A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

マルチリードの達人ディックジョンソンは、地元に帰るとマルチタレントのスパーマンだった

2012-05-10 | CONCORD
Swing Shift / Dick Johnson

名義貸しというのは合法であろうと違法であろうと色々な世界で行われている。先日のバス事故での「名義貸し」は問答無用だが、最近大手のスーパーに行くとPBの商品が溢れている。PBとは結局、流通の「名義貸し」だ。
昔は同じ商品でもどこのメーカーの物にするか悩んだし、それを選ぶ楽しみもあった。選んでもらうためにはメーカーも自ら広告費をかけてブランドの浸透に力を入れていたが、このPBが広まるとメーカーは作り手に徹し、生活者からは遠い存在になってしまう。作り手と流通の役割分担といえばそれまでだが、流通が強い社会はある意味で便利ではあるが、何か選択の自由が無くなって寂しい感じがする。
その反対に、ネット社会の到来で地方の超マイナーブランドが一躍グローバルに打って出ることも可能になった。利用者側も選択眼を養うことが益々重要になってきた。自分で努力すれば良い物が手に入るが、楽をすると当たり前の物しか接触できない時代だ。

コンコルドレーベルも、設立当初はローカルのマイナーレーベルであったが、カタログ枚数が200枚近くになるともはやマイナーレーベルとはいえない中堅レーベルに育っていた。オーナーのカールジェファーソンの個性もあり、ブランドイメージも確立してきた。コンコルドレーベルということで、「あるジャンルのファン」は中身を聴かなくとも安心して新譜を買うことができたのだ。
一方で、毎月のように多くのアルバムを出すようになると、ジェファーソンだけでのプロデュースでは量、質とも限界に達していた。そこで、次なる策はNo.2のプロデューサーを起用すること。Frank Dorritieがその任を果たすようになった。ジェファーソンとは少し違ったアプローチで、主役の意向をかなり重視するアルバムが作られるようになってきた。結果的に幅が広がったことで、コンコルドレーベルとしてのステータスはより確固たる物になっていった。

マルチリードプレーヤーのディックジョンソンも、そのコンコルドレーベルに参加したミュージシャンだ。ジェファーソンのプロデュースの元、何枚かのアルバムに登場して、マルチで楽器を操る器用な腕達者振りを披露してくれた。
しかし、「彼の本質は今まで聴いたアルバムでの演奏なのか?」というとひょっとしたら違うかもしれない。あくまでもジェファーソンの眼鏡にかなった演奏であり、彼の本質は自分の納得がいく別の演奏にあるのでは?と思った。

今度のアルバムは誰との共演か?と思ったら、今回のアルバムはディックジョンソンのグループSwing Shiftの登場だ。
プロデューサーは?というとディックジョンソン自らが加わっている。
録音場所も、地元ボストンのお隣のロードアイランドだ。
完全にディックジョンソンの自主制作アルバムでコンコルドレーベルは「名義貸し」のようなものだ。これまでの、過去に自主制作したアルバムをコンコルドから世に出した例はあったが、今回は新録音。これが、初めてだったかもしれない。

ジョンソンが自らプロデュースしただけあって、このアルバムは色々なことが考えら、盛り込まれている。
地元に戻って地元のメンバーと一緒の演奏、それだけで生き生きしている。
編成は管を5本入れたオクテット。ウェストコーストジャズの全盛期はよくあったがその頃は珍しい。
アレンジは基本的にジョンソンが自ら行っているが、2曲だけ別のアレンジャーを起用。その2曲が、最初と最後に配置され、どちらもリズミックでご機嫌。
一方で、ジョンソンのアレンジは自分だけでなく管全員に持ち替えをさせる懲りよう。単にスインギーなだけでなく、オープンハーモニーなモダンなアプローチも取り入れている。
実際に、エリントンナンバーのサテンドールでは、演奏を終えてプレーバックを聴いて7人のハーモニーが14人のアンサンブルのように聞えるとご満悦だったとか。
さらには、バリトンとテナーで参加しているJimmy Derbaのラストレコーディン。
というより、他にもう一枚しかレコーディングが無い程無名だったDerbeが、実は地元の名士ハーブポメロイに、ボストンが生んだ偉大なバリトン奏者3人と言えば、ハーリーカーネイ、サージシャロフ、そしてこのJimmy Derbaだと言わしめる名手であったとか・・
おまけに、自分が好きなサドジョーンズのチャイルドイズボーンも入っているし。
話題に事欠かないアルバムである。

