原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

サクラサク。

2014年05月13日 09時46分57秒 | 地域/北海道

 

携帯電話などなかったずっと昔、緊急の連絡と言えば電報がいちばんであった。受験の合否を知らせる暗号のような電文が「サクラサク」であった。これはもちろん合格の知らせ。一方「サクラチル」となれば不合格となる。受験シーズンはこの悲喜こもごもの電報が日本中を駆け巡ったのである。私もこの電報を利用したひとりであった。だが、この思い出には少しばかり苦いものが残っている。大学の受験のために東京に出て、その合否が発表された日、愚かなことをしでかしたからである。

 

幸い、受験は成功し、合格となった。その喜びのあまり、友人と連れだって新宿のスケートリンクへ直行。一日中遊び呆けていた。実は北海道の家では母が私の知らせをじっと待っていたにもかかわらずである。結局、母に電報を打ったのは翌日となる。母が怒るのは無理もなかった。連絡がないのは不合格のためで、私が落ち込んでいると思ったからだ。当時の下宿には電話などなく、連絡のとり様がなかった。さぞ、気をもんで知らせを待っていたことであろう。しかしながら、友人と遊んでいたために連絡できなかった、という言い訳もできない。帰郷した私に涙交じりで怒りまくる母の小言をじっと聞くしかなかった。

受験シーズンが始まり、サクラの便りを聞くたびに、苦い思い出が頭をかすめる。

 

道東の弟子屈町(駅名は摩周)の町はずれに立つエゾザクラの名木が「合格の木」としてカルビー食品の商品に登場したのは、もう十年ほど前になるだろうか。受験生を応援するスナック菓子として登場したものであった。牧場の一角に一本だけ立つ姿がよく、以前から有名な桜ではあった。カルビーの広告に登場して以来、名物として広く知られるようになり、開花時期に訪れる人も多くなった。この桜の木は私有地の中にあり、勝手に近づくことができない。少し遠くから眺めることしかできないのだが、逆にこれがまたいい。遠くから静かに花見をするという気分もなかなかのもの。花見の仕方もいろいろあるということなのだ。

 

だが、この桜の開花時期がなかなかに読み切れない。昨年の開花は5月28日であった。運悪く天気が悪く、あまり良い状態で写真が撮れなかった。今年は天気に恵まれて開花が去年より16日も早かった。うまくタイミングがあって開花とめぐり逢えば、いかにも幸運。一年の運が開けたような気分となる。今年がそうであった。昨年の悪運がようやく晴れたと思うことにしている。


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2 コメント

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いよいよ咲きましたね! (numapy)
2014-05-13 10:07:37
今年は、どこも早いみたいですね。
昨日「日本で一番遅い開花宣言、釧路」のニュースをやってましたが、
それでも去年より11日早いんだとか…。阿寒町内の桜はもうほとんど散りました。
それにしても、この桜はキレイですね。そういえば横断道路に
こんな風景があったような気がします。
サクラサクもサクラチルも両方打った記憶がよみがえってきました。
今週が最後ですね。 (原野人)
2014-05-14 15:35:59
今日水曜日も見てきました。満開です。どうやら弟子屈は今週が最後のようです。
日本で一番遅い根室のチシマザクラも昨日開花とか。道東の春もようやく半ばを過ぎた感じです。
合格の木は横断道路の弟子屈寄りの入り口前で、道路からはちょっと醜い場所にあります。注意していれば見ることができますが。道の駅から10キロ弱の左側です。機会があれば、ですね。

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