされたものでした。
私の少女時代は終戦というより敗戦の混乱と荒廃の中にあり、
日本人の一人一人が自分だけのストーリーを持っていた時代です。
今の若い方には信じられないような悲惨な話はいっぱいありました。
少女漫画といえども絵空事ではなかった。
同時に焦土の中から復興する日本も見てますので~略~
夢、憧れ、希望、今日より明日、明るい未来、そんな思いを読者に伝えられたら、
共感してもらえたら・・・と、そんな気持ちで描いてました。
私自身、いい年してまだ夢見る女の子が残ってたってことかな。


※里中満智子先生
漫画の魅力
漫画の魅力っていうのは、まずそのストーリー、脚本、キャラクター造形、
コマ割、その他ありとあらゆる手段を尽くして、形にするわけですよね。
一つ一つの能力、例えば文章表現能力は10点満天で5点しかないとする。
絵の能力が、いわゆる画家に比べて、満天が10として3くらいしかないとする。
それでもいろんな能力が合わさると説得力を生みます。
それは足し算ではなくて掛け算になってくるんですね。

ちばてつや先生の事
当時少女漫画雑誌に出てくるほとんどのヒロインが、うっとうしい女だったんですよ。
何かあると泣く。~略~お母さんと離れ離れになって、お金持ちの少女にいじめられて、
貧しい暮らしの中健気に時々星を拝み、「お母様に会いたい~」とか泣くわけですよ。
泣く暇があったら何とかしろって言いたいんですけれども。~略~
ところが、ちばてつや先生の作品が、そこに出てくる女主人公がすごく生き生きしてて、
ごくごく自然な女の子だった。
こんなに女の子の気持ちがわかるなんて、男の名前だけど、この人絶対女だって思ったんですよね。~略~
そのうち、ちーちゃく写真がでたんですよね。~略~
どう見ても男みたいな気がするって。
そうか、シスターボーイだって思って(笑)~略~
でももうちょっと私が大きくなると、「ちばてつや先生が結婚なさいました。」と出たんですよね。~略~
おかしいな?そうか、世間を誤魔化すために偽装結婚されたのだと。


※一条ゆかり先生
一番悔しかった事
ちょうど、萩尾望都さんとか、大島弓子さんとかの熱狂的なファンが出てきた頃、「マネだ」って言われたこと。
自分の描いたものは彼女たちのマネではない、絶対。~略~
なにしろそれまで「変わってる」とは言われたけど、マネだなんて一度も言われたこなかったもので、とても怒った私は「私、好きにします」と。
だからもう、私らしい話を描きます、と。で、打ち合わせもしません、と。
言い放って描いたのが「デザイナー」です。

後輩のマンガ家に伝えたい事
担当編集者の悪口を言うマンガ家さんはたいてい、二流か三流か四流か五流なの。
~略~自分の足りないのを担当のせいにする人よ。
人がこう言ったからしょうがないじゃなくて、描いたのはお前じゃないかって。
責任取れないのかよ自分でって。
どんなに性格の悪い編集者でも、自分の担当しているマンガ家が潰れてしまえ、と思う人は一人もいないの。~略~
その自分の一番最初の理解者で、お互いのためにもなる人一人説得できないんだったら、
ファンなんか説得できないよ、って思っちゃう。


※美内すずえ先生
神秘体験
子どものころから不思議な体験はよくしています。
今はそういう体験から得た、自分が本当に大切だと思うことをマンガを通して描いていきたい思ってます。
宇宙全体が一つの生命であり、人の魂と肉体との関係、龍神や宇宙生命体の働き、
人類の使命といったマンガならではのテーマですね。
「アマテラス」という作品が、その試みです。早く続編を書きたいと思ってます。
あ、もちろん、「ガラスの仮面」の続編も。
私、けっこう粘り強いので、時間は掛かるのですが、
一度やり始めたことはけっして忘れることはありませんから、どうぞ見守っていてください。


※竹宮恵子先生
先生の勝負時は?
やっぱり、「風と木の詩」でしょうね。ほんとうに勝負したのはその時だと思います。
「ファラオの墓」のときは、「風と木の詩」のために1位をとるまでやる、と思ってやっていました。
「一般に受ける」ってどうすればいいのかを探っていたのが「ファラオの墓」ですよね。
ナイルキアとスネフェルが恋に落ちるシーンをものすごく大事に描きました。
私は恋愛シーンがすっごく苦手だったんですが(笑)。
でも、しっかりした恋のシーンがあると、すごく反応があるんだなって、その時実感しました。

原画’(ダッシュ)の考え方
自分のカラーがどんなに凝っていても、それが印刷では全然出ないんですよ。中間色とかが。
~略~印刷の不満以外にも、自分の原画が無くなったり、破損したりとかいう話も聞くので。
それが本当に起きてしまう前にアーカイブにするべきじゃないかなって。~略~
マンガの原画は元々飾るためには出来てないので、脆いんです。
そういう意味では、原画よりきちんととっておけるものになるかもしれたいと思って。