ディックジョンソンはマルチリードの達人ではなく、実はプロデュース、アレンジにも長けたマルチタレントであったということが分かるアルバムだ。
このアルバムが世に出たのも、ジョンソンにジェファーソンが余計なことを言わないでコンコルドが名義貸しを始めたからかも?
であれば、カルコリンズのシンシナティーに戻ってからのアルバムも出せばよかったのに・・・・。

1. Jones
2. It Never Entered My Mind
3. The Night Has A Thousand Eyes
4. Perdido
5. Satin Doll
6. A Child Is Born
7. How Are Things In Arborea

Dick Johnson (as,ts,ss,cl,fl)
Jimmy Derba (bs,ts,,cl,fl)
Rick Hammett (tp,flh)
Ken Wenzel (tb,flh)
John DeMasi (tb)
Paul Schmeling (p)
Paul Del Nero (b)
Gary Johnson (ds)

Arranged by Dick Johnson & Hal Crook
Produced by Dick Johnson & Ron Gamache
Recorded at Normandy Sound, Warren, Rhode Island, march 1981
Engineer ; Bob Winsor

Originally released on Concord CJ-167

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最終的に音楽の世界で何をやって成功するかは本人の才能次第・・・

2012-05-03 | PEPPER ADAMS
Solo for Seven / A Presentation in Jazz by Bob Keene Septet

音楽に取り組むスタートは大部分の場合楽器の演奏からスタートする。そしてそのまま演奏家として大成する者もいれば、作編曲の世界に活動領域を広げる者もいる。さらにその経験を生かしてステージやアルバム作りのプロデュースに取組む才能に恵まれる者も。
クインシージョーンズはその代表格であり成功者の一人でジャズの発展に寄与した功績は大きい。

ボブキーンというベニーグッドマンを目標にクラリネットを極めようとした人物がいた。クラリネット奏者としてもそれなりの評価を得られた頃に、バップムーブメントに始まるモダンジャズの到来が始まった。何の世界でもそうだが、一部のファンは新しい物に飛びつくが、多くの保守的なファンはそのムーブメントをすぐには受け入れらないのが世の常だ。
ジャズの世界でも、映画「バード」の中のシーンでもあったように、東海岸では認められ始めても西海岸ではバップに対する拒否反応が強かった。その中でウェストコーストの面々も徐々にバップ色の入ったモダンジャズを作り上げていった。

このキーンもその一人。自分のグッドマンスタイルを好む保守的なファンに、モダンジャズを受け入れてもらうためのアルバムを企画した。
モダンジャズの熱狂的なファンも満足させ、保守的なジャズファンの為に魅力的なメロディーやリズムも重視するような演奏ができないかと。当時のウェストコーストのバンドはセプテットやオクテットが多い。この趣旨に合わせたアンサンブルと、モダンジャズの特徴であるソロを重視するようなアレンジが求められ、その大役を務めたのはジャックモントローズ。

その演奏はというと、アルバムの企画どおりコンベンショナルなスイングジャズの延長をベースに、アレンジもあまり凝ったことをせずにメロディーラインを大切に、そしてアルバムタイトルどおり7人のソロを適度にまぶしている。
ちょっと聴いた感じはアメリカのホームドラマのバックでもおかしくないような感じだ。何の予備知識も無くこのアルバムを聴くと、あっと驚くアレンジも無く、際立ったソロもないB級アルバムのような感じだが、制作意図を理解して聴くとなるほどと頷ける点もある。

