原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

落葉、枝に返らず

2009年11月27日 09時16分13秒 | 自然/動植物
先日、川のシンポジウムに出席した。テーマは「森と海をつなぐ川の環境をどう守るか」。京都大学フィールド科学教育センターと標茶町、厚岸町が共催したものである。貴重な話がたくさん聞けた中で、特に重く残った言葉があった。北海道大学の中村太士教授の話である。「環境を保全するために多くの修復工事が実施されている。これは無駄なことではないが、一度壊れた自然は決して元に戻ることはない。破壊の速度を緩める効果しかない」 . . . 本文を読む

オンネトー初冬

2009年11月24日 10時04分14秒 | 地域/北海道
五色沼の別称があるオンネトー。四季折々の美景はもちろんだが、一日の中でも空の雲行き次第でその表情がどんどん変わる。コバルトブルーの透明な水面が青空や雲を映しこんで変化する。阿寒国立公園の代表と言えば、阿寒湖であり摩周湖であり、屈斜路湖となる。しかしオンネトーは脇役のように小さな沼ではあるが、自然との調和は見事というべきもの。北海道三大秘湖の一つに数えられているのも頷ける。 . . . 本文を読む

冬の華、舞う

2009年11月20日 09時10分51秒 | 地域/北海道
久しぶりに山に入った。11日の初雪はもう、跡形もなく消えていた。木の葉はすべて地に落ち、モノトーンの風景が続く。山は冬に備えて眠りに入っていた。クマザサの緑だけが異質物のように見える。山で最初に私を迎えてくれたのがゴジュウガラ。葉の落ちた木の上では姿がよく見える。それにしても、午後二時と言うのに夕方のような暗さ。これはひょっとして、と思う間もなく、空から冬の華が舞い降りてきた。 . . . 本文を読む

誰もいない交差点の赤信号、GO派 or STOP派?

2009年11月17日 09時05分05秒 | 社会・文化
昔の私は完全なGO派であった。ルールというものは人間のためにあるもので、人間が不便に感じたら、都合に合わせて変えていいものだと思っていたから。ただし、自己責任はきちんと取るべきだと。ところがある時から、赤信号で前に歩く自分に抵抗を感じ始めた。心の中に、何か後ろめたい、とても嫌な感覚が生まれてきた。それはある国で見た出来事がきっかけであった。以来、どんな状況であろうと歩行者であるかぎり赤信号は守るようにしている。 . . . 本文を読む

はつゆき

2009年11月13日 09時56分49秒 | 社会・文化
11月11日朝、いつもより暗い日差しに、外を見ると辺りは白一色。初雪であった。例年より早いのか遅いのか、ちょっとわからない。調べて見ると、我が町としては、ここ十数年の平均的な到来日であった。滴がこぼれそうな雪が落ちていた。たぶん一日で消えていくのだろう。しかし、道東にこれから訪れる、厳しい冬の前触れでもある。融けながら落ちてくる初雪の姿に、寒さも忘れ、しばし眺め続けた。 . . . 本文を読む

生きる目的

2009年11月10日 11時17分09秒 | 自然/動植物
標津町にあるサーモン科学館(サーモンパーク)では、11月になると遡上してきた鮭の産卵を実際に見ることができる。ふだん魚道として公開していた水槽を利用する。魚道をせき止め、ここで鮭は産卵する。水槽越しではあるが、目の前で鮭の産卵が見学できる。鮭の生態の解説もあり、興味はぐっと深まる。子孫を残すために海を旅して、故郷に帰る鮭の一生を思うと、人間は何のために生きているのかと、考えさせられる。 . . . 本文を読む

一歩近づいて、知る世界

2009年11月06日 09時51分39秒 | 自然/動植物
クローズアップ。少し大げさな言い方であるが、またひとつ、新しい世界を見つけたような気がする。実は新しく接写リングを手に入れた。これを使えば、標準レンズで30センチの距離まで被写体に近づける。これが意外に面白い。今まで見たものと違うものが見えてくるからだ。ハマナスの実に浮かぶ人の顔、クマザサの皺、ハウチワカエデの血管などなど。なかなかに興味深い。春の花の時期が今から楽しみとなった。 . . . 本文を読む

湿原暮情

2009年11月03日 10時06分48秒 | 自然/動植物
塘路湖の北隣にあるシラルトロ湖の周辺は、釧路湿原の原始の風景が残る場所と言われている。湿原らしい平坦な原野の中に水を撒いたように湖が広がっていた。湿原の夕景が美しい場所の一つとしてもシラルトロ湖は知られている。空気が冷え込み、透明感を増すこの時期は、絶好のタイミングとなる。暮れなずむ湖上には鳥影が夕日に照らされて揺れて見える。自然の営みは深く、いつも人智のはるかかなたにあるように感じる。 . . . 本文を読む