※くらもちふさこ
少女漫画の力
やっぱり、乙女心ですね。私の中でとしをとって行くにつれ、心はおやじになってしまっているんですけれど、何かその、少女マンガを描くときには、恥ずかしげも泣く乙女になれるんですよ、自分の中では。
これがある限りは少女マンガが描けるって思ってるんですけど。
そこが大事なんだなって思ってます。


※佐藤史生先生
SFの魅力
「地道なハシゴ昇りのすえに唐突に開ける眺望!」といった所でしょうか.
要するに論理のハシゴを一段一段昇っていく。ジャンプは不可。
ジャンプあるいは飛翔が出来たら、そんな能力があったら、SFなんか読みませんものね。
詩とか文学を読みます。跳ぶ能力も飛ぶ翼もないから地道に一歩ずつ昇っていくんです。
そして気がつくと異様な場所に立って、見なれない奇観をながめて呆然とする・・・そういうのが快感なんです。

好きなキャラクターは?
イリスですね。私は「アラビアのロレンス」を見て人生観が変わったのですが、
イリスはその影響を受けて出来たキャラクターなんです。~略~
ロレンスに惚れこんだことで「影の部分こそがいい!」というステージに移ったわけです。~略~
それで人間は清く正しく美しくなくてもいい。
むしろ弱点にこそ感情移入が出来るんだと、それで描く意欲がわきました。


※岡野玲子先生
少女マンガの力とは?
やっぱり自在性だと思いますね。柔軟ですよね。
女性そのものが、柔軟性っていうか、包容力があるからですか。
男性ていうのはドーンとした感じですから。
でもホントは男性的エネルギーを持ちつつ柔軟であるといのが一番いいと思いますけどね。
少女マンガ家の方は、少女マンガを描きながら、でも男性性の強い作家さんが多いじゃないですか。
たぶんそれがパワーの魅力になっていると思うんですね。
両方を持っていることが。


うわ~~、長々書いちゃいました。
でも一流の方はやっぱり考え方が深い!
だからこそ、一流になれたんだと思いますが。。。
特にすごいと思ったのは一条先生とと佐藤史生先生
一条さんのきっぱりした生き様!
男前だわ~!
佐藤さんの感性
SFへの見方なんか、目からウロコでしたよ!
普通だったら、想像力の飛躍が楽しいと答える所なんですが
確かに、気付いたらすごい奇観が見える。。。ってのは頷けますわ~

そして、美内先生。ちょっと神がかってるのは心配だけど(山本先生の例もあるから)
「ガラスの仮面」のことを忘れてないのね
少し安心しました

最新の画像もっと見る

18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとう~!! (たれぞ~)
2008-04-02 23:37:26
貴重な図録の中から、先生たちの思いを強く感じる部分を教えてくれて感謝してます。
色んな先生を紹介するの大変だったでしょ?
なんか夜さんの優しさを感じてしまいましたわ~

やはり1流になるという人は感性が素晴らしいね。

でもそれを感じ取れる夜さんも凄いと思うよ~
やはりどんなに一流の作品に触れても、それを読み取れる読者とそうでない読者がいるわけで、私は夜さんの感性というか、読み取りに感動しちゃったわ
私なんて単純だから、うんうんなるほど~と頷くだけだもの(苦笑)

これからも色々ご教授、お願いしますね~
返信する
タレゾ~さんへ ()
2008-04-03 00:15:26
早っ!
アップしてから、10くらいしか経ってないじゃない~~!
それでこの文章、早打ちだわ~~

キー打つのが遅いんで、大変ちゃ~大変だけど
ただ写すだけだから、レビューより頭使わなくて済んだ分楽よ~

ホントは全部ご紹介したいくらいなんです
一流の人はみんな自分をしっかり持ってますね
でも、出てくる方出てくる方みんな、お涙ちょうだいが嫌いだったって言うのには
笑えるくらい納得でした!
返信する
なつかしい名前がいっぱい (hirorin)
2008-04-03 10:56:16
わたなべまさこさんは、家庭に入ってからデビューしただなんてびっくりです。
その当時やったら、大変やったでしょうね。
でも、理解のある旦那様ですね。

水野英子さん、牧美也子さん、里中満智子さん、美内すずえさん、一条ゆかりさん、なつかしいです。

そういや、なんとか進一郎?いませんでしたっけ?男性作家。あれ、間違えたかな?なんか、正しい感じの。
返信する
すごいな~ (ブック)
2008-04-03 14:35:25
たれぞ~さんじゃないですけど、一流の人たちはやっぱり
自分の考えがしっかりあって・・・口だけじゃなくて実践してきたあとの言葉なので
説得力があります・・・