メンバーは、ウェストコーストのミュージシャン達だが、レッドノーボ、レッドミッチェルやシェリーマンなども参加している。そして、バリトンサックスにはペッパーアダムスが加わっている。イーストコーストから吹いてきた新しいモダンジャズの風を取り込むには最適な人選だったかもしれない。
アダムスが加わった最初の録音の3月11日の前日にはレニーニーハウスのアルバムの録音に参加していた。また2回目はデイブペルのアルバムの録音の翌日21日だった。アダムスは、この月は1日にはクインシージョーンズの名盤“Go West Man”の録音にも参加し、連日のGigや録音で大忙しの状態になっていた。

ところがこの2回目の録音の翌日3月22日に、ファーガソンオーケストラのメンバー3人と一緒にロスを離れてしまう。ファーガソンのオーケストラがしばらく西海岸で活動していたが再び東海岸に戻ることになった。アダムスもやっとロスでの生活に慣れて連日仕事が続く生活と、ファーガソンオーケストラでのプレーを秤にかけて迷ったのではないかと思われるが、この時点ではファーガソンを選択していた。参加したアルバムの録音途中で抜けたのも仕方がない。

このアルバムの制作者のキーンは、しばらくするとクラリネットの演奏から離れてプロデューサー業が本業となる。それもジャズではなくてロックンロールの世界で。このアルバムの翌年にはリッチーヴァレンスを世に出し、ラバンバの大ヒットでいきなりスターの座を得る。
その後のボブキーンはデルファイレコードのオーナーとして有名になり、プロデューサー稼業が本業となって成功を収めている。このアルバムも演奏の中身よりも、アルバムのコンセプト作りに彼の本質があったのかもしれない。
誰でも人生の中で分岐点はいくつもあるが、キーンににとってアダムスにとってもこのアルバムは何かの分岐点であったろう。

1. I Won’t Dance
2. There’ll Never Be Another You
3. Soft Winds
4. Solo
5. Can’t We Be Friends
6. I Hear Music
7. Once In Love with Amy
8. Let’s Fall In Love
9. Anna
10. A Lonesome Cup Of Coffee
11. Faces, Places And Things

Bob Keene (cl) all
Bobby Burgess (tb)  1,2,3,5,6,7,8
Milt Bernhart (tb)  4,9,10,11
Pepper Adams (bs)  1,2,3,5,6,7,8
Bill Hood (bs) 4,9,10,11
Red Norvo (vib) all
Dick Johnson (p) 1,2,3,8
Paul Moer (p) 4,5,6,7,9,10,11
Red Mitchell (b)  4,5,6,7,9,10,11
Ralph Pena (b) 1,2,3,8
Shelly Manne (ds) 4,5,6,7,10,11
Dick Wilson (ds) 1,2,3,8

Produced by Bob Keene
Arranged by Jack Montrose

Recorded in Los Angels on March 11, 21 & ??, 1957




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ピアノの引越しには技とチームワークが大事・・・

2012-01-29 | CONCORD
Piano Mover / Dave Mckenna and The Dick Johnson reed section

昔は、引越しの荷造りが一苦労だった。特に壊れ物などは素人がやるとなかなかパッキング一つでも手間がかかって難しい。最近が専門業者のフルサービスがあるので楽になったものだ。引越しは大変だけれども、たまにやった方が荷物の整理になるのがメリットだ。最近引越しが無いので、だんだんゴミの山が室内を占領し始めている。そろそろ大整理をしなければ。昔から素人が出来ないのがピアノの引越し。デリケートな楽器であり、重さも半端ではない。梱包や移動に技も必要だし細かな気配りが大事だ。こればかりは経験のある専門業者に任せないと酷い目にあること必至だ。一人での作業は絶対無理で、メンバーのチームワークと阿吽の呼吸の作業が大事だ。
PIANO MOVERと荷台に書かれたトラックをビジュアルのメインに据えた、CONCORDにしては洒落たジャケットのデザインがまずは印象的だ。マッケンナ率いる引越しチームが呼吸を合わせてどのような技を見せてくれるかのお楽しみ。

マッケンナもテイラーに負けず劣らず器用なオールマイティーなピアニストだが、左手の魔術は負けないであろう。この左手のお陰で、ラグタイムなどの古いスタイルのプレーも得意で、古いタイプのピアニストの真似も得意としている。このアルバムでも一曲目からナットキングコールのノリを聴かせてくれる。ただ、これもビリーテイラー同様あまり度が過ぎるとどれが本当の自分のスタイルかが分からなくなりがちになってしまうのだが。

これは、ディックジョンソンにも言えること。ジャケットのイラストにReed Sectionと書かれているように、リード楽器を何でもこなすオールマティーなプレーヤーは器用貧乏になりやすい。この2人の共演なので組み合わせ次第で何でもありになってしまうのがメリットでもありデメリットにも。このアルバムでは、曲に合わせてそれぞれの持ち味をお互いに出し合って、実にいいコンビネーションを披露してくれている。

この2人は、ウディーハーマンPresentsのConcord Jazz Festivalのジャムセッションにも参加していたが、当時のコンコルドの看板スターで他にも色々なアルバムに登場している。しかし、このメンバーのカルテットとなると、ディックジョンソンのリーダーアルバムが同じメンバーだった。この前はマッケンナの「リズムセクション」でジョンソンをサポートしたが、今度はジョンソンが「リードセクション」でマッケンナをリーダーとしたお返しセッションともいえる。

マッケンナの選曲も、スタンダード中心だがエリントンナンバーやクレアフィッシャーの曲などを入れて多少変化をつけている。曲想に合わせてディックジョンソンも得意のクライネットだけでなく、パーカースタイルのアルトサックスやフルートも登場させてマルチプレーヤの本領発揮だ。流石「ピアノ引越」の専門チーム、リーダーのチョットした変化技にチームプレーで見事に対応している。唯のアルバイトではなく専門スタッフの面々だから出来たのであろう。



1. Nobody Else But Me
2. Cottontail
3. Your Eyes Dance With Love
4. Star Eyes
5. MorningA Spider Sat Down Beside Her
6. In Love In Vain
7. I Concentrate On You

Dave Mckenna (p)
Dick Johnson (cl,as,fl)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, Calfornia, April 1980

Originally released on Concord CJ-146
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セッションリーダーによって、同じメンバーでも出来栄えが変ることが・・・

2012-01-13 | CONCORD
Woody Herman Presents Volume 1 Concord Jam / Woody Herman



Concordレーベルへのウディーハーマンの登場は、エリントンに捧げたアルバム“A Tribute To Duke Ellington”にゲスト参加したのが始めて。他には自己のグループでのアルバムはまだ無かったと思う。そのハーマンが1980年の”Concord Jazz Festival”に登場した。'78年には自己のオーケストラでチックコリアの曲にチャレンジするなど先進的な取組みをしていたが、今回は自己のバンドを引き連れてではなく、Concordでお馴染みの面々のジャムセッションへのゲスト参加であった。が、ゲストといっても“Woody Herman Presents”と銘打った、ハーマンがセッションリーダとなってコンコルドオールスターズのプレゼンテーションだった。

曲はハーマンの十八番、”The Woodchoppers’s Ball ”でスタートする。多分この曲にのってハーマンが舞台に登場したのであろう。聴衆の拍手で盛り上がりを見せて、ハーマンのクラリネットソロが始まる。ライナーノーツには、「彼の熱いクラリネットはジャムセッションに炎を点すトーチのようだ」と記されている。相変わらずのあまり綺麗な音色とはいえないハーマン節だ。そして、メンバー一人一人をフィーチャーして曲が進む。”Body and Soul”では北村英治が登場する。世界に通用する北村のクラリネットは流石に美しい。最後はやはりハーマンナンバーの”Apple Honey”で盛り上がってアルバムは終わる。

ライナーノーツを見ると、いきなり最初にこのセッションに参加したカルジェイダーのコメントが載っている。ジェイダー曰く、「こんなに盛り上がったライブセッション」は始めてだと。
ハーマンのオーケストラは、ファーストハードの時代から、多少荒っぽいがドライイブの効いたパンチのある演奏を得意としている。途中登場するハーマンの演奏は必ずしも上手いとはいえない。でも親分が先頭に立って突撃すると、いつの間にか他のメンバーはそれに巻き込まれていく。
きっとこれがハーマンの得意技なのだろう。持って生まれた才能を発揮する場所は、何も自分のオーケストラばかりではなく、今回のようなジャムセッションでも同じだ。いつものConcord All Starsの面々も、ハーマンが引っ張ることで、今までに無いエネルギーが引き出されていったのであろう。ハーマン自身も語っている、「自分の役割は一緒にプレーするメンバーに普段以上のプレーをさせること」と。