夜さんアップしてくださって本当にありがとうございます

そういえば私が読んだはじめての少女マンガは
お涙ちょうだいだったな~、雨の中本当のお母さんに会いに行って
濁流の川にお人形を落として・・・そこから先は読んでないんですけど
覚えてるってことは、幼子心にかわいそうって思ったのかな~??
返信する
面白く読ませて頂きました。 (tooru_itou)
2008-04-03 15:07:47
松本零士氏の
>女性を描くのが苦手だったんですよ。アニメーターも実はそうで。
>スターシャなんかは原画も動画も自分で描いたりしてました。
~コレ本当かな~(笑)。松本零士氏が我を張って自分で描いたんじゃ(^o^)。

水野英子氏の
>原稿に勝手に色を塗って、予告のカットなんかに使ってたりね。
~へぇー!そうゆう風に原稿を使ってたんだ!。

里中満智子氏の
>ちばてつや先生の事
~ばははは(爆笑)。(思い込みもここまでするか?!)ってお話。

一条ゆかり氏の
>担当編集者の悪口を言うマンガ家さんはたいてい、・・・
>その自分の一番最初の理解者で、お互いのためにもなる人
>一人説得できないんだったら、ファンなんか説得できないよ
~さすがに、あの一条ゆかりさんの言葉ですよねー。至言デス♪(^o^)。

(夜)さん、図録からの抜書き有り難う御座いました(^o^)。
全部、(ふむふむ、そうかー!)と面白く読ませて頂きました。
感謝デス~♪(^o^)。
返信する
hirorinさんへ ()
2008-04-03 21:24:43
わたなべ先生はお子さんを抱っこして、持込みしてたそうですよ
それにしても、先生のダンナさん、素敵ですよね~!
今でも、あんな理解のあるご主人は少ないと思います
(どこかの宿六に爪の垢を飲ましてやりたい!)
ダンナさんは陶芸家だそうですよ

懐かしくて、素晴らしいメンバーでしょ?
少女マンガの歴史と発展を海外に紹介した展示会だから
良いとこ押さえてるわよ~

>進一郎?
それは鈴木研一郎さんの間違いでは?
アハハハ、正しい感じってわかる~~
あんまりよく覚えてないけど、面白みの無いマンガだったような記憶があるもの~
だから、記憶に残らないのかもね!
返信する
ブックさんへ ()
2008-04-03 21:43:57
もうね、先生たちの言葉一つ一つが
納得・感心する事ばかり!
自分はこういう漫画を描きたい!って言う目標?夢?がはっきりしてて、
その達成のために妥協せず努力してきた自信を感じます
そして、これを自分一人で読むのは勿体無いな~と思って
ごく一部だけど紹介したわけですよ

私も、子供のころはお涙ちょうだい漫画を読んでたな~~。。。
でも、やっぱり好きじゃなかった
だから、里中さんの「泣くくらいなら何とかしろよ」の言葉に激しく同感!
その部分を紹介したわけ~
そんな漫画が多かったから、アニメに走ったのかな~。。。
アニメは少年漫画が原作だったからね
返信する
トオルさんへ ()
2008-04-03 21:56:56
松本先生はアニメを昔からやりたかったそうですよ
ただ、当時のアニメは少年漫画ばっかりだったから
美しくたおやかな女性を描ける人がいなかったんでしょうね
そこで。。。腕まくりしてしゃしゃり出る?
ありそうな気がしてきたわ~~

他にもミーくんの話とか潜水艦のハッチをデザインした話とか
興味深いエピソードがありました

里中さんの話は爆笑でしょ!?
一人で笑ってるのは勿体無くてご紹介です

一条さんはすごいですよ!
高校の時から自分をプロデュースしてたそうです

どれもこれも、へ~~!?な話が満載で面白いです
箱返却の時にコピーを入れておきますね
返信する
すごい。 (ひろし)
2008-04-03 22:24:06
すばらしい~メンバーですね!

思わず・・・読んでしまいました。
それぞれの表紙が思い浮かびます・・・。

実は、前職で中古コミックやまんが喫茶のフランチャイズでお店作りしてたんです~。
(かなり前ですが・・・)
返信する
ひろしさんへ ()
2008-04-04 00:36:53
へ~~!?
漫画関係(って、いえるのかな?)のお仕事してたんだ!
漫画って聞いただけで、なんとなく羨ましかったりして
そん時はマンガが読み放題?。。。なんて、そんなことある訳無いか!

すごい大御所ばっかりでしょ?
何しろ、漫画がまだまだマイナーな時代から頑張ってこられた方たちですから
やっぱり志が違う!って思います

ところで、今日は負けちゃったけど
タイガース好調で毎日お酒が上手いんじゃないですか?
私は毎晩スポーツニュースを見るのが楽しみで~♪!
返信する

コメントを投稿