Concord All Starsの演奏は、これまでも毎年のConcord jazz festivalの舞台のハイライトだ。そして世界各地のツアーにも出かけて行って、その録音も残されている。しかし、ハーマンがプレゼンテーションをすると同じメンバーであっても確かに一味違ったダイナミズムが増す。このアルバムが、Concordが出した“Woody Herman Presents”シリーズのVol.1。カールジェファーソンも、多少マンネリ化してきた自分の子飼い達をもう一度奮い立たせるためにハーマンを使うとは、流石いいところに目をつけたものだ。

1. Woodchopper's Ball         Bishop, Herman
2. Rose Room              Hickman, Williams
3. Just Friends            Klenner, Lewis
4. Nancy (With the Laughing Face)   Silvers, VanHeusen
5. Body and Soul           Eyton, Green, Heyman, Sour
6. Someday You'll Be Sorry      Armstrong
7. My Melancholy Baby         Burnett, Norton
8. Apple Honey             Herman

Woody Herman Clarinet, Leader
Warren Vaché Cornet
Scott Hamilton Tenorsax
Dick Johnson Altosax, Flute
Eiji Kitamura Clarinet
Dave McKenna Piano
Cal Tjader Vibraphone
Cal Collins Guitar
Bob Maize Bass
Jake Hanna Drums

Carl Jefferson Producer
Phil Edwards Engineer
Ron Davis Engineer

Recorded live at The Concord Pvilion, Concord, California on August 1980

Originally released on Concord CJ-142

Concord Jam Vol 1
Woody Herman
Concord Records
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どちらも一人で三役ができるデュオは如何に・・・・?

2011-11-26 | CONCORD
Spider’s Blues / Dick Johnson And The Dave Mackenna Rhythm Section



先日友人のジャズ好きが某ベテランのギターとベースのデュオライブを聴きにいったそうだ。両者とも若い頃から一線で活躍していた有名プレーヤーだったので久々に聴くのを楽しみに出かけてみたら、実につまらない内容で途中で帰りたくなったとのこと。どのようにつまらなかったかは詳しく聞かなかったがまあ大体察しはつく。ソロとかデュオは嵌ると実に良い演奏が聴けるが、一歩間違えると散々な結果になってしまう。

コンコルドレーベルでもデュオのアルバムはこれまでの何枚かあった。最近聴聴きなおしたジョージシアリングとブライアントーフのDUOは改めて見直した。ジミーロウルズとレイブラウンという組み合わせもあった。管とピアノではバドシャンクのアルバムがあった。レギュラーコンビもあれば、コンコルドのスター達の出会いもあるがどれもそこそこの聴き応えのあるアルバムだ。

今回は、アルトというより、このアルバムでも何でも吹くマルチプレーヤーぶりを披露してくれるディックジョンソンと、ピアノのデイブマッケンナのデュオだ。アルバムタイトルを見ると”The Dave Mckenna Rhythm Section”とある。実に言い得て妙な表現だ。デイブマッケンナの左手のベースラインの上手さは有名だ。その名のとおりのアルバムもあった。リズミカルなタッチを加えて、一人三役でリズムセクションをこなすことは可能だ。それにジョンソンの多芸ぶりを組み合わせれば、デュオといいえども単なるソロの掛け合いになることはない。

一曲目のキャリオカから実に快調だ。リズミカルな曲だがマッケンナのドライブは凄い。ジョンソンのクラリネットもスイング派のクラリネットというより、バップスタイルのプレーをクラリネットでチャレンジしている。その後、ジョンソンはアルト、フルート、ソプラノ総動員、マッケンナもアップテンポでのソローでも変幻自在。楽しいデュオアルバムだ。

マッケンナの左手の技


若い頃から共演経験があった2人だった。


1. Carioca
2. Lazy Afternoon
3. Confirmation
4. A Gypsy Air
5. Lush Life
6. Shawnuff
7. Jittebug Waltz
8. Spider’s Blues

Dick Johnson (as,ss,cl,fl)
Dave Mckenna (p)

Produced by Carl Jefferson
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, Calfornia, April 1980
Originally released on Concord CJ-135
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クラリネットでは日本一・・・・いや世界一では

2011-07-02 | MY FAVORITE ALBUM
EIJI MEETS SMOKIN'

DICK JOHNSONもクラリネットを得意にしていたようだが、
サックスプレーヤーでクラリネットを吹く人は多いが、クラリネットを得意にしている人は少ない。サドメルの創世記のメンバー、エディーダニエルスはその中の一人。クラリネットの演奏を主体にしたアルバムも出してる
では、クラリネット一本というと、それはトラディショナル、スイング時代の演奏を主体にしている人に限られる。モダンジャズとクラリネットは合わないのか?その中で第一人者はやはり北村英治。今でも元気にプレーをしている。一体いくつになったのであろうか?
日本での活躍は勿論だが、本場アメリカでも評価は高い。一時毎年のように渡米して、向こうのフェスティバルにも参加していた。今年もニューカレドニアのジャズフェスティバルに出かけるようだ。

北村英治の演奏は、基本的にはジャズの主流に根ざしたスイングだが、誰とでも気軽に競演できる。大きなフェスティバルでのフィナーレの大ジャムセッションには欠かせない人だ。得意とするモダンスイングの演奏は、自分の好きなConcordのコンセプトと一致する。最近、自費出版のCDを多く出しているようだが、コンコルドでおなじみのミュージシャンとの競演も多い。

その北村英治が若手のプレーヤーと一緒に競演したアルバムがある。相手は和製モンゴメリー宮之上貴昭とスモーキン。ベテランが若手と手合わせをする時は、何の世界でも若手が多少なりとも萎縮したり、ベテランがお山の対象になりがちだ。ところがこのセッションは4人がまったく対等にお互いを盛り上げる。
一曲目のキャンディーはリーモーガンでお馴染みというか自分が好きな曲だがかわいらしさを残しながらテンポ良くスインギーな演奏だ。この一曲でこのアルバムの楽しさが伝わってくる。続いてはエリントンナンバーのムードインディゴ。エリントンの曲にはクラリネットが良く合う。歌物やエリントンナンバーが続くが、友人のバディーデフランコから贈られたフォーエイジはラテン調。

世界の誰とでも、老若男女を問わず、ビッグバンドでもコンボでも、そして歌伴でも楽しい演奏をいつも提供してくれるのが北村英治だ。彼の人柄によるものだろう。7月のビッグバンドフェスティバルにもゲスト参加するようだ。元気でいつまでも素敵な演奏を聞かせて欲しい。

1. Candy (David-Whitney-Kramer)
2. Mood Indigo (Ellington-Mills-Bigard)
3. The Night Has A Thousand Eyes (Bernier-Brainin)
4. I Thought About You (Mercer-Van Heusen)
5. You'd Be So Nice To Come Home To (Cole Porter)
6. Stompin' At Savoy (Goodman-Sampson-Webb-Razaf)
7. Heartaches (Klenner-Hoffman)
8. For Eiji (Buddy De Franco)
9. Do You Know What It MeansTo Miss.New Orleans (Alter-Eddie De Lange)
10. Cherolee (Ray Noble)
11. Dream A Little Dream Of Me (Andre-Schwandt

北村 英治  EIJI KITAMURA(クラリネット)
宮之上 貴昭(ギター)
吉岡 秀晃(ピアノ…1,10)
宇多 慶記(ピアノ…2,3,4,5,6,7,8,9)
原 大力(ドラムス)
池田 きよし(ベース)
堀江 真美(ピアノ…11)
佐藤 マサノリ(プロデューサー)
堀江 真美(ディレクター、アレンジ…11)
宮之上 貴昭(アレンジ…1~8)
石井 雅宏(エンジニア)

録音:1996年1月14日,15日,21日25日 東京阿佐ヶ谷 STUDIO SPACE VELIO にて


エイジ・ミーツ・スモーキン
クリエーター情報なし
インディペンデントレーベル
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マルチリードプレーヤーの得意技は・・・・何?

2011-06-30 | CONCORD

Plays Alto Sax, Flute, Soprano Sax, Clarinet

ビッグバンドの編成は通常17~19人。その人数で実に多様なカラフルなサウンドを生み出すことができる。このメンバーたちの料理の仕方を悩むのはアレンジャー冥利に尽きるだろう。多様な音を生み出す要因は様々な楽器の持ち替えとミュートだ。金管系のミュートは基本は楽器自体が替わるのではなく、ミュートの種類による音の変化の使い方。一方でリードセクションは木管系の多様な楽器をその都度替えなければならない。それも一曲の中で何度も。大変だと思う。
当然、ビッグバンドのプレーヤーはスタジオワークも多い。毎日の仕事で何の楽器を使うのかの管理だけでもきっと大変だと思う。そのようなプレーヤーが自分のアルバムを作るとなると大変だ。何の楽器をメインにするかによってアルバムの曲想もガラッと変わってくる。

次なるConcordのアルバム(CJ-107)は、そんなプレーヤー、ディックジョンソンの登場だ。アートペッパー調のアルトで、50年代にも自己のアルバムがある。いわゆるウェストコート派の一人だ。Concordでは、CHUCK FLORESのアルバムにkeyboardsで参加して多芸ぶりを披露している。このアルバムでも、マルチプレヤー振りをそのままタイトルにした作品で、アルト、ソプラノ、クラリネット、フルートを曲に合わせて吹き分ける。せっかくのお披露目の場だが、ビッグバンドの中の一員と違って、ワンホーンのコンボだとついつい器用さだけが前面に出てしまい、それぞれの楽器の良さを堪能するには少し消化不良だ。晩年、アーティーショーに捧げたクラリネットのアルバムがあるがこの方が、この方が個の楽器の良さが引き出されている。アルバム作りでは、やはり得意技は1本か2本に絞った方が良いかもしれない。
ピアノのデイブマッケンナは昔のプレー仲間、Concordで一緒に仲良く復活してきた。Concordお得意のベテラン復活シリーズとしては貴重な一枚だ。
このディックジョンソンも今年になって他界している。アルバムが作られてから30年という月日はあっという間のようで結構長い。生涯の活動の中で演奏スタイルを変えていったプレーヤーは多い。しかし、全く変えないプレーヤーもいる。ジョンソンは、16歳の時にピアノからクラリネットに転向、その後アルトも吹くようになったが、最後はまたクラリネットへ。長い時間をかけて得意技を磨いていったタイプかもしれない。 アーティーショーオーケストラのDICK JOHNSON

1. Medley: All the Things You Are/I'm Old Fashioned  Hammerstein, Kern, Mercer 5:14
2. Donna Lee  Parker 4:00
3. The Star-Crossed Lovers  Ellington, Strayhorn 4:53
4. Kelly Green  Johnson 5:27
5. When the World Was Young  Block, Mercer, Philippe-Gerard… 7:47
6. Who Cares? Gershwin, Gershwin 3:22
7. Kelly Blue  Johnson, Kelly 5:51
8. In a Sentimental Mood  Ellington, Kurtz, Mills 4:25

Dick Johnson (Clarinet, Flute, Sax (Alto), Sax (Soprano))
Dave McKenna (Piano)
Bob Maize (Bass)
Jake Hanna(Drums)

Carl Jefferson Producer
Recording Date May 1979
Originally released on Concord CJ-107
Dick Johnson Playsクリエーター情報なしConcord Records

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たった一輪の花の花を咲かせるのに、多くの月日と幾多の苦労が・・・・・

2007-10-25 | CONCORD
DRUM FLOWER / CHUCK FLORES

昨日の夜、我が家の鉢植えの「月下美人」が咲いた。
僅か数時間の命であるが、一時の妖艶な姿が殺風景な部屋に輝きを与えた。
このアルバムのタイトルも”Flower”。
奇しくもこの月下美人の写真がジャケットにあった。

仕事仲間で人の名前を覚えるのが得意な人間がいる。
彼は初対面で会って挨拶をし、名刺交換をすると、その人間をまずはほとんど覚えている。
自分は、反対で初対面ではなかなか覚えない。
「この前会ったあの人だけど・・・」と彼にいうと、会社名と名前がすらすら出ていくる。
便利なのでついつい彼に頼るとますます自分では覚えない。
まあ性格といえばそれまでだが。それなりの努力、整理術を身に付けているのだろう。

ジャズを聴いていても自分はその傾向がある。
興味を持ったミュージシャン以外は、なかなか名前もちゃんと覚えないし。アルバムのタイトルのタイトルも不確かだ。ジャケットのデザインで何となくパターン認識していることが多い。とするとサイドメンで参加している「脇役」達となるとなかなか記憶が繋がらない。

Concordで大物の復活アルバムが続いたと思ったら、またまた「脇役プレーヤー」が登場する。ドラムのチャック・フローレス。リーダーアルバムは知らないし持っていないし・・。
50年代のアートペッパーやバドシャンクのアルバムで一緒にやっていたような・・・。
あまり記憶にない。ほとんど自分の意識の外の存在だ。
分からない時は調べるしかない。
ライナーノーツを見るだけでなく、ネットで少し探ってみると、大方どんな活躍をしたかは把握できる。こればかりは便利な世の中になった。便利になるとまた覚えなくて済むということになりがちであるが。

Concordに登場する多くのミュージシャンと同様、彼は50年代はウェストコースト系のアルバムにも多く参加している。が最近はスタジオ中心とのこと。
参加したアルバムを見ると、アートペッパーの「モダンアート」のドラムも彼だった。
トシコ・タバキンのオーケストラにも加わっていたことがあるとのことなので、早速チェック。確かに、「ロングイエローロード」に加わっていた。
カーメンマクレーのバックを努めていたとのことなので、これもチェックすると「グレートアメリカンソングブック」のドラムは彼だった。
そして、LA4のドラムの席もシェリーマンに替わって努めるなど・・・・。
結構、勘所で活躍していることを再認識。結構接点も多かったのだがノーケアだった。
色々活躍している割には典型的な脇役プレーヤーなのだろう。特に、自分にとってはかなり遠い存在だった。
まあ、彼のおかげで聴き直してみたいアルバム候補が結構見つかった。


しかし、リーダーアルバムとなるとこのアルバム以外に見つからない。このアルバムは、フローレスにとって「月下美人」のようなものだ。

このアルバムは、自分のQuintetでの録音。メンバーを見るとボビーシューがいる。彼もトシコのオーケストラにいた。彼はよく知っているが他のメンバーとなると・・・・・?

「脇役」達の集りのグループなのだが、これが実にいい演奏をしている。
このアルバムを聴く限り彼のドラミングは4ビートを確実に刻むというよりは、ポリリズミックな演奏を得意にしている。リズムラインが変るだけで大分演奏の雰囲気は変る。
このアルバムでは曲も提供している。ドラマーで作曲をするというのも珍しいが、メロディックなドラミングができるのも、歌心のあるドラマーなのだかろう。
Concordでは久しぶりに、「今風(といっても70年代だが)」のストレートな演奏だ。曲もオリジナル中心。
ジャズが復活を始めた70年代の後半。スタジオを離れたライブの活動では、昔ながらのスタイルの復活に加え、こんな演奏も繰り広げられていたのだろう。
まさに、これもベテラン達が集った“New wine in Old Bottle”の一枚。

Drum Flower
End of A Love Affair
Orge Of Leadwell
Horse A Nova
I Remember Freddie
Return Of The Ogre
Dawn And Lizz

 Bobby Shew (tp)
 Bob Hardaway (ts,ss,fl)
 Dick Johnson(Keyboards)
 Bob Mafnusson (b)
 Chuck Flores (ds)

Originally released on Concord CJ-49
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